大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判
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大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判(おおえけんざぶろう・いわなみしょてんおきなわせんさいばん)は、元沖縄戦指揮官および遺族が、大江健三郎岩波書店名誉毀損で訴えた裁判。集団自決訴訟、沖縄戦集団自決裁判ともいわれる。原告側は「沖縄集団自決冤罪訴訟」と呼称した。事件番号は、平成17年(ワ)第7696号出版停止等請求事件。

岩波書店発行、大江健三郎著『沖縄ノート』と家永三郎著『太平洋戦争』の記述を巡り争われ、大江・岩波書店が勝訴した[1]
概略

沖縄戦の集団自決について、岩波書店発行の書物『沖縄ノート』(著者:大江健三郎 発行:1970年)、『太平洋戦争』(著者:家永三郎 発行:1968年 文庫本として2002年に発行)に当時の座間味島での日本軍指揮官梅澤裕(うめざわゆたか)および渡嘉敷島での指揮官赤松嘉次(あかまつよしつぐ)が住民に自決を強いたと記述がされ、名誉を毀損したとして梅澤裕および赤松秀一(赤松嘉次の弟)が、名誉毀損による損害賠償、出版差し止め、謝罪広告の掲載を求めて訴訟を起こした[2]。原告2人が実際に『沖縄ノート』を読んで積極的な意思によって提訴したわけではなく「自由主義史観」を掲げるグループに担ぎ出されての提訴であった[3]

2005年8月大阪地方裁判所に提訴され、2008年3月28日に第一審判決となった。判決は、集団自決への軍の関与を認定し、集団自決への梅澤、赤松の関与も十分推認できるとした。そして原告らが自決命令を発したことを直ちに真実と断定できないとしても,この事実については合理的資料若しくは根拠があると評価できることから、本件各書籍の発行時に大江健三郎らは自決命令があったことを真実と信じる相当の理由があったと言えるとして、名誉棄損の成立を否定し、原告の請求を棄却した[4]

原告側は判決を不服として控訴したが、大阪高裁も2008年10月31日に地裁判決を支持して控訴を棄却し、原告側はただちに最高裁に上告した[5]2011年4月21日、最高裁第一小法廷は上告を棄却。原告側の主張は却下された[6][7][8]
争点と大阪地裁の判断

大阪地裁における本裁判の争点とその判断は,以下であった[5]
@「沖縄ノート」の記述は,原告梅澤又は赤松大尉を特定ないし同定するようなものであるか(特定性ないし同定可能性の有無)

『沖縄ノート』には梅澤、赤松大尉の名前は示されていないが、沖縄戦についての諸文献や報道を踏まえれば『沖縄ノート』の記述が、梅澤、赤松大尉に関する記述であると特定ないし同定し得る。
A「太平洋戦争」「沖縄ノート」の記述が原告梅澤及び赤松大尉の社会的評価を低下させるものであるか (名誉毀損性の有無)

『太平洋戦争』の記述は、梅澤が「老人・こどもは村の忠魂碑の前で自決せよと命令し」たとの記述があり、本来,保護してしかるべき老幼者に対して無慈悲に自決することを命じた冷徹な人物であるとの印象を与えるものであり、客観的な社会的評価を低下させる記述である。『沖縄ノート』の記述は、慶良間列島の集団自決について自決命令を発した人物が存在するような記述の仕方となっており、また渡嘉敷島については守備隊長が住民に対し自決命令を発したと読める記述となっていることから,集団自決という平時ではあり得ない残虐な行為を命じたものとして梅澤、赤松大尉の客観的な社会的評価を低下させるものと認められる。
B 「太平洋戦争」「沖縄ノート」の記述に係る表現行為の目的がもっぱら公益を図る目的であるか(目的の公益性の有無)

『太平洋戦争』の集団自決に記述の表現行為の主要な目的は、戦争体験者として、また、日本史の研究者として、太平洋戦争を評価、研究することにあったものと認められ、それが公益を図るものであることは明らかである。『沖縄ノート』は、沖縄が本土のために犠牲にされ続けてきたことを指摘し、執筆の時点において沖縄の民衆の怒りが自分たち日本人に向けられていることを述べ、日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直したものであり、沖縄戦における集団自決の記述は、この問題を本土日本人の問題としてとらえ返そうとしたものであることが認められ、また梅澤、赤松大尉が当時公務員に相当する地位にあったことを考えると、その表現行為の主要な目的は、日本人のあり方を考え、ひいては読者にもそのような反省を促すことにあったものと認められ、それが公共の利害に関する事実に係り、公益を図るものであることは明らかである。
C梅澤、赤松大尉が住民に集団自決を命じたか(真実性の有無) /D被告らが,梅澤、赤松の自決命令が真実であると信ずるについて相当の理由があるか(真実相当性の有無)

下記別途記載
E「沖縄ノート」の各記述は,赤松大尉に対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものであるか(公正な論評性の有無)

『沖縄ノート』の記述は「人間としてそれをつぐなうには、あまりにも巨きい罪の巨塊のまえで、かれはなんとか正気で生き伸びたいとねがう」などかなり強い表現が赤松大尉に対して使用されている。しかし、これらはあくまで赤松大尉の実名を伏せたまま、日本本土と沖縄との歴史的な経緯や関係を軸に、日本人は現在のままでいいか、日本人がアジアや世界に対して普遍的な国民であることを示すためにはどうすればよいかを自分に問いかけ考えるという主題に沿う形で記述を展開する中で使用されている表現にすぎない。また赤松大尉の氏名が明示されていないことは、赤松大尉に対する個人攻撃の意図で集団自決の記述をしなかったことを推認せしめる。そうすると、沖縄ノートの各記述は、守備隊長ひいては日本軍の行動を通して著者を含めた日本人全体を批判し、反省を促す構成となっているものと認められ、文脈次第では人身攻撃となり得る表現もあるものの、文章全体の趣旨に照らすと、その表現方法が執拗なものとも、その内容がいたずらに極端な揶揄、愚弄、嘲笑,蔑視的な表現にわたっているともいえず、赤松大尉に対する個人攻撃をしたものとは認められない。

(F敬愛追慕の情の侵害があったか、G損害の回復方法及び損害額、の二争点は名誉毀損を理由とする損害賠償請求の成立が否定されたため、検討されなかった)
争点C、D 真実性・真実相当性
前提事実


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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