大麻
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「ガンジャ」は薬物としての大麻について説明しているこの項目へ転送されています。アゼルバイジャンの都市については「ギャンジャ」を、布素材としての大麻については「麻織物」を、その他の用法については「大麻 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
アサ(ノーザンライト種)の花冠世界の大麻の少量所持に関する法的状況 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  合法/一部合法   非合法だが非犯罪化   非合法だが法的強制力なし   非合法   不明

大麻(たいま、cannabis[1])は、アサ(大麻草)の花冠を乾燥または樹脂[1]、液体化させたもの。マリファナ(marijuana)とも[1][2]。花から製造された(栽培種の花序からとった[3])ものをガンジャ(Ganja)、樹脂をハシシ(hashish)、チャラスと呼ぶ[4][1]吸食以外でも歴史としては古く、紀元前から用いられてきた。世界50カ国以上が何らかの形で医療大麻を合法化しており、規制緩和が進むものの、殆どのにおいて娯楽用としての大麻吸食は法律で禁止されている[5][6][7]。   
各国概要

大半の国家により大麻の規制のされ方は各国一様ではない。取引を犯罪として死刑を科す国から、少量の所持を非犯罪化して刑罰の対象外とする国、医療用のみにおいて合法である国、酒・煙草などと同様に嗜好品としても合法である国、許可によって販売できるなど様々である[8]。これについて、2019年には国連の国際麻薬統制委員会は人権への配慮から、死刑の廃止を求め、軽微な犯罪には刑罰でなく治療の可能性を言及するようになった[9]。また同時に医療研究の推進や人権の観点から、薬物を使った人を刑務所に収容するのではなく、治療や福祉的なサービスにつなげることが必要だとして薬物利用の非犯罪化を求める動きへとシフトしている[10]

嗜好・医療目的の大麻が合法な国としてはカナダウルグアイがある。また国により州など一部の区域で、嗜好目的の非犯罪化もしくは医療目的で合法化している国としては、アメリカ合衆国ポルトガルイスラエルベルギーオーストリアオランダイギリススペインフィンランドドイツ韓国などが挙げられる。

アメリカ合衆国の州法では2017年夏時点で全50州中29州と首都ワシントンD.C.で医療大麻として認められている[11]。嗜好品としての大麻は、2018年2月までに、首都と9州(ワシントン州コロラド州アラスカ州オレゴン州カリフォルニア州マサチューセッツ州ネバダ州メイン州[12]バーモント州[13])で合法化されている。2020年12月までには、3州でのみ医療大麻が利用できず、15州で娯楽大麻が容認されている[14]。1977年にはジミー・カーター政権が少量の大麻所持を刑事罰から除外することを提案、各州はそうした州法を作ってきた。しかし、各州で合法とされていても連邦法では違法のままであり、大麻使用が解雇理由とされた際、それが医療目的であっても司法的救済がなかった[15][16][17][18]。2020年12月には、マリファナ機会再投資・犯罪記録抹消法(MORE法、Marijuana Opportunity Reinvestment and Expungement Act)が下院で通過し、これが上院を通過するか注目されている。米国における非医療大麻の非犯罪化(英語版)も参照。

ニューヨーク・タイムズ』は「アルコールよりも危険の少ない大麻を禁止していることで社会に多大な害悪を及ぼして来たことを批判し、大麻を禁止しているアメリカ連邦法を撤廃すべきだ」とする社説を掲載し、議論を呼んだ[19]。2016年のギャラップ世論調査によると、アメリカ人の約60%が大麻の合法化を支持している。合法化支持は1969年には12%に過ぎず、20世紀の末でも30%ほどで少数派であった。しかし2000年代以降に増加し、2010年を過ぎると合法化支持が多数派になった[20][21]。結果として生じた大麻産業も急速に発展した。 PILOTDIARYのように、雨後のタケノコのように多くのオンライン喫煙店が生まれ始めた。

