多足亜門
生息年代: 後期シルル紀?現世 Pre??OSDCPTJKPgN
多足類のそれぞれ4綱による動物例左上:ムカデの1種(ムカデ綱)右上:ヤスデの1種(ヤスデ綱)左下:エダヒゲムシの1種(エダヒゲムシ綱)右下:コムカデの1種(コムカデ綱)
地質時代
シルル紀 - 現世
分類
多足類(たそくるい、Myriapod、学名:Myriapoda)とは、節足動物を大まかに分ける分類群の1つ。分類学上は多足亜門とされる。ムカデ・ヤスデ・コムカデ・エダヒゲムシを含む。縦長い体にほぼ同型の体節と数多くの脚をもつ。
特徴ヤスデ(左)とムカデ(右)
体は往々にして縦に長く、頭部と胴部の2部に分かれる。大きさは様々で、ムカデとヤスデには十数cmに及ぶ大型種が含まれるが、エダヒゲムシとコムカデに属するものでは小型種である。化石種まで範囲を広げれば、ヤスデには2mに達し、節足動物の中でも史上最大級の1つとして知られるアースロプレウラがある[1][2]。
頭部
複眼を持つゲジ類の頭部
ヤスデの前端。単眼・触角・体節の構成を示す。
頭部(head)は先節(ocular somite)と直後5節の体節(第1-5体節)から癒合した合体節であり、原則として触角(antennae)・大顎(mandible)・第1小顎(first maxilla)・第2小顎(second maxilla)という計4対の付属肢(関節肢)がある。六脚類と同様、大顎に大顎髭(mandibular palp)はなく、第2体節は間挿体節(intercalary segment)で付属肢は胚発生のみに見られ、後に退化消失する(甲殻類の第2触角に相同)。ヤスデとエダヒゲムシの場合は更に特化が進み、第5体節に当たる第2小顎まで退化消失した[3]。コムカデの場合、第2小顎は左右癒合し、六脚類の下唇に似た構造体を成している[4]。
多足類の頭部は上述の通り、六脚類を思わせる部分が何箇所見られる。しかし多足類の大顎は少なくとも前後2節に分かれ、基部(mandible base)と顎部(gnathal lobe)の間に能動的な関節がある[5]。内部の幕状骨(tentorium、大顎の動作に関与する内骨格)は能動的で、両前方には大顎の内転筋に連結した棒状の構造体(transverse bar)がある[6][5]。これらの特徴は他の節足動物に類が見られない、多足類の最も重要な共有派生形質と考えられる[5][1][7]。
眼は側眼(lateral eye)のみ知られ、中眼(median eye)は存在しない。側眼は複眼由来だが、現生群はほとんどが退化し、無眼もしくは複眼の個眼由来の単眼のみをもつ。既知唯一の例外はゲジ目に属するムカデで、側眼はれっきとした複眼である[8]。
胴部
ヤスデの1種 Nipponesmus shirinensis の前端。特化した生殖肢もつ。
ムカデの前端腹側。頑丈な顎肢をもつ。
胴部は縦に長く、数多くの体節が並び、そのほぼすべてが同規的で、原則として1胴節に同型の歩脚型関節肢(脚)が1対ずつ出ている。形態や機能上の特化はほぼせず[9]、例外は繁殖用の生殖肢(gonopods)[10][11][12]・ムカデの顎肢(forcipules、maxillipeds)[13]と曳航肢(ultimate legs)[14][15]・コムカデの紡糸腺(spinnerets)[4]など僅かな例のみ挙げられる。ヤスデの場合、ほぼすべての胴節が2節ずつセットで重体節(diplosegment, diplosomite)に癒合するため、外見上では1胴節に2対の脚があるのように見える[16][12]。
いずれにせよ、この胴部は他の多くの節足動物に見られる顕著な機能的分化はない[9]。他の節足動物では胸部と腹部、あるいは前体と後体などを区別し、それぞれ異なった形態および付属肢を持つのが通例である。現生節足動物の中で多足類に似た例は、海底洞窟に産する甲殻類のムカデエビ類のみがある程度である[17]。この同規的な体節制は、節足動物の祖先形質に似ると考えられる[9]。
他の特徴については群によって異なる。例えば胴部の生殖口は尾端にあるもの(ムカデ)や腹面の前半部にあるもの(その他)[18]がある。胴部の尾端、例えば尾節(telson)の構造もそれぞれである[15][4][19][12]。
生態と発育ヤスデの1種 Nemasoma varicorne の増節変態
護卵中のムカデ
コムカデの1種Scutigerella immaculata の卵(左)、孵化直後の幼生(中)と成体(右)