天井川
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天井川の例
玉川JR奈良線トンネルの上を流れる。天井川の鉄道トンネルの例
旧草津川の下をJR琵琶湖線東海道本線)がくぐる。天井川の道路トンネルの例
高川が流れる水路橋の下を大阪府道145号がくぐる。

天井川(てんじょうがわ)とは、砂礫堆積により河床(川底)が周辺の平面地よりも高くなったである[1]

川に堤防が作られ、氾濫がなくなると、河床に堆積した土砂の上を川が流れるようになり、次第に河床が上昇する。これに合わせて堤防を高くすることを繰り返すと天井川になる[1]。天井川が氾濫すると河床の方が周囲より高く、川に水を戻しにくいため被害が大きくなる[2][3]

天井川が廃川になった旧河道は、堆積した砂礫により水はけがよく、基礎の支持力も発揮されるため、宅地として利用しやすい。
日本の天井川
地理的特徴

日本では、人口密集地など土地利用が進んでいる地域の河川を中心に、国土交通省都道府県公共事業として、河川の付け替えや拡幅などの治水事業を実施している。河川改修が地理的条件から困難な場合には、陸閘(りっこう)の設置などで対応している。

2014年(平成26年)現在、全国29の都道府県に少なくとも240の天井川が存在する[3]。うち半数の122が関西地方に存在し[3]、中でも滋賀県には3分の1に当たる81が集中する[3]

滋賀県に天井川が多い理由として、琵琶湖を囲む山々田上山周辺)が花崗岩岩石でできていたことに加え[4]、1000年以上も前から平城京の造営や寺社建立のため森林伐採され、その後も生活の燃料となる採取のため伐採が続いて自然破壊が進み、江戸時代には全国的に知られる禿山となった[5][4]。このため山が荒れて森林の保水能力が損なわれ、河川への土砂流出が繰り返されたことが一因とされる。明治以降は治山工事により植林が行われて森林が再生し、現在は「湖南アルプス」として登山客に親しまれている[4]

九州地方では熊本県熊本市中心部の白川が天井川[6]になっていて、1953年(昭和28年)の6.26白川水害において濁流が両岸に流れた。
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出典検索?: "天井川" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2022年3月)
大明神川(西条市)

天井川によっては河床が高くなり過ぎ、河床の下にトンネルを掘って鉄道道路を通している例もある。こうしたトンネルを総称して天井川トンネルという。

JR東海道本線は、旧草津川芦屋川および住吉川を、それぞれ天井川トンネルで抜けている。かつて東海道本線は石屋川石屋川トンネルと言う天井川トンネルでくぐっていた。このトンネルは1871年明治4年)に完成した日本で最初の鉄道用トンネルであったが、高架化により消滅した。また東海道本線はほかにも、大津市草津市の境界付近の狼川野洲市の家棟川を天井川トンネルで抜けていた。

また京都盆地南部において、JR奈良線片町線(学研都市線)、近鉄京都線も複数の天井川トンネルを持つ。

岐阜県養老郡養老町の小倉谷では、養老鉄道養老線石津駅付近にトンネルが4か所存在するが、これらはすべて天井川をくぐるもので、河川下の煉瓦造りのトンネルを通過している。

愛媛県西条市にある大明神川では、JR四国予讃線が川の下を通過している。
中国の天井川
黄河「黄河改道」を参照

中国黄河(特に下流部)は天井川となっている[7][8]。黄河中流域の陝西省は、西方から風で飛ばされた黄砂が長い年月をかけて堆積した黄土高原が広がっている。黄土高原は夏に集中する雨を受けて浸食され、泥土が流れ込む黄河は華北平原に至るや天井川となり、[8]黄河の堤防を分水嶺として黄河以北の水は海河に、以南の水は淮河に流れ込む。

黄土高原から黄河に供給される土砂の量は毎年約16億トンで世界最大である[9]。黄河は華北平原あたりで流速を落とし、毎年約4億トンの土砂が堆積し、一年あたり数センチから10センチほど河床が上昇するといわれている[9]

古代から中国の歴代の皇帝にとって、黄河の治水事業は最大の難題であった[8]。黄河の水を大運河に引き入れると、大量の土砂も流入するため河床を押し上げ、船の運航を妨げたり洪水になる問題があった[9]1128年から1855年の間は黄河が南流して淮河と合流していたため、淮河下流でも黄河から流入する土砂で河床が上昇して洪水や決壊が発生することが多かった[9]
長江

長江中流域には氾濫原があり、洞庭湖と江北の湖沼地帯とつながって雲夢沢という一大湖沼地帯になっていた[10]南宋から明代にかけて長江左岸に万城堤が築造されて洞庭湖と江北湖沼群が分離した後も、度重なる洪水で堤防は延長され天端の高さも高くなっていった[10]。結局、長江中流域右岸側では土砂の堆積が進行して洞庭湖の貯水容量が激減する一方、左岸側の江漢平原では長江の河床が上昇して天井川化し、この地域では江漢平原の地盤高より約5m程度長江の河床が高くなっている[10]。長江では宜昌市から沙市市の間では河床は低下しているが、沙市市から下流では河床が上昇し、1998年に発生した洪水氾濫の一因になったと考えられる[10]
ヨーロッパの天井川

ヨーロッパではライン川下流部が天井川になっており、オランダの国土の大部分は河川よりも低い土地にある[11]。オランダの国名のNiederlande(Nederland)は低い土地を意味している[11]。この地域では湿地帯に水路を掘ったり、ピート(泥炭)を掘って土地を利用していた[11]。しかし、ピートの分解によって地盤沈下が発生し、最初は沈下した地盤は放棄していたが、やがて湿地帯を乾燥させて利用する干拓が行われるようになった[11]。ただし、国土の地盤沈下は止まっているわけではなく、オランダの国土の25%は海面下にある[11]
各地の天井川の一覧「Category:天井川」を参照
脚注[脚注の使い方]^ a b “河川の作用による地形”. 国土地理院. 2023年11月24日閲覧。
^ 河川用語集『天井川』 - 国土交通省国土技術政策総合研究所
^ a b c d “NHK NEWS WEB 危険な「天井川」 全国に240” (2014年9月16日). 2014年9月16日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2019年4月14日閲覧。
^ a b c 近江湖南アルプス自然休養林 林野庁
^ 大戸川を知ろう!大戸川の歴史 国土交通省近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所
^ 国土交通省九州地方整備局立野ダム工事事務所『白川の水害』
^ 潘威「GIS と中国史における水文変化の研究(リモートセンシングデータを活用した東アジア古代研究)」『学習院大学国際研究教育機構研究年報』第1号、2015年(平成27年)。
^ a b c 日高敏隆『ぼくの世界博物誌』126頁、玉川大学出版部、2006年(平成18年)。
^ a b c d <ページが見つかりませんでした>濱川栄「大河と治水―黄河の場合」 帝国書院、2011年(平成23年)[リンク切れ]
^ a b c d 中川一, 玉井信行, 沖大幹, 吉村佐, 中山修「1998年中国長江の洪水災害について」『京都大学防災研究所年報. B』第42巻B-2、京都大学防災研究所、1999年4月、273-290頁、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}CRID 1050001335592985856、hdl:2433/80418、ISSN 0386-412X、NAID 120001433698。 
^ a b c d e 四俵正俊「ライン川における洪水への対応の地域的特色」『愛知工業大学研究報告. B専門関係論文集』第31号、愛知工業大学、1996年3月、123-129頁、CRID 1520009410186495872、hdl:11133/1006、ISSN 03870812、NAID 110000043861。


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