天文単位
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てんもんたんい
天文単位
Unite astronomique
Astronomical unit

地球から太陽までの距離(灰色の線)が天文単位の由来である。
記号au
非SI単位SI併用単位
長さ
SI149597870700 m
定義149597870700 m
由来地球と太陽との平均距離
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天文単位(てんもんたんい、: astronomical unit、記号: au)は、長さの単位で[1]、定義定数であり、正確に 149597870700 m である。非SI単位であるが2014年3月にSI併用単位SI単位と併用できる非SI単位)に位置づけられた。地球太陽の平均距離に由来し、主として天文学で用いられる。
単位記号

天文単位の単位記号は、au である[2][3][4]

なお、2014年3月以前のSIにおける単位記号は ua であった[5]。このため、JIS Z8000-3:2014 (ISO 80000-3:2006)「量及び単位ー第3部:空間及び時間」も、2014年のBIPMの決定以前のJIS規格であり、ua を用いている[6]

これら以外にも 2014年以前の文献には、a.u. といった表記もみられる。また各国語の表記に基づいた略号が用いられることも多く、例えばドイツ語では AE の略号が用いられる。
由来

天文単位は、地球太陽との平均距離に由来している。すなわち、太陽からのニュートン的重力のみを受けガウス年を周期として円運動するテスト粒子の軌道半径に由来するものである。太陽系内の惑星などの天体間の距離を表すために広く用いられており、太陽系内の天体の運動を表す天体暦においては、その基礎となる天文単位系で長さの単位となる重要なものである。

地球(より正確には、地球とを「自転する一つの質量体」と捉えた際の重心)の公転軌道は完全なではなく、楕円[7]をしている。このため、当初「地球軌道の軌道長半径(楕円の長径の半分)」とされた。
定義の変遷
1976年の定義

1976年のIAU総会において、地球軌道の実測値から日心重力定数 GMs に基づき算出される値として定義づけられた。すなわち、万有引力定数 G と太陽質量 Ms との積(万有引力定数#万有引力定数と質量の積)である日心重力定数の 1/3 乗(3 乗根)に比例する値 A として、 A 3 = ( D k ) 2 G M s {\displaystyle A^{3}=\left({\frac {D}{k}}\right)^{2}GMs}

と定められた。

ここで k はガウス引力定数と呼ばれる定義定数(実測値ではなく、約束事として決められた固有の値)で k = 0.01720209895 である。また D は 1 日の時間の長さ(86400 s)を表す[8]

これは、地球の替わりに「仮想的な粒子」(以下テスト粒子)を置いて、その運動を基準としていると解釈できる。いま、テスト粒子が太陽からのニュートン力学的な重力以外の力を受けず、重さは無視でき、その軌道は完全に円であるとする。この時テスト粒子は、太陽に近ければ強い力を受けて速く公転し、遠ければ弱い力を受けてゆっくりと公転する。そうした軌道のうち、公転周期 P が P = (2π/k) D = 365.2568983... × D となる円軌道の半径が 1 天文単位となる。

このとき k の値はテスト粒子が動く角速度ラジアン/日単位で表しており、上式はケプラーの第3法則の関係 A3 (2π/P)2 = GMs に他ならない。この公転周期 P はガウス年と呼ばれ、地球の実際の公転周期である恒星年に近いものとなるよう定められているため、結果としてこの定義においても天文単位は地球と太陽の平均距離に近いものとなる[9]

こうした定義の変更により、地球の軌道長半径は 1 au ではなくなった。現在の暦で地球の軌道を楕円軌道として近似したときの値はおよそ 1.00000261 au となる[10]
2012年7月まで

実測値に基づく定義が、天体暦の構築にともなって行われてきた。IAUの2009年天文定数によると、A の値は A = 1 AU = 149 597 870 700 ( 3 ) m = 1.495 978 707 00 ( 3 ) × 10 11 m {\displaystyle A=1\;{\mbox{AU}}=149\;597\;870\;700(3)\;{\mbox{m}}=1.495\;978\;707\;00(3)\times 10^{11}\;{\mbox{m}}}

と与えられている。括弧内の数字は最後の桁を単位とする標準不確かさを表す[11]

天体暦では、力学法則にもとづく理論的計算値が、太陽系内の天体のさまざまな観測データを最もよく説明できるように、惑星の質量(太陽質量 Ms に対する質量比)や太陽の扁平率などの天文定数を同時に決定する。天文単位の大きさ A の決定もこのとき同時に行われる。実質的には、メートルと天文単位との関係づけに最も影響を及ぼすものは近距離の惑星のレーダー測定による観測データであり、このとき暦が理論的に予測する惑星表面までの天文単位距離 rtheo と電波が片道で要する時間の測定値 tobs とは、 A = c t o b s r t h e o {\displaystyle A={\frac {c\,t_{\mathrm {obs} }}{r_{\mathrm {theo} }}}}

の関係で結ばれることになる。ただし、c は真空中の光速度を表す[12]
IAUの決議とSIの定義

国際度量衡委員会 (CIPM) は2014年3月に、下記の国際天文学連合(IAU)総会の決議に基づき、天文単位を「国際単位系 (SI) 単位と併用される非SI単位」(SI併用単位)に位置づけ、その値を正式に149597870700 m とした[13]。これにより、天文単位は分・時・日、度・分・秒、ヘクタール、リットル、トン・ダルトン、電子ボルト、ネーパ・ベル・デシベルと並ぶ、「SIと併用される非SI単位」となった。
IAUの決議

2012年8月の第28回IAU総会決議B2[14]は次のように推奨した。

天文単位の値を、正確に 149597870700 m とする(従来の ±3 m の誤差はなくなった)。

上記の値は、すべての時刻系(TCB, TDB, TCG, TTを含めて)において適用される。

ガウス引力定数 k は、天文定数系から削除される。

日心重力定数 GMs の値は、観測によって決定される。

天文単位の記号は、唯一「au」のみを用いる。

以前は、天文単位は、SI併用単位(ただし数値が実験的に得られるもの)[15]との位置づけであったが、この2012年の決議により、天文単位は定義定数となり、2014年以降の国際単位系の国際文書において、SI併用単位となった。
天文単位の意義

太陽系内の惑星や彗星などの天体間の距離は天文単位を用いることで、概して扱いやすい大きさの値で表すことができる。

例えば、火星が最も地球に接近するときの両者の距離は 0.37 au ほどであり、土星までは太陽からおよそ 9.5 au、最も遠い惑星の海王星までは太陽からおよそ 30 au となる。およそ 30 au から 100 au の範囲には冥王星を始めとする太陽系外縁天体が分布しているが、セドナ遠日点が 1000 au 近くにまで及ぶ。

太陽系の外縁であり彗星のふるさとと思われているオールトの雲は数万天文単位あたりに広がっていると想定されており、通常このあたりが天文単位が用いられる限界である。恒星間の距離を表すためにはパーセク光年が用いられる。太陽系に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまでの4.2光年を天文単位で表すと、約270000 au と桁が大きくなる。

また、地球から太陽までの実際の距離は1年の内におよそ 0.983 – 1.017 au の範囲で変化する。


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