変電所
[Wikipedia|▼Menu]
ウクライナの変電所ドイツの変電所

変電所(へんでんしょ)は、電力系統中で電気電圧周波数の変換(変電)を行い、各系統の接続とその開閉を行って、電力の流れを制御する電力流通の拠点となる施設である。英語の "(electrical) substation" の文字を取り、SSまたは、S/Sと略される。
概要

一般電気事業者電力会社)の発電所は多くの場合、電力消費地から離れた場所に設置される。特に大規模水力発電所の場合はその適所が山間部となり、需要家の多い平野部とは距離がある。火力発電は水力発電所のような地形的制約は殆どなく、[注釈 1]都市部等、人口密集地への設置も可能ではあるが、リスク管理の観点からどの国においても人口密集地からは離れた所に設置される。長距離の送電では電力の損失(主にジュール熱)が発生するため、より高電圧かつ低電流に変換して送電ロスを低下させている。また臨海部の火力発電所も発電出力が大きく大容量の送電では送電線の発熱が問題になるため、発電所内の変電所では27.5万から50万ボルトの超高電圧へ変電(昇圧)され送電されるが、電力の最終需要家までの送電網の途中に変電所が幾つかあり、そこでは段階的に電圧が下げられ(降圧)、一般家庭向けには日本では100ボルトまで変圧される[1]

送電経路の例[2]
発電所
発電所の出力は数千から2万ボルトの電圧であり、発電所内または隣接した変電所で27.5万から50万ボルトの超高電圧へ変電(昇圧)され送り出される。
超高圧変電所
超高圧変電所は発電所から最初の変電所で、より電力消費者に近くに立地し、15.4万ボルトへ変電され1次変電所へ送電される。
1次変電所
1次変電所では一部は15.4万ボルトのまま大工場や鉄道へ電力供給され、また6.6万へと変電され中間変電所へ送電される。
中間変電所
中間変電所では6.6万ボルトから2.2万ボルトへ変電され、一部は中規模工場へ供給され、残りは配電用変電所へ送電される。
配電用変電所
配電用変電所では2.2万ボルトから6600ボルトへ変電され一部は会社、学校、ホテル、小規模工場等各施設へ供給され、残りは柱上変圧器へと送り出される。
柱上変圧器
柱上変圧器では100ボルト、200ボルトへ変電され家庭や小規模事業所などへ供給される。
役割

電力は電流×電圧で表される。電流が流れると送電線の抵抗によりジュール熱として送電したエネルギーが失われ、かつ電圧降下により有効な電圧を送電線の終点のところで受け取ることができなくなる。送電中の電力損失は電流の2乗に比例することから、送電線の電圧をできるだけ高く上げ少ない電流で送電することが、低い電圧のまま大きな電流を用いて送電する場合と比較して、同じ電力を送る際の電力損失を減らすことができる。したがって、発電所のそばで高い電圧に上げて、オフィスや一般家庭などの電力消費者のなるべく近くで低い電圧に落として配電することがエネルギーを無駄にしない観点上望ましい。この電圧の変換を行っているのが変電所である。

高い電圧を取り扱う変電所ほど規模が大きくなり、また送電線に関わる施設も大きくなる。こうした施設を建設する費用の兼ね合いから電力消費者に近い末端では低い電圧で送る必要があり、発電所に近い側が最も高い電圧で送られ、消費者に近づくにつれて順次電圧が落とされていくようになっている。この電圧が次第に低くなっていく各段階のことを電圧階級と呼んでいる。各階級の間にはそれに対応した変電所が設置されている。

また電力系統は、発電所から消費者まで一直線になっているわけではなく、電力システムの信頼性を高め故障や補修作業時のバックアップを相互に行うために、複数の発電所からの送電線が集合され、あるいは必要に応じて各所へ分散されていくようになっている。変電所はこうした送電系統上の集合・分岐点にもなっており、必要に応じて系統をつないだり切り離したりする役割もしている。さらに、送電線に落雷があるなどで一部の区間に障害が発生すると、遮断器を動作させてその区間を送電系統から一旦切り離し、障害の波及を防止し回復を図る役割もしている。

この他に、直流送電に関連して交流直流を変換する交直変換所や、周波数の異なる電源を接続する周波数変換所も変電所の一種である。
種類

変電所の種類は、電圧階級、用途、形式、形態、監視制御方式などで分類できる[3][4]
電圧階級による分類

変電所の電圧階級(日本におけるもの)[5]変電所種類受電電圧送出電圧
500kV変電所500 kV275 - 154 kV
超高圧変電所275 - 187 kV154 - 66 kV
一次変電所154 - 110 kV77 - 22 kV
中間変電所77 - 66 kV33 - 22 kV

日本の変電設備の電圧別設備数および出力(2006年3月31日現在)[6]電圧 (kV)設備数出力合計 (kVA)
22 未満45211,950
22 - 551,1639,159,750
66 - 774,376213,068,850
110 - 154661143,416,050
1873815,363,000
2206035,690,000
275151160,470,000
500以上76201,360,000
合計6,570778,739,600

