外来種
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外来種(がいらいしゅ)とは、もともとその地域にいなかったのに、人為的に他の地域から入ってきた生物のこと[1]アレロパシーが強い植物、など、その一部は生態系や経済に重大な影響を与える際には、環境問題のひとつとして扱われる[2]

類義語に移入種、帰化種、侵入種、外来生物がある。英語では「introduced species」や「alien species」や「invasive species」という。ただし「invasive species」については、在来種(後述)でありながら、人為的な影響によって分布域の爆発的な拡大や生息(生育)数(個体群)が激増し、生物多様性および生態系サービスへ悪影響を及ぼしている種に対して「native invasive」という呼び方もする場合もある。英語表記において最も誤解が少ないのは「Invasive Alien Species」(侵略あるいは浸潤的外来種)である。

外来種に対し、従来からその地域で生息・生育するものは在来種と呼ばれる。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}在来種は、環境に害を与えていない場合が多い。[要出典]。

また、近年は外来種であっても保護をするべきだという主張や、人類によって破壊された生態系の機能を復元するために外来種を積極的に導入するべきだという主張への支持が拡大している。#外来種の是非を参照。
概要
背景

人類15世紀中期の大航海時代以降、世界を自由に行き来するようになり、その過程で多種多様な生物を移動させてきた。こうした人間活動によって新たに分布を拡大させた生物に対し、イギリス生態学チャールズ・エルトン(Charles S. Elton)は1958年に著書『The Ecology of Invasions by Animals and Plants(侵略の生態学)』のなかで学問のテーマとして外来種問題を大きく取り上げた[3]

今や外来種は地球上のありとあらゆる環境に侵入している。ハワイでは生息している生物のうち外来種が25 %を占める[4]。また、モーリシャス島では植物について在来種よりも外来種のほうが種類が多く、ロドリゲス島にいたっては在来種の約2.3倍もの種類の外来種が生息している[4]ニュージーランドでは在来の陸生哺乳類は2種しかおらず、一方で外来の陸生哺乳類は34種も定着している[4]アメリカ合衆国における外来種に関する経済費用(防除などの活動も含む)は1,370億USドルと算出されている[5]

日本に定着している外来種は2,000種を超えるといわれており、そのうち4分の3は植物が占める[6]。17水系19河川で実施された植生調査では、確認された全植物種数のうちの13.6 %にのぼる280種の外来植物の分布が明らかとなった[7]

こうした外来種の拡大が進むにつれ、学術誌に発表された外来種に関する論文1990年代後半以降に急増するようになった[8]。現在では外来種の問題は環境問題のひとつとして認識されており、さまざまな取り組みや研究が世界中で行われている。
定義

外来種をより正確に定義すると、「人間活動の影響で入り込んだ生物」である。人為的、意図的に持ち込まれた生物でなくても、人間活動に随伴して流入した生物も含む。たとえば木材などに入り込んだり、付着したりして入り込んだ生物も外来種である。持ち込まれた時代国境は関係がない。

外来種という用語の指す内容については、国や研究分野によってその定義が微妙に異なり、世界的に統一した見解はない。日本でも外来種のほかに移入種・帰化種といった言葉が混在して使われてきた[9]。例えば行政においては、環境省は「移入種」を、国土交通省は「外来種」を用いてきた経緯があり、いずれも主に日本国外から移入されたものを対象としていた。植物学者は帰化種(とくに帰化植物)という用語を用いている[9]2000年代からは多くの分野で外来種と呼ぶのが一般的になってきている[4][10]

国際自然保護連合の定義では、外来種とは「過去あるいは現在の自然分布域外に導入された亜種、あるいはそれ以下の分類群を指し、生存繁殖することができるあらゆる器官配偶子種子無性的繁殖子を含むもの」とされる[11]。ここで用いられている導入(introduction)という言葉は、「意図しているかどうかは関係なく人為によって直接的・間接的に自然分布域外に移動させること」と定義されており、「移入」や「侵入」といった言葉で置き換えられることもある[11]。そして、外来種が新たな分布域で継続的に子孫を残して生き続けることを定着(establishment)という[12]

外来種の中でも、移動先で分布拡大したときに、在来種の絶滅につながるおそれがあるなど、とりわけ生態系や人間の生活に大きな影響を及ぼすようなものを、とくに侵略的外来種(invasive alien species)といい[12]、これらは侵入種と呼ばれることもある[13]。(専門用語では、ニューサンス/Nuisance species)と呼ばれることもある。

」より下位の「亜種」または「変種」であっても外来種に含められるが、混乱を避けるため外来生物のような用語を用いる場合もある[10]。外来種という言葉はその語感から外国から持ち込まれた生物というイメージをもたれることが多いが、本来は外国に限定して適用される概念ではない[14]。移入元が国外か、同一国内の他地域であるかによって、国外外来種・国内外来種と区別する[12]。しかし、現実には「侵略的外来種」あるいは環境省が指定した特定外来生物とされている動植物は全て国外外来種であり、国内外来種が「侵略的外来種」や「特定外来生物」と見なされている種は一例も存在しない。

外来種はあくまで人間活動の影響で導入された生物のことであり、生物自らの能力によって移動してきたものは外来種に含まれない[15]。よって、渡り鳥迷鳥回遊する水生生物などは問題視されない[要出典]。

ただし、ガラパゴス諸島で、地球温暖化の影響で近海の藻類が減少したためにウミイグアナが陸上に進出し、リクイグアナ交雑して問題視されている様に、人間の活動による環境の変化によって生物の自発的な移動が起きて問題が生じた例もある。
特徴

外来種の定義を考慮すると、ペット家畜園芸植物などのほとんどの生物は広義の外来種であり、常に多種多様な外来種が世界中に導入されている。しかし、導入される外来種がすべて定着するわけではなく、実際に野外へ定着して分布を拡大させる生物(いわゆる侵略的外来種)の割合は10種に1種ともいわれている[11]。したがって、多くの外来種は導入されても野生化することができず、野生化したとしても数世代の短い期間で消滅してしまう。

一方で、原産地ではあまり問題を起こさずおとなしかった生物が、侵入先で侵略性を発揮する事態も少なくない[7]。一部の外来種が定着し、問題を引き起こすほど拡散する原因として、新たな侵入地域にはその外来種の特異的な天敵が存在しないがゆえに外来種の成長や繁殖が向上することが考えられており、天敵解放仮説と呼ばれている[5][8]。また、それに関連して、天敵の不在により防御よりも成長などにエネルギーを投資するように進化する傾向が進むというEICA仮説も提唱されている[5]。外来種の定着が別の外来種の侵入や影響を促進・悪化させる可能性も指摘されており、この現象は侵入溶解(invasional meltdown)と呼ばれる[5][16]

植物においては、高い種子生産性、耐陰性、耐寒性、アレロパシーといった特徴を有する種がとくに侵略的な外来種となりやすいとされている[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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