カナダでは医療大麻は2001年に合法化され、医療大麻の市場規模は2015年には年間約8,000万カナダドルとなっている[22]。嗜好品としては、2016年にニューヨークで開かれた薬物に関する国連特別総会において、大麻を合法化する方針を2017年に表明した。合法化は若者を守り、公共の安全を高める最善の方法であり、社会の安全にとってよりよい道であるとしている[23]。2018年10月に嗜好目的の大麻までが合法化された[24]

オランダでは、大麻はコーヒーショップと呼ばれる大麻販売店などで販売され、早くから大麻が事実上合法化されている。2014年時点、オランダ政府は「ドイツやベルギー国境で頻発している密輸を取り締まること、外国人によるドラッグ関連のトラブルを減少させること」などを目的に南部の地域では外国人の購入を禁じる方針をとっている。それらの地域ではオランダ住民のための「大麻許可証」の発行という制度が導入されている。一方で規制への反対派は「オランダの観光業にとって自殺行為、流通がアンダーグラウンドに潜り治安が悪化する恐れもある」と猛反発している。アムステルダムなどの地域ではそのようなことを理由に、観光客でもコーヒーショップで5グラム(価格は約50ユーロ)までの大麻を購入できるという政策を続けている[25]オランダのあへん法においては、ソフトドラッグの区分に分類されている。

イギリス薬物乱用法[26]、薬物の危険度でABCに分類し[注 1]、大麻はクラスBに分類されている(2009年1月よりクラスCから再度格上げ[注 2])。

日本では1948年より、大麻の葉と花穂は大麻取締法で規制され、規制対象ではない部位の規制対象ではない成分のカンナビジオール (CBD) が輸入され使用されている[27]。古来より日本で栽培されてきた大麻は陶酔成分であるTHCの含有量が少なく、日本には大麻を吸引する文化はなかったとされるが、「木こりの一服」や「護摩焚き」、大麻比古神社(徳島県)には、老婆が麻の葉を一服するレリーフが存在し、江戸時代の麻刈りの絵には、麻農家が一服する風景が描かれており、吸引を思わせる絵が数多く存在するなど、吸引の習慣があったと言われている。麻畑では「麻酔い」と呼ばれる精神作用があることが知られていた[28]。産業用のアサは、1974年より品種改良が試行され陶酔成分が生成されないよう改良された品種が用いられている[29]。産業用では縦に伸ばすために密集して露地に植える方式が主流だが、嗜好用は枝を横に伸ばすために室内栽培が多い。そのため産業的栽培だと偽って嗜好大麻を栽培するのは困難である。

世界ドーピング防止規程では、種々の医薬品と共に天然の大麻やTHCを禁止薬物とし、CBDを除外している[30]。長野オリンピックのスノーボードで金メダルを獲得したロス・レバグリアティは、ドーピング検査により大麻の陽性反応が出たためメダルが剥奪されかけたが、オリンピックの時点ではまだ吸っていなかったことから、最終的に処分は取り消されている。
呼称「大麻 (神道)」も参照

日本語では大麻(たいま)、別名は麻である[1]長吉秀夫は元々「痲薬」と書かれていた単語が当用漢字表以後「麻薬」と書かれるようになり麻(あさ)との混同が生じたと示唆するが[31]、船山信次によれば、漢字の「麻」の字形は古くはであり、「大麻」「麻薬」の両方でこの字を使っていたとされる[32]

ラテン語、ギリシャ語の kannabis は「管」を意味し、これを由来とし英語では広くカンナビス (cannabis) と呼ばれ、乾燥した花や草をいう[1]。メキシコ・スペイン語でマリフアナ (Marihuana, marijuana) は、女性名 Maria Juana の短縮形でポルトガル語の Marigango、興奮剤の意が変化したという推察がある[1]。日本の辞書ではマリファナは、煙草に入れて吸引すると説明する辞書があるが[33]、メキシコでは煙草に混ぜる習慣がある[1]。インドでは効果が弱く安い、葉と茎が原料のものがバングと、花穂から製造されるものがガンジャと、樹脂から製造されたものがチャラスと呼ばれ区別される。中近東ではハシシと呼ばれる[4]

