大量絶滅
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絶滅種数の推移

大量絶滅(たいりょうぜつめつ)とは、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅すること。大絶滅(だいぜつめつ)ともよばれる。

大量絶滅は、地質時代において幾度か見られる現象である。そもそも地質時代の「代」や「紀」の区分は、化石として発見される動物相の相違によるものである。原生代古生代中生代新生代の「代」の時代区分は、大量絶滅により従来の動物の多くが絶滅し、新たな動物が発生したことによる区分である。「紀」の時代区分は「代」との比較では動物相の相違は小さいが、大量絶滅による場合もある。

多細胞生物が現れたエディアカラン以降、オルドビス紀末(O-S境界)、デボン紀末(F-F境界)、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末(T-J境界)、白亜紀末(K-Pg境界)の5度の大量絶滅(ビッグファイブとも呼ばれる[注 1])と、それよりは若干規模の小さい絶滅が数度あった[1]とされる。大量絶滅の原因については、K-Pg境界のように隕石彗星などとの天体衝突説が有力視されている事件や、P-T境界のように超大陸の形成と分裂に際する大規模な火山活動による環境変化(「プルームテクトニクス」も参照)が有力視されている事件など様々であり、その原因や原因についての仮説は一定しているわけではない。

大量絶滅の直後には、空席になったニッチ生態的地位)を埋めるべく、生き延びた生物による急激な適応放散が起きる。例えば恐竜が絶滅したことにより、白亜紀以前には小型動物が中心であった哺乳類[注 2]は、急速に多様化・大型化が進み、生態系の上位の存在として繁栄を享受することとなる。
冥王代 - 太古代

地球における生命の誕生後期重爆撃期に先んじるとする説が正しいなら、後期重爆撃期が初期生物に大量絶滅を起こしたことは確実と見込まれる。
原生代

シアノバクテリア他の酸素発生型光合成細菌による大量の酸素供給が、在来偏性嫌気性原核生物の多くを大量絶滅させた。併せてもたらされた二酸化炭素メタン等の温室効果ガスの減少で発生するようになった氷期スノーボールアース(全球凍結)も大量絶滅を引き起こした。
原生代末詳細は「en:End-Ediacaran extinction」を参照

V-C境界と呼ばれ、最近の研究で大量絶滅があったことが判明しつつある。下に述べる古生代末の大量絶滅(P-T境界)と同じく、超大陸の形成と分裂が原因と推定されている事件。ゴンドワナと呼ばれている超大陸が形成・分裂した時期に相当する。超大陸の分裂に際してはスーパープルームが地上まで上昇してきて非常に大規模な火山活動が起こり、地球表面の環境が激変するため、大量絶滅が起こると考えられている。

原生代のエディアカラン紀にはエディアカラ生物群(エディアカラ動物群)が存在していた。この生物群はオーストラリアエディアカラで多数の化石が発見されたことから命名された。生物体はすべて軟組織でできており、体表を保護する硬い骨格を有していなかった。エディアカラ生物群は約5億4500万年前のV-C境界を境にほとんど見つからなくなるが、以後、三葉虫のような硬骨格を有する生物が出現する。
カンブリア紀末詳細は「en:Cambrian?Ordovician extinction event」を参照

古生代カンブリア紀末(約4億8800万年前)に大量絶滅が発生し、三葉虫、腕足類コノドントが激減した。また、カンブリア紀には約5億1700万年前および約5億200万年前にも大量絶滅がたて続けに起きている。
オルドビス紀末詳細は「O-S境界」を参照

古生代のオルドビス紀末(約4億4400万年前)に大量絶滅が発生し、それまで繁栄していた三葉虫、腕足類、ウミリンゴ、サンゴ類、筆石コノドントの大半が絶滅した。当時生息していたすべての生物種の85%が絶滅したと考えられている[注 3]

この時期、大陸は南極域にあり、短い期間であるが大陸氷河が発達した。絶滅は、氷床の発達に伴う海水準の低下時および氷河の消滅に伴う海水準の上昇時の2回確認されているが、海水準変動をもたらした環境の変化と大量絶滅との関係は不明である[3]

2005年アメリカ航空宇宙局(NASA)とカンザス大学の研究者により、近く(6000光年以内)で起こった超新星爆発によるガンマ線バーストを地球が受けたことが大量絶滅の引き金となった、という説が出されている[4]

2017年東北大学大学院などの研究チームは、火山噴火による地球寒冷化が原因とする仮説を発表した[5]

2020年中国、アメリカ、オーストラリアの研究チームは、オルドビス紀末の大量絶滅が4億4310万年前から4億4290万年前までの20万年の間に発生したとの見解を発表した。これは雲南省永善県で発見されたオルドビス紀とシルル紀地層が完全に連続している境界面を分析した成果による[6]
デボン紀後期詳細は「F-F境界」を参照

古生代デボン紀後期のフラスニアン期ファメニアン期の境に当たるF-F境界(約3億7400万年前)には、ダンクルオステウスなどの板皮類[注 4]甲冑魚をはじめとした多くの海生生物が絶滅している。すべての生物種の82%が絶滅したと考えられている。腕足類や魚類のデータから、高緯度より低緯度の、淡水域より海水域において絶滅率が高いことが判明している。

この時期の環境の変化として、寒冷化と海洋無酸素事変の発生が知られている。酸素および炭素同位体比のデータは、2度の寒冷化および有機物堆積、大気中の二酸化炭素の減少を示しており、これは、海水準の上昇および大量絶滅と同時に起こっている。また、海水中のストロンチウム同位体比の変動は、大陸風化の増加(気温の上昇)を示している。ベルギーおよび中国南部のF/F境界層から、小天体衝突の証拠となるスフェルールが報告されているものの、大量絶滅との関連はわかっていない[3]
ペルム紀末顕生代における生物多様性レベル)の推移。横軸は年代を表し単位は百万年。灰色がセプコスキのデータ、緑色が"well-defined"データ、黄色の三角が5大絶滅事件(ビッグファイブ)。2億5100万年前に位置する谷間がP-T境界、右側6550万年前の谷が恐竜が絶滅したK-T境界。P-T境界の谷は他の4回より極端に深く、しかもそれからの回復速度が遅いことがわかり、多様な生物の破滅的終局が起こったことを示している。詳細は「P-T境界」を参照

古生代後期のペルム紀末、P-T境界(約2億5100万年前)に地球の歴史上最大の大量絶滅[7]が起こった。海生生物のうち最大96%、すべての生物種で見ても90%から95%が絶滅した。すでに絶滅に近い状態まで数を減らしていた三葉虫はこの時に、とどめをさされる形で絶滅した[8]


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