大学入試センター試験
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この項目では、1990年から2020年まで大学入試センターにより実施された試験について説明しています。

1979年から1989年まで同法人により実施された試験については「大学共通第1次学力試験」をご覧ください。

2021年から同法人により実施されている試験については「大学入学共通テスト」をご覧ください。

大学入試センター本部受験生に配布された問題冊子

大学入試センター試験(だいがくにゅうしセンターしけん、英語: The National Center Test for University Admissions)は、1990年度から2020年度まで独立行政法人大学入試センター(DNC)により[注 1]、例年1月13日以降の最初の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われていた日本大学の共通入学試験である。かつての国公立大学共通第1次学力試験が大学共通第1次学力試験と改められ、さらに改称され大学入試センター試験となった。2020年度の試験をもって廃止され、これに代わって2021年度より大学入学共通テストが実施されている。
概要

教科・科目ごとに決まっている高等学校学習指導要領に沿って出題される(視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱系の特別支援学校高等部はこれらに準ずる)。全教科・全科目で設問の解答をマークシートに記入する方式となっており、記述式の設問はない。

平均点は各教科・科目とも6割程度になるように作成してあるが、年度や教科・科目によっては、想定以上のずれが生じることがある。

試験会場は国内ほとんどの大学が主となるが、一部の高校や予備校でも行われる。試験会場は年によって異なる場合があり、その年の年度後半に発表される。なお、試験1日目の前日の金曜日は、設営準備や不正防止のため、試験会場の建物とその周辺が「関係者以外立入禁止」となる場合がほとんどである。
名称

正式名称は「大学入学者選抜大学入試センター試験(だいがくにゅうがくしゃせんばつだいがくにゅうしセンターしけん)」である。

一般には、1990年から2020年までのDNCによる「大学入学者選抜大学入試センター試験」のみを指して「大学入試センター試験」「センター試験」と表現する場合が多く、以下本稿でもその趣旨で「大学入試センター試験」「センター試験」と記載する。

なお、1992年頃までは「新共通テスト」[注 2]、現実に施行されてからは「共通テスト」「新テスト」の名称が使われ、マスコミでも「共通テスト(大学入試センター試験)」「新テスト(大学入試センター試験)」などと表記されていた。またNHKでは当初必ず「大学入試センター試験、いわゆる新テスト」と呼称し、「新テスト」を一般的な名称として使用していた。当初の略称には「大セン試験」なるものもあり、一部の予備校等で採用していた。

当試験が実際に採用されていた時代に受験生だった世代の人々や受験産業関係者の間では「センター」で通じる場合が多い。当時の塾などの資料上では「セ試(せし)」と略すこともあった。また、大学入試の願書等で「DNC」(Daigaku Nyushi Center)と記載されることもあった。
採用校

1979年から1989年までの間、国公立大学の入学志望者を対象とした大学共通第1次学力試験(共通一次試験、共通一次)を実施していた。これは、入学試験問題において、奇問・難問や重箱の隅をつつくような問題をなくし、一定の学力基準を測ることを目的として導入されたものである。しかし、当時は有名私立大学は参加できないばかりか実際にはこういった設問を完全に排除することができず、1990年から、国立大学の共同利用機関であるDNCの実施する大学入試センター試験に変更し、私立大学も試験成績を利用できるようにするなど、試験自体を流動性のあるものに改めた。2006年には英語のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用したリスニング試験として実施され、機械に関するトラブルも含めて話題となった。

国公立大学においては、(一部の推薦選抜などを除き)出願資格を「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」と規定している。生徒の学力低下を懸念して、ほとんどの国公立大学ではセンター試験で5(又は6)教科7(又は8)科目、合計950点分[注 3]の受験が必須である。多くの文系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史及び公民の中から2科目、理科の基礎を付した科目から2科目が、理系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史又は公民のうち1科目、理科の基礎を付していない科目から2科目が主流となっている。また、私立大学の参加も年々増加している。私大の場合、センター試験を入学者選抜にどう利用するかは、各大学が個別に決めている。英語リスニングの結果を採用しない大学[1]や、第一次選抜のみの使用の大学[2]もある。

センター試験開設当初とセンター試験廃止年度までの30年間に、受験する教科・科目が増加・改定される一方で、出題や運営に関するトラブルも発生した(後述)。難易度は教科・科目や年度によってばらつきがあり、満点者が出ない教科・科目がある年もあった。東京大学ですら第一次選抜を行わない年が現れる一方で、第1段階選抜得点を非常に高く要求する大学もある[注 4]
沿革

