大局将棋
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大局将棋の駒の初期配置

大局将棋(たいきょくしょうぎ)は、古将棋の一つ。知られている将棋としては数と盤面が最大のものである。
概要

自軍・敵軍それぞれ402枚(合計804枚)の駒を使用する、世界的にも最大規模の盤上遊戯である。

泰将棋本将棋中将棋大将棋大大将棋摩訶大大将棋を含む)・天竺大将棋和将棋からほとんどの駒を取り込んでいるため、これらよりは時代が下ると思われる[1]。これらの将棋に含まれている駒以外にも多数の駒が追加されており、この内のいくつかは他の現在伝わっていない変種から取り込まれたものと思われる。また、泰将棋までの大型将棋類は駒名に仏教神道・民間信仰の影響が見られるが、大局将棋ではそうした宗教的要素は薄まっている[1]
歴史
発見と背景

1990年頃関西将棋会館内の将棋博物館で未整理資料の中から発見された大橋家の古文書『大局将棋駒』に記載されており、江戸時代に考案されたと考えられている。『大局将棋駒』を含む「大橋家文書」は関西将棋会館内の将棋博物館の閉館後、一時は大阪商業大学アミューズメント産業研究所への移管も検討されたが、最終的には大橋家の血縁者に返還された[2][3]。『大局将棋駒』に記されたルールの内容は遊戯史研究家の梅林勲によって解釈された[1]。大局将棋について詳述された最初の文献は『世界の将棋』(将棋天国社、1997年)であり、同書には梅林の解釈による駒の動きが記されている[1](後述「#ルール」節の記述は当該文献の改訂版を典拠としている)。

『大局将棋駒』の内容は、駒の名称と配置の図に駒の動きが点で付記されているのみであり、詳しいルールや制作経緯等は残されていない[1]。また、棋譜も現存しておらず、当時盤駒が作成された証拠もないため実際に指されたかどうかは不明である。

将棋研究者の古作登は、江戸時代当時の将棋家元大橋家と囲碁家元本因坊家との間で勢力争いがあったことを指摘した上で、大橋家が「これまで最大の泰将棋をしのぐスケールの将棋を作ることで認められ、家格を高めようとした」と分析し、制作時期を18世紀後半と推定している[1]。また、古作は「対局には長時間を要するため遊戯としての面白みに欠けていること」「大局将棋について解説した文書が他に見つかっていないこと」から、あくまで壮観な駒の配置の将棋を創作して権威を示すために作られたものであり、実際に遊ばれることはなかったとしている[1]

後述するテレビ番組『トリビアの泉』などのメディアにおいて紹介されるまで、大局将棋はほとんど知られていなかった。例えば、1991年日本映画王手』(赤井英和主演、阪本順治監督)の終盤では、若山富三郎演ずる元真剣師が設けた対局で用いられた泰将棋(作中での名称は平安大将棋)が世界最大の将棋および盤上遊戯として紹介されていた。
盤駒

先述の通り、考案された当時に盤駒が作成された証拠は無い。現在は復元された駒が少なくとも2組あるのみ[4]で、1組が大阪商業大学に所蔵されている[5][注 1]
対局例

2004年5月19日放送のフジテレビ系『トリビアの泉』で「将棋には804枚の駒を使うものがある」というトリビアとして紹介され、番組では伊藤博文六段と安用寺孝功四段(段位はいずれも当時)による対局が行われた[6]。駒の動き方を示すルールブックに目を通しながら指し、数度の休憩休眠を挟み、対局時間32時間41分(計3日間)の末、3805手で先手安用寺が勝利した[7]。対局後、安用寺は「もう二度とやりたくない」、伊藤は「負けて悔しさはない」と語っている[7]。これが史上初の大局将棋の公式対局とされ[7]、この放送以降、大局将棋の存在が公に知られるようになった。
ルール

本節の内容は、特記なき限り梅林・岡野(2000)[8]を出典とする。
基本ルール

縦横36マスずつに区切られた将棋盤の上で行う。

自分から見て手前の十一段を自陣、反対に相手から見て十一段を敵陣という。

競技者双方が交互に、盤上にある自分の駒を動かす。駒は取り捨てであり、すなわち
本将棋とは違い持ち駒という概念はない(取った敵駒を使うことは出来ない)。

駒は209種類あり[注 2]、それぞれ動きが決まっている。

玉将鳩槃鳩盤天狗鳳師麟師大将鉤行鵬師中師獅鷹奔鷲大師大旗以外は敵陣に入ると「成駒」になれる。

自分の駒を動かすとき、動く先に相手の駒があるとき、その駒を取ることができる。

成るのは移動が完全に終了した後である(二歩移動できる駒に関しては二歩目を移動した後)。

玉将を取られても太子が残っていれば負けにはならない。太子には初めから存在する太子と、醉象の成駒としての太子があり、最大で3枚の王が存在しうる。

最後の一枚の玉将または太子を詰ませた方が勝利となる。

大将副将角将飛将猛龍飛鰐飛将の成駒)は、それぞれ特定の方向に、自分よりも格の低い駒ならばいくつでも飛び越えて、その飛び越えた駒の味方の駒も含めて全てを取ることが出来る。駒の格は次の順。
玉将、太子

大将

副将

角将、飛将、猛龍、飛鰐

その他の駒


初期配置図

初期配置は以下の通りである[8]。なお、上から12段にある駒は後手駒、下から12段にある駒は先手駒である。

香車白虎走兎鯨鯢火鬼山鷲天狗獣曹走馬奔鬼地龍鳩槃奔獏奔王後旗右将金将太子玉将金将左将後旗奔王奔獏鳩盤地龍奔鬼走馬獣曹天狗山鷲火鬼鯨鯢走兎玄武香車
反車香象山鳩飛燕禽吏雨龍森鬼山鹿走狗走蛇横蛇大鳩走虎走熊夜刄金剛銀将醉象近王銀将力士羅刹走熊走虎大鳩横蛇走蛇走狗山鹿森鬼雨龍禽吏飛燕山鳩白象反車
金車横龍走鹿走狼角将飛将右虎右龍獣吏風龍奔狗行鳥古鵄孔雀水龍火龍銅将鳳師麟師銅将火龍水龍孔雀古鵄行鳥奔狗風龍獣吏左龍左虎飛将角将走狼走鹿横龍金車
銀車竪熊桂馬豚将鶏将狗将馬将牛将中旗横猪銀兎金鹿獅子禽曹大鹿猛龍林鬼副将大将林鬼猛龍大鹿禽曹獅子金鹿銀兎横猪中旗牛将馬将狗将鶏将豚将桂馬竪熊銀車
石車雲鷲角行飛車横狼飛猫山鷹竪虎兵士小旗雲龍銅車走車羊兵猛牛大龍金翅無明提婆金翅大龍猛牛羊兵走車銅車雲龍小旗兵士竪虎山鷹飛猫横狼飛車角行雲鷲石車
木車白駒?犬横行踊鹿水牛猛豹猛鷲飛龍毒蛇鳫飛烏行盲犬水将火将鳳凰鉤行小亀大亀摩?麒麟火将水将盲犬烏行鳫飛毒蛇飛龍猛鷲猛豹水牛踊鹿横行?犬白駒木車
瓦車竪狼横牛驢馬馬麟猛熊嗔猪悪狼風馬鶏飛古猿淮鶏北狄南蛮猛鹿猛狼隠狐中師鵬師隠狐猛狼猛鹿東夷西戎淮鶏古猿鶏飛風馬悪狼嗔猪猛熊馬麟驢馬横牛竪狼瓦車
土車朱雀変狸騎兵鴟行登猿猫刄燕羽盲猿盲虎牛車横飛盲熊老鼠方行蟠蛇臥龍奔鷲獅鷹臥龍蟠蛇方行老鼠盲熊横飛牛車盲虎盲猿燕羽猫刄登猿鴟行騎兵変狸青龍土車
車兵横兵竪兵風将川将山将前旗馬兵木将牛兵土将猪兵石将豹兵瓦将熊兵鉄将大旗大師鉄将熊兵瓦将豹兵石将猪兵土将牛兵木将馬兵前旗山将川将風将竪兵横兵車兵
右車横猿竪行飛牛弩兵竪狗竪馬炮兵龍馬龍王刀兵角鷹飛鷲鎗兵竪豹猛虎弓兵吼犬狛犬弓兵猛虎竪豹鎗兵飛鷲角鷹刀兵龍王龍馬炮兵竪馬竪狗弩兵飛牛竪行横猿左車
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
 犬仲人犬犬仲人犬
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 仲人犬犬仲人犬
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
左車横猿竪行飛牛弩兵竪狗竪馬炮兵龍馬龍王刀兵角鷹飛鷲鎗兵竪豹猛虎弓兵狛犬吼犬弓兵猛虎竪豹鎗兵飛鷲角鷹刀兵龍王龍馬炮兵竪馬竪狗弩兵飛牛竪行横猿右車


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