大殺陣
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大殺陣
監督
工藤栄一
脚本池上金男
出演者里見浩太郎
平幹二朗
音楽鈴木静一
撮影古谷伸
編集堀池幸三
製作会社東映京都撮影所
配給東映
公開 1964年6月3日
上映時間118分
製作国 日本
言語日本語
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『大殺陣』(だいさつじん)は、1964年6月3日に公開された日本時代劇映画。主演:里見浩太郎(のちの里見浩太朗[1]監督工藤栄一脚本:池上金男(のちの池宮彰一郎)。東映京都撮影所製作・東映配給。モノクロ[2]

実録タッチの作風による「集団抗争時代劇」と称される作品のひとつ[3][4]。「甲府宰相」こと徳川綱重暗殺を決意した軍学者山鹿素行とその協力者たちの破滅を描く[5]。徳川綱重の死因が謎であることにヒントを得たオリジナルストーリーである[2][3][5]

封切り時の同時上映作品は『続・図々しい奴』(監督:瀬川昌治 主演:谷啓)。
ストーリー

延宝6年(1678年)4月、4代将軍徳川家綱の治世。大老酒井忠清は、後継として家綱の弟で参議綱重を擁立し、天下をわがものにしようと企む。それを危ぶむ軍学者山鹿素行が弟子らによる一党を組織して酒井の暗殺を計画するも、教え子のひとりで幕臣の日下仙之助が、誇大妄想に陥って異常なふるまいにおよんだために露見する。一党や、そう目された無実の幕臣たちは「公方さまの御政道を乱す謀反」のとがで次々と捕縛され、拷問のすえ処刑される。さらに、酒井の謀略により、謀反の首謀者と決めつけられた若年寄堀田正俊までが一時幽閉の身となる。日下は入牢するも、精神異常のかどで釈放され、酒井の部下である大目付北条氏長に対し、酒井暗殺計画への参加を直訴したのち、どこかへ姿を消す。

素行一党の中島外記は、追っ手から逃げたすえ、友人で書院番の神保平四郎の邸宅に駆け込む。中島をかくまった平四郎は謀反の一味とみなされて捕縛され、平四郎の妻・加代は目の前で斬られる。何とか逃げ出した平四郎は、偶然出会った旗本・浅利又之進の屋敷にかくまわれる。

加代の安否を確認しようと出かけた平四郎に山鹿素行の姪・みやが駆け寄り、加代が死んだことを告げる。怒りにまかせて復讐に向かおうとする平四郎を、みやは必死に止め、「下っ端の役人を斬ったところで何も変わらない、巨悪を倒さなくてはならない」とさとし、酒井忠清の暗殺計画や、捜査の手を逃れた残党たちによる暗殺隊再興を明かす。みやは平四郎を連れて仲間の星野友之丞の長屋をたずね、かくまうよう依頼する。平四郎は星野と話をするうちに、素行一党に加わることを決める。平四郎は浅利を誘うが、浅利は「人殺しは嫌いだ」と告げて断る。

暗殺隊の頭目だった岡部源十郎が土壇場で裏切るそぶりを見せたため、平四郎は岡部を斬る。北条に救出された瀕死の岡部は、素行らの計画を明かして死ぬ。一方、出家していた日下が偶然みやと再会し、強引に仲間に加わる。刺客は平四郎、星野、日下、別所隼人、渡海八兵衛、そして無宿人の助七の6人となった。

ある夜、素行は刺客たちを集め、計画の一部変更を伝える。「倒すべき相手は酒井だが、警護の厚い酒井を討つのではなく、綱重公を暗殺する。酒井の計略の要となる公を討つ方が効果的であり、酒井も自分以外が狙われているとは思っていないため、隙を狙える。明日、上野寛永寺へ向かう綱重公ご一行を(行き止まりである)吉原の門内におびき寄せ、閉じ込めて襲撃する」

決行当日、刺客たちは、綱重の一行を吉原におびき寄せることには成功するが、大門を閉める役割だった渡海が臆して逃げたため、計画が破綻する。もとより多勢に無勢であり、代わりに門を閉めに向かった平四郎をはじめ、刺客たちは綱重を討ち果たすことができないまま返り討ちに遭い、残らず倒される。

酒井と北条が吉原に急行し、九死に一生を得た綱重を見舞う。そこへたまたま通りかかった浅利は、無惨に殺された平四郎の姿を見て怒りに震える。安堵して大笑いする綱重らの姿を見た浅利は、衝動的に斬りかかり、綱重と北条を討ち果たすが、幕臣たちに斬り殺される。一方、無傷で生き残った酒井は、自身の後ろ盾となるべき綱重を失ったことでわれを失い、「甲府公(=綱重)は死んではおらん」と叫び続ける。素行はこれらの様子を複雑な思いで遠巻きに見つめていた。
登場人物
刺客と協力者
神保平四郎(じんぼ へいしろう)
書院番百五十石。巻き込まれる形で山鹿素行一党に加わる。武芸とは無縁で人を斬ったことがなかったが、初めて岡部を斬る。
浅利又之進(あさり またのしん)
小普請八百石。世捨て人のような生活をしている旗本。逃げて来た平四郎をかくまう。人殺しを嫌い、素行一党には加わらなかったが、平四郎の死に居合わせ、綱重らを倒す。
山鹿素行(やまが そこう)
軍学者。綱重暗殺の首謀者。北条氏長の弟子であったが、破門される。指示役に徹し、暗殺実行の際には離れて様子を見ていたため、生き残る。
山鹿みや(やまが みや)
素行の姪。平四郎などを一党に誘う。行動を共にするうちに平四郎に想いを寄せるようになる。岡部を味方に引き止めるために身体を捧げるが、裏切りを知り、平四郎に斬らせる。
星野友之丞(ほしの とものじょう)
小普請七両一人扶持。素行の弟子。長屋に住む貧乏御家人。平四郎をかくまう。岡部の死後、暗殺の指揮を執るよう素行に命じられる。暗殺決行の前夜、自身の罪がふりかからないようにするため、妻子に手をかける。
日下仙之助(くさか せんのすけ)
小十人組三十石。素行の弟子。小出治兵衛配下の幕臣だったが摩利支天への強い帰依から正気を失い、「自分こそが酒井を討てる」と信じ込むようになり、計画の役に立たないとして小出の身柄を酒井に売ったのち、北条が新たな謀反の首魁になるよう評定所へ直訴するが、冷淡に扱われ、出家する。その後、寺院で追っ手から逃げるみやと偶然再会し、暗殺計画への参加を無理に申し出て、さらにみやを犯す。暗殺実行の直前にも言い寄り、拒まれたことで怒りにまかせてみやを絞め殺す。
別所隼人(べっしょ はやと)
代官手付十五俵二人扶持。素行の弟子。刑死した御広敷番・別所忠一郎の弟。評定所から兄の遺体を受け取ったのち、岡部に「逃げよう」と誘われ、怒り狂う。
渡海八兵衛(とかい はちべえ)
素行の門弟。冒頭捕縛された一党の解放を指示したり、山鹿邸を訪れた氏長を障子の影から窺ったりと暗躍、素行に最も近い人物のように思われたが、決行前夜まで暗殺計画の対象もメンバー数も知らず、「先陣を承りましょう」と意気ごんでいたものの、素行は作戦指揮を星野に任せた。吉原での襲撃計画の際、大門を閉めて綱重らを閉じ込める役割だったが、臆して役目を放棄する。逃げたのちの生死は不明。
助七(すけしち)
素性不明の無宿人。遊び好きで、吉原での暗殺計画を明かされた際、翌日が一斉休業日で計画に好都合であることを素行に教える。
岡部源十郎(おかべ げんじゅうろう)
小納戸役三百五十石。素行の弟子。みやに好意を持っている。一党の頭となったが、気弱な性格から仲間を裏切ろうとしたため平四郎に斬られる。瀕死のところを北条に拾われ、素行が酒井暗殺を企てていることを明かして死ぬ。
綱重とその関係者
徳川綱重(とくがわ つなしげ)
参議。将軍・徳川家綱の弟。
酒井忠清(さかい ただきよ)
大老。綱重を次期将軍に据え、自らは将軍補佐役となって天下をわがものにしようと企み、敵対する一派を容赦なく粛清する。
北条氏長[注 1](ほうじょう うじなが)
大目付。酒井の腹心。素行にとって年下の師匠であった[注 2]。酒井の命を受けて素行一党を捕らえるが、実証を重んじる主義のため、堀田正俊を釈放し、山鹿素行の逮捕を先延ばしにする。また、発狂した日下を釈放し、そのまま野放しにする。
その他の人物
堀田正俊(ほった まさとし)
若年寄。酒井と敵対関係にあったために謀反の罪を着せられて幽閉されるが、北条の尽力により、粛清を免れて復職する。
中島外記(なかじま げき)
御書院番。平四郎の友人。平四郎が素行の計画に巻き込まれるきっかけを作る。
小出治兵衛(こいで じへえ)
小十人組組頭。部下の日下に売られて謀反を企んだ頭目として捕らえられ、拷問の末に殺される。
神保加代(じんぼ かよ)
平四郎の妻。連行される平四郎を追いかけたところを斬り殺される。
キャスト

※出演者としてクレジットされている園佳也子は、尺合わせのため出演シーンが全削除されている[6](後述)。

神保平四郎:里見浩太郎


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