1988年12月15日:試行テストを実施。

試行テストの目的は、どのように試験を実施するのかについて私立大学の関係者が確認をすること、試行テストの成績と実際の入試結果との比較調査を行うことであった。ただし、合否判定の資料にならないよう、成績は翌年4月以降に各大学へ通知された。

試行テストは2日間にわたって実施され、1日目は国語、地歴公民、数学A・数学Bの3教科10科目、2日目は外国語、理科A・理科B・理科Cの2教科8科目がそれぞれ実施された。

共通一次試験との具体的な相違点として、試験にかかる負担の低減と入試科目の弾力化が挙げられる。具体的には次のとおり。

外国語、国語を100分から80分に短縮。

同様に、それまで100分で行っていた数学をAグループ(「数学I」)とBグループ(「数学II」「工業数理」「簿記会計I・II」)に分割、それぞれ60分とし、さらに「*」印マークを廃止。

理科をAグループ(「物理」「地学」)、Bグループ(「化学」「理科I」)、Cグループ(「生物」)に分割し、大文字アルファベットマークを廃止。



1990年大学共通第1次学力試験を改称し、第1回大学入試センター試験を実施。

1997年学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定。

外国語に「中国語」を導入。

「国語」を「国語I・II」に科目名変更、新科目である「国語I」を導入。

社会を地理歴史と公民に分割。

新科目である「地理A」「地理B」「日本史A」「日本史B」「世界史A」「世界史B」(以上、地理歴史グループ)をそれぞれ導入。

「倫理,政治・経済」を廃止、「倫理」「政治・経済」に分割(これらに既存の「現代社会」を加え公民グループ)。


数学について、AグループとBグループを(1)グループと(2)グループに改称。

新科目である「数学I」「数学I・数学A」をそれぞれ導入(数学(1)グループ)。

「簿記会計I・II」を「簿記」に変更、新科目である「数学II」「数学II・数学B」「情報関係基礎」を導入(数学(2)グループ)。


理科について、Aグループ・Bグループを、それぞれ(1)グループ・(2)グループに改称(Cグループは廃止)。

新科目である「総合理科」「物理IA」「物理IB」「生物IA」「生物IB」「化学IA」「化学IB」「地学IA」「地学IB」をそれぞれ導入。(19971998年度は旧課程履修者のため、旧「数学I」・旧「数学II」・「理科I」も平行して実施)


1999年:旧「数学I」・旧「数学II」・「理科I」を廃止。

2000年11月22日国立大学協会が学力の低下を懸念し、それまでほとんどの国公立大学が5教科6科目を試験教科科目として課していた状況を打開し、5教科7科目を課すことを提言。これに多くの国公立大が従い、最終的には2004年度以降大多数の国公立大が後者の受験教科科目に移行した。

2002年:外国語に「韓国語」を導入。

2004年短期大学の利用が開始、「生物IA」「生物IB」を理科(1)グループから、新設した理科(3)グループに移行。

2006年:学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定。

外国語のうち、英語の選択者の大多数が「英語(筆記)」と、新規に導入された「英語(リスニング)」(配点50点・試験時間30分)との両方の受験が必要となる。

「国語I」を廃止、「国語I・II」を「国語」に科目名変更。

「簿記」を「簿記・会計」に、「工業数理」を「工業数理基礎」に変更(数学(2)グループ)。

新科目である「理科総合A」(物理・化学分野)「理科総合B」(生物・地学分野)を導入。

「物理IB」「化学IB」「生物IB」「地学IB」を廃止し、新科目である「物理I」「化学I」「生物I」「地学I」を導入。(2006年度に限り旧課程履修者のため、「物理IA」「化学IA」「生物IA」「地学IA」「総合理科」も平行して実施)


2007年:「物理IA」「化学IA」「生物IA」「地学IA」「総合理科」を廃止。

2012年:地理歴史と公民を統合し、理科3グループを1グループに統合。統合グループ内で最大2科目まで選択できるように変更。「倫理,政治・経済」を復活。同時に、出願時に志願票で「受験教科名」と「地理歴史・公民、理科の受験科目数」、「数学II・外国語の別冊子試験問題の配付希望」を申し出て登録する受験教科事前登録制が導入された。

2013年10月21日教育再生実行会議が、「大学入試センター試験」を廃止し、新たに大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の創設することを提言した[5]

2015年学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定。

数学、理科のみ新課程の範囲からの出題となり、新たに「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」「物理」「化学」「生物」「地学」の8科目を導入、最大3科目選択可能とし[6][7]、理科は「理科(1)」「理科(2)」の2グループに分けられる[7]。ただし、同年度は旧課程履修者のために「旧数学I」「旧数学I・旧数学A」「旧数学II・旧数学B」「理科総合A」「理科総合B」「物理I」「化学I」「生物I」「地学I」も旧課程の範囲から出題し旧課程履修者のみ選択できる[7](新課程科目「数学II」は旧課程履修者にも対応した出題内容となっているため「旧数学II」は廃止)。また、旧課程履修者は理科において新・旧の教育課程の教科科目を組合せて選択解答することは不可[7]。選択方法は下記の通り。

A:「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目から2科目選択

B:「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から1科目選択

C:「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目から2科目、及び「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から1科目を選択

D:「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から2科目選択
(2015年試験の経過措置である旧課程科目は選択方法B又はDに属する。Dの場合は旧課程1科目、新課程1科目の選択は不可)


2016年学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定。

「旧数学I」「旧数学I・旧数学A」「旧数学II・旧数学B」「理科総合A」「理科総合B」「物理I」「化学I」「生物I」「地学I」を廃止。

国語、地理歴史・公民、外国語、専門学科に関する科目は全て新課程の範囲からの出題となり、旧課程履修者に対する経過措置は講じない(教科名科目名の変更なし)。

専門学科に関する科目のうち「工業数理基礎」のみ旧課程の範囲から出題し、旧課程履修者のみ「数学(2)」の時間に選択できる(新課程履修者は選択は不可)。


2017年:「工業数理基礎」を廃止。専門学科に関する教科科目において「工業数理基礎」を選択する受験生が極めて少なく、また工業科出身者は「情報関係基礎」を代替としている状況であるため[8]

2020年:最後のセンター試験を実施[9]。翌年から、大学入学共通テストに移行。

作問から試験実施までの流れ
作問

センター試験の問題は、国公私立の大学教員などを中心に構成される、大学入試センターの「教科科目第一委員会」が作問する[10]。出題教科目の作業部会と点字問題の作成部会の計24部会が設置されており、委員の任期は2年で、毎年約半数ずつ交代する仕組みとなっている[11]

作問には約2年をかけ、本試験と追試験の2種類を作問する。完成した問題は、大学入試センターの「教科科目第二委員会」に所属している、第一委員会での委員経験のある、国公私立の大学教員や学識経験者などの約100人によって点検される[11]。出題教科目ごとに計21の点検部会が置かれており、ここでは試験問題の構成や内容、解答、用字・用語などの点検が行われる[11]。続いて、国公私立の大学教員や学識経験者などで構成される「教科科目第三委員会」で形式や表現、各教科目間での整合性、重複などの点検が行われる。また、点検協力者として、高校教育現場を知る立場から難易度や出題範囲が学習指導要領から逸脱していないかを確認するため、高校での授業経験があり、現在は授業を担当していない管理職や教育委員会指導主事も参加している[11]

点検が行われた問題は印刷に回され、24時間厳重に警備されている保管倉庫に一旦保管される。その後、試験数日前に全国約700の会場に送られて、当日まで厳重に保管される。ここまでの過程で、全体で数千人が関わってくる。なお、問題用紙は、警備員常駐のもと、専用車で試験場まで輸送されている。また大学入試センターは、警察庁や各都道府県の警察に対して、試験問題の輸送時における警備協力の要請を行っている[12]

大学入試センターは、機密事項であることを理由に、問題冊子がどこで印刷されているかを公表していない。大学入試センターの関連文書では「印刷関係業者」とだけ記載されている。

問題自体は、本試験用・追試験用の2セットが毎年作問されるのに加え、問題の漏洩に備えた「緊急対応用試験問題」が準備されている[12]。緊急対応用試験問題に関しては、毎年作問されるわけではなく、一度作成したものを修正・再印刷して保管している。また、共通一次試験時代に(三大予備校などの)模擬試験と国語の出典が一致したことがあったため、作問者も模擬試験の検査をし、出典が重なっていた場合は問題を差し替えている。そのため、現在では模試と実際の試験問題の出典が一致することは減っている。しかし、2013年度にZ会による市販の演習問題集と一致するなど、模擬試験などと問題が合致するケースがなくなったわけではない。なお、このようなことが起きた場合にはそれぞれの予備校のWebサイトで「問題の予想が的中した」などと報告される。
過去問題の再利用

以前までセンター試験では、前身である大学共通一次試験を含めて過去に出題した問題、いわゆる過去問題を再度出題したことはなかった。これは、問題を解いた経験がある受験生と、その経験がない受験生とで不公平が生じるのを避けるためである。加えて、教科書に載せられた題材も出題しないことが慣習となっている。これも過去問と同様に、履修した経験で不公平が生じるのを避けるためである。

しかし、作問の過程で、センター試験や他の大学の過去問、模擬試験、教科書などと題材が重複していないかを点検する作業に、膨大な時間と労力を割かれる状況が年々深刻化してきた。


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