スラング・俗称や隠語としては、英語圏などでは「ウィード」「グラス」「ハーブ」「ポット」「420」があり、日本語においては「草」「葉っぱ」「野菜」「緑」などがある[34]
薬学的分類

ICD-10 第5章の薬物関連障害DSMでは、大麻は個別の単位である。刺激薬(アッパー)、抑制薬(ダウナー)、幻覚剤(サイケデリック)の三大分類では、大麻を抑制剤に分類する2009年の世界保健機関の資料があり、しかし知覚を変容させる幻覚特性もあるとされている[35]。この三大分類を使った別の資料では、抑制作用と幻覚作用の中間に分類されている[36]

幻覚剤や大麻に詳しいハーバード大学のレスター・グリンスプーンによれば、大麻には弱いサイケデリック作用があるが、ドラッグの使用者も幻覚剤のような強い作用を起こさないものだとして大麻を同列には扱わず、典型的な幻覚剤とは異なり大麻では眠気を起こす性質もあり、典型的な幻覚剤であるLSD、メスカリン、シロシビンでは、一方の薬剤の使用によってほかの薬剤が効かなくなるという、交叉耐性が生じるが、大麻の成分THCはそうした交叉耐性を起こさないという違いがある[37]。大麻では労働中に使用したり、ジャマイカでは大量に日常的に使用することがあるが、穏やかな刺激をもたらすことが目的である[37]
歴史「アサ#歴史」および「医療大麻#歴史」も参照ウィーン写本(1世紀)に記された、大麻の図(Cannabis sativa)

大麻の薬や嗜好品としての歴史は長く、中国で2700年前にシャーマンが薬理作用を目的としたとされる大麻が発掘されている[6]。2500年前の、中国の古代都市の車師の墓地からも、麻の布がなく花穂の特徴から摂取を目的としたと考えられる大麻草13本が出土している[7]後漢(25年 - 220年)の頃に成立したとされる中国最古の薬物学書『神農本草経』に薬草として使われていたことが記されている。「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスは、『歴史』において、紀元前450年のスキタイ人やトラキア人は大麻を吸っていたと伝え、70年にはローマ帝国の医学治療として大麻の使用が言及された。アラビア中東では900年から1100年にかけて大麻の喫煙習慣が広まった。アメリカ大陸においては、1549年にアンゴラから連れてこられた奴隷が、ブラジル東北部での砂糖のプランテーション砂糖とともに大麻を栽培し、喫煙していた。アメリカ大陸のスペイン領やイギリス領でも大麻の栽培は行われ、特にメキシコでは大麻使用が大衆化した。

日本の『万川集海』(21巻、1676年)には、大麻の葉を乾燥させて粉にした「阿呆薬」なるものの製法が記載されている。食事などに混ぜて薄茶3服ほど摂取させると「気が抜けてうつけになる」とされている。ヨーロッパでは、嗜好品としての大麻は1798年のナポレオン・ボナパルトによるエジプト遠征によってエジプトから伝えられ、1843年にはパリで「ハシッシュ吸飲者倶楽部」が設立された。1937年以前に生産されていた大麻チンキ

西洋では1840年以降、大麻を医療に用いるための100冊以上の書籍が出版され、脚光を浴びた[38]。1870年にギリシアで大麻使用が全土に普及した。また、イギリスの上流階級や王室の間にも広がり、ヴィクトリア女王は生理痛の緩和に使っていた。薬用としては腹痛や発熱不眠症結核患者に使われた。

江戸時代の博物学者貝原益軒の『大和本草』に大麻(アサ)の項があり、麻葉の(マラリア)への治療薬としての効能、日本で大昔から麻が植えられていた様子が『日本書紀』や『舊事紀』に見られることなどが記されている[39]


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