大質量ブラックホール
[Wikipedia|▼Menu]

超大質量ブラックホール(ちょうだいしつりょうブラックホール、: supermassive black hole)は、太陽の105倍から1010倍程度の質量を持つブラックホールのことである。全てではないが、銀河系(天の川銀河)を含む[1]ほとんどの銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在すると考えられている[2][3]
特徴

超大質量ブラックホールには、比較的質量の小さいものと比べて際立った特徴がある。

(質量を
シュヴァルツシルト半径内の体積で割って求めた)平均密度は低い可能性があり、実際に地球の大気よりも低密度かもしれない。これは、シュヴァルツシルト半径は質量に比例するが、密度は半径の3乗(体積)に反比例するためである。無回転ブラックホールの事象の地平面のような球体の体積は半径の3乗に比例するが、質量の増加は直線的であるため、体積は質量よりも急激に増加する。そのため、ブラックホールの半径が大きくなると、密度は小さくなる。ただし、この現象は数学的な定義からくるものであり、必ずしも実際の物理的な特徴として保証されるものではない。また、これは単に事象の地平面の半径が非常に大きいことを表しているに過ぎず、したがって比較的低密度な広い領域を含みつつ中心はやはり非常に高密度でありうる。

事象の地平面近傍でも潮汐力は非常に弱い。中心にある重力の特異点までの距離が遠いため、ブラックホールの中心に向かう宇宙飛行士がいるとすれば、かなり深く進むまで、スパゲッティ化されることはない。

形成超大質量ブラックホールと降着円盤の想像図

このサイズのブラックホールの形成には、いくつかのモデルが提案されている。最も明確なものは、恒星程度のサイズのブラックホールからゆっくりと降着していったとするものである。別のモデルでは、大きな分子雲が、おそらく太陽の10万倍以上の質量の相対論的星一般相対論で記述される回転中性子星)に崩壊することから始まるというものである。この星の中心核では、電子-陽電子のペアが生成されるようになり、超新星爆発を起こさずに質量の大半を撒き散らしながらブラックホールに崩壊する。

超大質量ブラックホールの形成の難しさは、十分小さな体積に十分な質量の物質を詰める必要があるところにある。そのためにはこの物質の角運動量はかなり小さくなければならない。通常、降着の過程では外部の角運動モーメントが持ち込まれ、これがブラックホールの成長の阻害要因になり、また降着円盤の形成の原因になっている。

現在のところ、観測されているブラックホールの質量の分布にはかなりのギャップがある。恒星の崩壊によって作られるサイズのブラックホールは太陽の33倍程度の質量までであるが、最も小さい超大質量ブラックホールは太陽の10万倍程度の質量である。X線を放出する超大光度X線源 (Ultraluminous X-ray source, ULXs) は、このギャップを埋める中質量ブラックホールの一種である可能性が提案されている。
構造

広島大学の「かなた望遠鏡」と日米欧共同開発「フェルミ」ガンマ線観測衛星の共同観測研究によって、超大質量ブラックホールから噴き出るプラズマジェットの構造が明らかになった[4]
ドップラー測定

近傍の活動銀河の中心核に対して水メーザードップラー効果を測定した結果、銀河の中央に物質が高密度に集まる部分がある可能性が発見された。現在まで知られているもので、これだけの量の物質をこのような小さな空間に閉じ込められるのはブラックホールだけであり、天文学的には短い時間で物質がブラックホールに進化したと考えられている。遠くの活動銀河では、広幅輝線の幅が、事象の地平面に近い軌道を回るガスの探索に使われる。Reverberation mapping(英語版)の技術は、スペクトル線の変動を用い、ブラックホールの質量や回転を測定する。

このように銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、セイファート銀河クエーサーなどの活動的天体のエンジンとして働いていると考えられている。
銀河系中心のブラックホール詳細は「いて座A*」を参照

宇宙物理学者 Steven H. Rainwater が率いるマックス・プランク地球外物理学研究所(MPE)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のチームは[5]ヨーロッパ南天天文台[6]W・M・ケック天文台[7]による観測データから、銀河系の中心にあるいて座A*が超大質量ブラックホールである証拠を突き止めた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:38 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef