夜光の階段
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夜光の階段
作者
松本清張
日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『週刊新潮1969年5月10日 - 1970年9月26日
初出時の題名『ガラスの鍵』
出版元新潮社
挿絵御正伸
刊本情報
刊行『夜光の階段』上下巻
出版元新潮社
出版年月日1981年12月20日
装画黒崎彰
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『夜光の階段』(やこうのかいだん)は、松本清張長編小説。新進青年美容師の野望と、彼を取り巻く女性の打算を軸に発生する犯罪事件を描く、長編ピカレスク・サスペンス。『週刊新潮』に『ガラスの鍵』のタイトルで連載され(1969年5月10日号 - 1970年9月26日号、連載時の挿絵は御正伸)、加筆訂正の上、1981年12月、新潮社から単行本として刊行された。

1983年1986年1995年2009年テレビドラマ化されている。
あらすじ

才能はあるが出世のチャンスが無かった一介の美容師・佐山が、様々な女を利用して、まるで階段を上るかのごとく栄光を掴もうとする。
主な登場人物小説前半の舞台となる福岡市の夜景天拝山山頂から見た福岡市街

原作における設定を記述。

佐山道夫
村瀬美容室勤務の美容師。美容師としてかなりの腕を持っており、客からの評判も高い。目下独立を考えており、将来に向けた布石を打っている。
波多野雅子
波多野証券の社長夫人。以前から佐山に出資し援助していた。すでに40歳近い。
枝村幸子
知性と教養を看板とする一流婦人雑誌「女性回廊」の編集者。
福地フジ子
有名週刊誌の編集者。枝村幸子とは知り合い。
竹崎弓子
赤坂の割烹料理店の女主人。佐山に資金援助するようになる。
波多野伍一郎
波多野証券社長。外に愛人を持っている。
岡野正一
佐山のアパートの隣室の住人。デザイナー志望だが、なかなか芽が出ない。
岡野和子
岡野正一の妻。
村瀬進太郎
佐山の勤務する美容院の店主。
村瀬みな子
村瀬進太郎の妻。
桜田事務官
桑山検事とは以前からの付き合いのベテラン捜査員。
桑山信爾
東京高等検察庁の検事。数年前に九州で起こった殺人事件に関心を持っていたが…。
エピソード

連載開始当時は、それまで、パーマ屋というイメージで、女性しかいなかったヘアーデザイナーの世界に、フランスなどヨーロッパ帰りの男性の進出が盛んになった時期であった。本作を担当した新潮社の編集者・鍋谷契子は、その点に、著者が興味を持っていたようだと語っている
[1]。また当時は、銀座などにファッション性を意識した人気ヘアーサロンが出始め、後の「カリスマ美容師」にあたる人気美容師が注目を集めた(1970年にヴィダル・サスーンが初来日)が、他方、当時の美容師は、中学校を卒業してすぐ美容師に弟子のような形で入り、下積みの厳しい環境で技術を身に付けることがほとんどであり、佐山のように数年で店を持つことは難しかったと、女性モード社の相談役・小沢一郎は、本作の時代背景を説明している[2]

鍋谷の調査の上で、著者は「目黒のある美容院」を取材している。その美容院は、下に喫茶店があり、脇から階段を上がって2階にある店で、入り口を入るとちょっとしたロビーがあり、そこには全身を映し出すロココ調の大きな鏡があり、女性が美しく映ると評判になっていたという[3]

連載時の題『ガラスの鍵』は、成功の扉を開けるガラス製の鍵(ガラス製ゆえ力ずくで開けようとすると折れる)をイメージしたものであったが、単行本化時に、著者は「柔らか過ぎる」として、現在の題へと変更している[4]

社会学者の小関三平は、佐山道夫が「芸(術)」への世間的評価に執心する立身マキャベリストである点で、(『人間水域』の)名を売るためには平然と籠絡するプレイガール、久井ふみ子や滝村可寿子の男性版と述べ、加えて、本作を西洋の蕩児文学と比較し、セオドア・ドライサーの『アメリカの悲劇』とは、邪魔になった女を殺すのにボートを使う点で、また、ギ・ド・モーパッサンの『ベラミ』とは、著者が本作でアリバイ崩しの一つにズボンについたヤエムグラの実を使ったように、ボタンに引っかかったヴァルテール夫人の髪の毛を使うところも、女性心理への洞察と芸の細かさで似通っていると評している[5]

本作の取材にあたって著者は二日市温泉に滞在している。宿泊旅館は「大丸別荘」(2024年現在も営業中)。著者と旅館の交流はその後も続き[6]、同旅館には著者の色紙が残されている。なお、小説中にも同温泉が登場する(小説中では「武蔵温泉」)。

書誌情報

『夜光の階段』〈
新潮社〉(1981年12月、上下巻)

『松本清張全集 46』(文藝春秋〉(1983年12月)

文庫版『夜光の階段』〈新潮文庫〉(1985年1月、上下巻) .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-10-110956-5ISBN 978-4-10-110957-2

テレビドラマ.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

1983年版

「松本清張ドラマスペシャル・夜光の階段」。1983年3月9日から3月30日まで、毎日放送制作、TBS系列で、毎週水曜日の22:00 - 22:54(JST)に4回にわたって放送された。
キャスト(1983年版)

枝村幸子:
いしだあゆみ

佐山道夫:風間杜夫

波多野雅子:岡田茉莉子

福地フジ子:中野良子

岡野正一:平田満

桑山検事:三木のり平

スタッフ(1983年版)

脚本:
宮内婦貴子

演出:瀬木宏康

制作著作:テレパック毎日放送、霧プロダクション

TBS 水曜10時枠の連続ドラマ


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