多結晶シリコン
[Wikipedia|▼Menu]
左:多結晶シリコンから作られた太陽電池。右上:多結晶シリコンの棒。右下:多結晶シリコンの断片(チャンク

多結晶シリコン(たけっしょうシリコン、Polycrystalline silicon/multicrystalline silicon)は、ポリシリコン(polysilicon)、poly-Si あるいは mc-Si とも呼ばれ、高純度なシリコン多結晶であり、太陽光発電と電子産業において原材料として使われる[1][2]

多結晶シリコンは、冶金グレードシリコン(MG-Si : metallurgical-grade silicon。純度が低いシリコン[3])からシーメンス法と呼ばれる化学的な精製処理によって製造される。その処理は、揮発性シリコン化合物の蒸留と高温でのシリコンへの化学分解を含んでいる。新しい方法として、流動層反応器(英語版)を使う改良された方法がある。太陽光発電産業は、化学的な精製処理の代わりに冶金を使って純度を上げた改良型冶金グレードシリコン(UMG-Si : upgraded metallurgical-grade silicon)も生産する[4]。電子産業のために生産されるポリシリコンは、1 ppb未満の不純物を含んでいるが、ソーラーグレードシリコン(SoG-Si : solar grade silicon)は、一般的にそれよりも純度が低くなる。GCL-Poly、Wacker Chemie、トクヤマ、OCI、そしてHemlock Semiconductorのような中国、ドイツ、日本、韓国、そしてアメリカ合衆国の企業およびREC(ノルウェー発祥)は、2013年に全世界で23万トンの生産量を計上した[5]

原材料としてのポリシリコン(大きな棒状であり、大抵は特定の大きさのチャンクに砕かれる。そして、出荷前にクリーンルームの中で梱包される)は、直接多結晶インゴットへ形成される、あるいは、単結晶ブールに成長させるために再結晶化プロセスに送られる。そして、ブールは、薄いシリコンウェハーにスライスされ、太陽電池集積回路、そしてその他の半導体デバイスに使われる。

ポリシリコンは、小さな結晶(晶子としても知られる)の集まりであり、それらの結晶は結晶粒界をもたらす。結晶粒界によって、金属フレーク効果(metal flake effect)が発生し、ポリシリコンの中に金属の断片が散りばめられたように見える。ポリシリコン(Polysilicon)とマルチシリコン(multisilicon)は、類義語としてよく使われる。その一方で multicrystalline(多結晶の意)は、1ミリメートルより大きい結晶に対してよく使われる[6]

多結晶シリコン太陽電池は、急速に成長する太陽光発電市場における最も一般的な種類の太陽電池であり、全世界で生産されるポリシリコンの大半を消費する。従来の1メガワットの太陽電池モジュールを製造するために約5トンのポリシリコンを必要とする[7]。ポリシリコンは、単結晶シリコンアモルファスシリコンと明確に異なったものである。
多結晶シリコン 対 単結晶シリコン多結晶シリコン太陽電池(左)と単結晶シリコン太陽電池(右)の比較

単結晶シリコン(single-crystal silicon / monocrystalline silicon)において、結晶構造は均一であり、見た目の色が均一であることによって区別できる[8]。その結晶構造は、結晶粒界がないので、全体が単結晶であり、結晶が連続しており、結晶が壊れていない。大きな単結晶は自然において極めて珍しく、研究所で作ることも難しい(en:Recrystallization (chemistry)も参照)。それと対照的にアモルファス構造において、原子配置の秩序は短い範囲に制限される。

多結晶とパラクリスタル(準結晶)の相は、多くの小さな結晶あるいは晶子から構成される。多結晶シリコン(半結晶シリコン、ポリシリコン、ポリSi、あるいは単純に「ポリ」)は、複数の小さなシリコン結晶から成る物質である。多結晶セルは、「金属フレーク効果」と呼ばれる目に見える大きさの粒によって識別できる。半導体グレード(あるいはソーラーグレード)多結晶シリコンは、単結晶シリコンへ変換される。つまり、ランダムに結合した多結晶シリコンのシリコン晶子は、大きな単結晶へ変換されるということである。単結晶シリコンは、シリコンでできたマイクロエレクトロニクス素子のほとんどを製造するのに使われる。

超高純度ポリシリコン(純度99.999999999%[1])は、半導体産業で使われ、長さ2mから3mのポリシリコンのロッドから製造される。マイクロエレクトロニクス産業(半導体産業)において、ポリシリコンはマクロスケールとマイクロスケール(成分)の両方の段階で使用される。単結晶はチョクラルスキー法ゾーンメルト法そしてブリッジマン・ストックバッカー法を使って成長される。
部品として使われる多結晶シリコン.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は検証可能参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方
出典検索?: "多結晶シリコン" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2014年1月)

部品レベルで考えると、ポリシリコンはMOSFETCMOSの製造工程において伝導性のあるゲート物質として長らく使われてきた[9]。これらの技術のために低圧化学気相成長(LPCVD : low-pressure chemical-vapour deposition)反応器を使ってポリシリコンを成長させる[9]。成長されるポリシリコンは、大抵高濃度にドープされたn型半導体p型半導体である。

近年、そのままのポリシリコンとドープされたポリシリコンが薄膜におけるアクティブ層やドープされた層として大面積エレクトロニクスで使われている。ポリシリコンは低圧化学気相成長(LPCVD)によって成長させることができるが、プラズマ化学気相成長法(PECVD : plasma-enhanced chemical vapour deposition)あるいは特定の処理方法においてアモルファスシリコンの固相結晶化を使うこともできる。これらの工程は少なくとも摂氏300度の高温を必要とする。これらの温度においてガラス基板上でポリシリコンを堆積することが可能であるが、プラスチック基板上で成長させることはできない。

プラスチック基板上の多結晶シリコンの成長は、フレキシブルスクリーン(曲げられる画面)のデジタル表示装置を製造できるということで期待されている。それゆえにプラスチックを溶かしたり損傷しないようにプラスチック基板上で前駆体アモルファスシリコン(a-Si)を結晶化するためにレーザー結晶化という比較的新しい技術が考案された。短周期かつ高密度の極端紫外線レーザーパルスは、基板全体を溶かさないように成長させたa-Siを溶かしたい部分だけ加熱するために使われる。多結晶シリコン(チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を製造するのに使われる)

溶かされたシリコンは、冷えるに従って結晶化する。温度勾配を精密に制御することによって、非常に大きな粒に成長させることができる。極端な場合、数百マイクロメートルまで成長できるが、10ナノメートルから1マイクロメートル程度の大きさが一般的である。しかしながら、広い面積に渡ってポリシリコン上にデバイスを作るために、デバイスの形状よりも結晶の粒が小さいことがデバイスの均一性のために必要とされる。低温でポリシリコンを生成するもう一つの方法は、金属誘起結晶化(metal-induced crystallization)である。その方法において、アルミニウム、金、あるいは銀のような他の金属膜と接触させながら焼き入れるとアモルファスシリコンの薄膜を摂氏150度程度の低温で結晶化させることができる。

ポリシリコンは、VLSIの製造において多くの用途がある。主な用途の一つは、MOSデバイスのためのゲート電極物質としてである。ポリシリコンのゲートの電気伝導率は、ゲート上に金属(タングステンのようなもの)あるいは金属シリサイド(タングステンシリサイドのようなもの)を堆積することによって増大する可能性がある。ポリシリコンは、抵抗器、導電体、あるいはシャロージャンクション[10]として使用される可能性もある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:78 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef