この項目では、手足の指が多い先天性異常について説明しています。足や腕が多い先天性異常については「多肢症」をご覧ください。
多指症
多指(趾)症(たししょう)とは、手足の奇形のひとつであり、指(足の場合は趾)が分離形成される段階で1本の指(趾)が2本以上に分かれて形成され、結果として手足の指の数が6本以上となる疾患である。反対に、指の数が少ないのを欠指(趾)症という。手足の先天性異常では比較的多くの割合を占め、様々な症候群に合併する。
概要多指症のX線写真(左手) 骨格には不完全な部分が見られない。多趾症のX線写真(左足) 中足骨の形態から小趾が2本あるとわかる多指症であったフランス王シャルル8世から広まったとされるダックビル・シュー
過剰な指(趾)が痕跡的に突き出るもの、細い茎でぶらぶらする指(趾)がつながっているもの(浮遊型)、完全な指(趾)の形を示すものまで見られさまざまである。
人種的には黒人に多く見られるが、どの人種にも見られ、日本人では手指の場合は拇指(親指)に、足趾の場合は第V趾に多く見られる。
ブラジルには、14人の家族全員が先天的に指の数が多い多指症である例がある[2]。
現代、特に先進国では幼いうちに一本を切断し5本指とすることが多い。その際は指(趾)の大きさ、骨や関節、筋腱における異常を検討して切断指(趾)を決める。手術治療を行う場合は指の機能が確立される1歳時までに行うのが主流である。国や時代によっては尊ばれる身体的特徴となる場合もあり、「隋書」の西域伝によると、疏勒では「人手足皆六指、産子非六指者不育(皆、手足の指が六指であり、産まれた子が六指に非ぬ場合は育てず)」という風習があったとの記述がある。
イヌやネコは前肢には5本・後肢には4本の指があるのが一般的であるが、多指症のケースも存在する。アーネスト・ヘミングウェイの飼い猫が多指症であったことが知られ、現在もその遺伝を受け継いだ多指症の猫の子孫が健在で、「ヘミングウェイの猫」と呼ばれている。イヌの後肢にある(本来ならば存在しない)第一趾(人間の親指に相当)は「狼爪」と称されている。
名古屋大学とウィスコンシン大学の共同研究によると、烏骨鶏の指は通常のニワトリよりも1本多い5本指であるが、この特徴が烏骨鶏が持つソニックヘッジホッグ遺伝子の調節領域における1つの遺伝子配列(塩基配列)の変異から生み出されていることが分かり、ヒトの多指症も全く同じメカニズムであることが判明している[3]。
多指(趾)症の人物
実在の人物
豊臣秀吉: 右手の親指が2本あったとルイス・フロイス、前田利家[4]、姜[5]が記録している。
祝允明(明代の詩人・書家):手の指が6本あった。号の「枝山」はそれにちなむ[6]。
J・D・サリンジャー(アメリカの作家)[要出典]
ヘンリク2世(ポーランド大公):左足には指が6本あった。この事実は1832年、棺が開かれた時に確認されている。
アン・ブーリン(ヘンリー8世妃): 6本指だったと言われる。ただし実際は、右手の小指にこぶと2枚の爪があったという事から、多合指症であったと推測される。
アントニオ・アルフォンセカ(メジャーリーグのピッチャー): 両手両足が全て6本指で、「six fingers」というニックネームもあった。
ジュゼッペ・タルティーニ(作曲家・ヴァイオリニスト): 左手が6本指だったと言われる。