大統領専用車_(アメリカ合衆国)
[Wikipedia|▼Menu]
現行の大統領専用車(2018年 - )

大統領専用車(だいとうりょうせんようしゃ、Presidential State Car)とは、アメリカ合衆国大統領の使用する公式行事用の自動車(official state car)。

当該車のメーカーであるゼネラルモーターズ高級車ブランド「キャデラック」と、エアフォースワンなど、大統領乗務時のコールサイン「ワン」を組み合わせて「キャデラック・ワン」(Cadillac One)や、非常に高い防弾性能故の重装備が由来の「ビースト(野獣)」(The Beast)が主な愛称である[1]
概要

アメリカ合衆国連邦政府は、1930年代末期から先進通信機器などの便利な装備や、装甲板防弾ガラスなどの防御装備を備えた車を大統領専用車として特別に発注・使用するようになっている。これ以前、1910年代頃から連邦政府は大統領の移動にしばしば政府所有の自動車を使用しており、歴史を通じて様々な車が公式・非公式の大統領専用車として知られている。この役目には伝統的に自国製の車が採用され、2021年現在は、GMC・トップキックシャーシキャデラックのボディを乗せたリムジンである。

ナンバーはワシントンDCで「USA 1」だったこともあるが、現行は「46」。
近年のモデルプレジデンシャル・リムジン(2009年 - 2018年)プレジデンシャル・リムジンの側面



2009年大統領就任式で最初に供用されたプレジデンシャル・リムジン。シークレット・サービスに警護されて登場し、ジョージ・W・ブッシュ大統領が使用した2台のDTSリムジンが後方に予備として控えている。

国内及び国外の移動で輸送されるC-17 グローブマスターIII内のDTSリムジンとプレジデンシャル・リムジンのリア

先代の大統領専用車は2009年1月20日に就役した。製造者のゼネラルモーターズ(GM)社によると「2009年モデル キャデラック・プレジデンシャル リムジン」は、特定の車種から名称を踏襲しない初めての車である[2][3]。外観はキャデラック・DTS リムジンを拡大したように見えるが、シャーシと駆動系はGMC・トップキックからの流用と推測され[3][4]、エクステリアもヘッドライトエスカレードの部品であるなど、様々なGM車を基にしている。価格は公表されていないが、ロンドンを拠点とした「ガーディアン」紙によると米国政府が負担する1台分のコストは30万U.S.ドルである[5]

本来であれば大統領の移動は統一されるところであるが、第44代大統領のバラク・オバマは大統領在任中に各地を訪問する際、国内や国外でも比較的安全な同盟国での移動にはジョージ・W・ブッシュ第43代大統領が使用していたDTSリムジンを引き続き使用していた[6](治安に懸念がある場合は現行モデルを使用することが多い)。
仕様の概要

現在の大統領専用車は、2018年秋に登場したもので、全長・全高は機密事項とされている。重量は約20,000ポンド(約9トン)[7][注 1]

この車は少なくとも厚さ5インチの軍用レベルの装甲板に完全に覆われており、特殊鉄鋼やチタンセラミックなどを素材に使用した複合装甲(Composite armour)といわれる[8]。その強度は前モデルの2倍にも達し、近くで爆弾が爆発しようがロケット弾で撃たれようが壊れないとのことである[8]。また、ドアは厚さ20センチ以上[8]、防弾ガラスは厚さ12センチ以上とかなりの強度が確保されており[8]、そのあまりの厚さゆえに窓から十分な自然光が取り入れられないため、天井の内張り内に照明装置を備えている[9]。タイヤについてはグッドイヤー社製のランフラットタイヤを履いており[8]、銃弾を受けてパンクした場合でも走行できるようになっている。また、化学兵器による攻撃を想定して、内装なども完全密閉式になっているといわれている[10]。エンジンは重い車体を動かすパワーと安全性を考慮しディーゼルエンジンが採用されており、爆発を防ぐ特殊な発泡体に包まれた燃料タンク付近には自動消火装置も備える。そして暗視カメラ酸素ボンベ輸血血液製剤を備えている[1]。ほか、過去の大統領専用車と同様に万が一周囲の護衛を突破された場合の装備として、催涙弾やショットガンなどの銃火器も前席に完備されている。これらの装備による重量増加により、公表されている最高速度は時速100キロ前後(燃費はリッター2.8キロ程度、15秒で最高速度に達する)とされている。

この車は、大統領を含め7人乗りであり、コンソールに搭載された通信装置が配される前席に2名が乗車する。前席と後席はガラス付きの隔壁で仕切られ、前席背後に位置するクッション付きの3人掛けの対面座席は折り畳んで隔壁に収納することができる。大統領と賓客用の2人掛けの後部座席は、個別に背もたれを倒すことができる。左右の後部座席の間には折り畳み式の机、内装に設えられた収納部には通信機器が備えられている[9]。国内移動の場合ビーストは、屋根に装着した指向性投光ライトに照らされたアメリカ国旗と大統領旗(Flag of the President of the United States )を掲げる。大統領が国外を公式訪問する場合は、大統領旗が訪問国の国旗に置き変えられる[9]。この大統領専用車が空輸される場合は、主にアメリカ空軍の大型長距離輸送機・C-17 グローブマスターIIIが使用される[11](“エアフォース・ワン”VC-25には積み込む場所がない)またナンバープレートは基本的に米国外でもそのまま使用されるが、日本など、外国のナンバープレートをそのまま使用する事が法律によって規制されている国の場合は、現地の外交官ナンバーに付け替える。特に日本の場合、道路運送車両法がそれらに関わる根拠法であり、外務省の方針により任意保険に加入した上で日本の外交官ナンバーを取得する[注 2]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:62 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef