オオムギ
分類
オオムギ(pearled, cooked)100 gあたりの栄養価
エネルギー531 kJ (127 kcal)
炭水化物26.31 g
糖類trace g
食物繊維1.98 g
脂肪0.6 g
タンパク質2.70 g
単位
μg = マイクログラム (英語版) • mg = ミリグラム
IU = 国際単位
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
オオムギ(大麦、学名 Hordeum vulgare)は、イネ科の穀物。中央アジア原産で、世界でもっとも古くから栽培されていた作物の一つである。小麦よりも低温や乾燥に強いため、ライ麦と共に小麦の生産が困難な地方において多く栽培される。 二条オオムギと六条オオムギ オオムギとカラスムギ、およびそれらを原材料とする食品 「オオムギ」は漢名の「大麦(だいばく)」を訓読みしたものである。「大」は、小麦(コムギ)に対する穀粒や草姿の大小ではなく、大=本物・品質の良いもの・用途の範囲の広いもの、小=代用品・品格の劣るものという意味の接辞によるものである。大豆(ダイズ)、小豆(アズキ、ショウズ)、大麻(タイマ)の大・小も同様である。伝来当時の漢字圏では、比較的容易に殻・フスマ層(種皮、胚芽など)を除去し粒のまま飯・粥として食べることができたオオムギを上質と考えたことを反映している。 また、オオムギをはじめ、コムギ、エンバク、ライムギ、ハトムギなど、姿の類似した一連の穀物を、東アジアでは総称してムギと呼ぶ。こうした総称はヨーロッパには存在せず、barley(大麦)、wheat(小麦)、oat(燕麦)、rye(ライ麦)のようにそれぞれの固有名で呼ぶのみである。 穂の形状の違いから、主に二条オオムギ(二条大麦、H. vulgare f. distichon、英: two-rowed barley
名称
品種
二条オオムギは主にビール生産用に栽培され、ヨーロッパで栽培されるオオムギの多くは二条種である。これは、二条種は種子の一粒一粒が大きく、しかも大きさがよくそろっているので、醸造の管理がしやすいからである。それに対し六条オオムギは収量が多く、オオムギを穀物として食べる地域においては六条種を主に栽培する。二条種と六条種の進化については、長い議論の歴史がある。かつては六条種は二条種から分化してできたと考えられてきたが、チベット高原において野生の六条種が発見されたため、一時は二条種と六条種は別々に栽培化されたとの説が有力となった。その後、遺伝子情報の解析によって、現在では二条栽培種の変異によって六条種が成立したと考えられている[2]。二条種はチベットより東には到達せず、このため中国や日本など東アジアの在来のオオムギはすべて六条種である。これら諸国における二条種のオオムギは、近代になってヨーロッパなどから導入されたものである。
二条種と六条種は皮が実と糊状のもので固着しており、はがすのが難しい。この固着はオオムギだけの特質であり、コムギなどのほかのムギでも、コメなどほかの穀物においてもこういったことはない。皮をはがすのが難しいため、これらは皮麦(カワムギ)とも呼ばれる。それに対し、六条種の突然変異で糊状のものが存在しないものが生まれ、揉むだけで皮が簡単にはがれる品種が生まれた。これがハダカムギである。ハダカムギは食用にするのがより簡単であるため、チベットや日本といったオオムギを重要視する国々において多く栽培されるようになった。その後、六条ハダカムギと二条種の交雑により二条ハダカムギも生まれたが、二条ハダカムギは品種が非常に少なく、一般的にハダカムギといえば生産のほとんどを占める六条ハダカムギを指す[3]。
また、上記の品種はすべてうるち性であるが、日本を含む東アジアにはもち性のオオムギも存在する[4]。もち麦は日本ではもち米の代替として西日本中心に栽培され、団子などがこれで作られた[5]。
特に日本で生産されるのは二条オオムギ、六条オオムギ、ハダカムギが多い。二条オオムギは明治時代以後にヨーロッパより導入され、ビールなどの醸造用の需要が多くビールムギとも呼ばれる。これに対し、六条オオムギとハダカムギは古来より日本で栽培されてきた品種である。六条オオムギは押し麦や引き割り麦などにして米に混ぜるなど雑穀としての使用が多く、また麦茶の原料ともなる。ハダカムギも同様に使用することはできるが、味噌の製造に使用されることが多い。栽培は、寒さに強い六条オオムギが東日本で主に栽培され、寒さに弱い二条オオムギやハダカムギは西日本で主に栽培される。日本の農産物分類においては、麦類にハトムギやエンバク、ライムギといったものは含まず、日本での生産量の多いコムギ、二条オオムギ、六条オオムギ、ハダカムギをあわせて4麦という[6]。 大麦は、本来は、後述のように冬季に比較的降水量が多い地域を原産とする作物であり、秋に発芽して冬を越し、春に大きく生長し、初夏に結実して枯れる、いわゆる冬草の一種にあたる。そのため、種を秋に蒔き、苗の状態で冬越しさせ、春に出穂(開花)・結実させて初夏に収穫する(秋蒔き)。しかし、春に積算温度の足りない寒冷地向けの品種として、発芽に低温を必要とせず、種を春にまいて、盛夏に収穫可能な春蒔き品種が開発され、日本では、北海道で主に栽培されている[7]。世界的には、ロシアやカナダといった北方の寒冷な地域では春蒔きが中心となっている。この2国はオオムギの大生産国であるため、世界的なオオムギ生産量としては春蒔き品種のほうが多くなっている[8]。これに対して本州以南、特に関東から九州にかけての地方では、夏草の性質を持つ稲の裏作として秋蒔き品種の栽培が拡大した。この場合、稲の収穫が終わった秋に播種し、田植え前の初夏に収穫することになる。麦の穂が実る初夏の麦畑は、淡い茶色に染まって秋の稲田に似た光景となるため、麦の結実期のことを、麦秋と呼ぶ。東日本・西日本では、梅雨入り直前の、5月下旬から6月上旬(グレゴリオ暦)にあたる。なお、収穫後に乾燥状態を維持していないと、梅雨時などは土壌になくても穂先から簡単に芽吹き出すので注意が必要である。また初夏に芽吹いたとしても日本の夏の気候下ではうまく育たない。秋蒔きは、世界的にはドイツやアメリカなどを中心に行われる。 オオムギが食料に供されるようになったのは紀元前1万1000年頃、栽培が始まったのは紀元前8500年頃とされている[9]。 現在栽培されている品種は、現在イラク周辺に生えている二条オオムギに似た野生種ホルデウム・スポンタネウム
栽培
歴史
世界
古代エジプトでも主食のパンに使われており、ヒエログリフにも描かれている。このころにはすでにビールの製造も開始されており、パンとビールはエジプトの食生活の中心であった。このビール製造はオオムギパン製造の過程で、オオムギを粉にしやすくするため発芽させたときに偶然製法が発見され製造され始めたと考えられており、実際にこのころのビールは現在よりもかなりどろっとしたものだった。オオムギの粥もそのまま残っており、古代ギリシアでも重要な食料だった。