変電所はまず、送電用変電所と配電用変電所に大きく分類される。送電用変電所は、電力系統の途中に配置されて電圧の変換を行っており、大電力が通過する。これに対して配電用変電所は電力系統の末端に近いところに配置されて、送電用変電所から送られてきた高い電圧を消費者に供給する低い電圧に落として地域の配電網に供給する。送電用変電所に比べて1つの変電所を通過する電力は小さく、施設の規模も小さくなるが、その数は送電用変電所よりかなり多い。配電用変電所の受電電圧は154 - 22 kV程度で、配電網へ送り出す電圧は22 - 6.6 kV程度である[7]

送電用変電所の多くは高い電圧を低い電圧に落とすために使われているが、逆に低い電圧を高い電圧に上げるために用いられているものもある。電圧を上げる変電所は昇圧用変電所、下げる変電所は降圧用変電所と大きく分類される。昇圧用変電所は基本的に発電所に付属して設置されており、電力を発電所から送り出す段階での電圧変換を行っている。

降圧用変電所は、発電所に近い側ほど高い電圧になっており、順次電圧階級を構成している。高い方から500kV変電所、超高圧変電所、一次変電所、中間変電所などと呼ばれている。二次変電所、三次変電所などが含まれることもある。電圧階級の各段階でどのような電圧を使用しているかは、電力会社によってもその系統によっても様々であり、必ずしも全ての種類の変電所を経由して降圧されていくわけではなく途中の段階を飛ばすこともあり、必要に応じて複雑に組み合わせられている。また、発電所が必ず最上流に入っているわけではなく、小さな発電所ではこの電圧階級の途中に給電を行っていることもある。電力消費者も必ず最下流に入っているわけではなく、工場や電気鉄道など大口の需要家は途中の高い電圧の変電所から給電を受けていることがある。各種類の変電所でどの程度の電圧が使われているかを表に示す。参考として2006年3月31日現在の日本の電圧別変電所の設備数と容量を表に示す。
用途による分類

変電所は、電力事業者が所有している電力変電所、大口の電力消費者が設置している自家用変電設備、電気鉄道事業者が設置している電気鉄道用変電所などに分類できる。電力変電所は前述したように送電用・配電用の分類と、昇圧用・降圧用の分類がある。電気鉄道用の変電所は、直流電化区間では直流への変換機能のある変電所、交流電化区間では交流の降圧のみの変電所となる。

長距離で大容量の送電を行ったり、海底送電線を使って送電を行ったりする目的で、直流送電を行うことがある。この際には直流送電線の両端に一般の交流送電網と接続するための交直変換所が設置される。この他、日本では東日本が50 Hz、西日本が60 Hzと周波数が分かれているので、この周波数の境界に周波数変換所が設置されて、東西で電力の融通ができるようになっている。
形式による分類

変電所の形式としては、屋外式、屋内式、半屋内式、半地下式、地下式、移動式がある。
屋外式変電所
変圧器開閉器などの変電所の主要設備の大半を屋外に設置し、配電盤など制御機器のみを屋内またはキュービクルに配置した形式の変電所である。他の形式の変電所に比べて敷地面積を最も広く必要とするが、建設費用は安く、全ての機器が平面的に配置されることから運用開始後のメンテナンス性にも優れている。
屋内式変電所
変圧器や開閉器などの変電所の主要設備の大半を屋内に設置した形式の変電所である。屋外式変電所に比べて用地面積を大きく縮小することができるが、建物の建設費が高く付く。また、変電所機器の搬入・設置やメンテナンスにも難がある。海岸線に近いところなどで塩害対策を必要とする場合には、この形式の変電所の効果が高い。
半屋内式変電所
変電所の主要機器の一部を屋内に設置し、残りを屋外に設置した形式の変電所である。変圧器のみを屋内に設置した形式は、主に変圧器の騒音対策を目的としている。一方、開閉器のみを屋内に設置した形式は、主に塩害対策と建物建設費の削減を目的としている。前者を半屋内式、後者を半屋外式と呼んで区別することもある。
地下式変電所
建物や公園などの地下に変電所の主要機器を全て収納した形式の変電所である。新しい変電所用地の取得が困難な都市部を中心に見られる形式で、各種の変電所の中でも建設費は最も高く付くが、景観対策や防犯対策の面での効果が高い。この形式であっても、変圧器の冷却設備だけは地上に設置する必要がある。建物に併設する場合には、その建物に冷却用の水や空気など作動流体が流れる経路を確保しなければならない。なお、住宅地における建物の高さ制限などに関連して、変電所の建物に地下室を設けて、一部の設備を地下階に、一部の設備を地上階に設置する、屋内式変電所の全体を掘り下げたような形の半地下式変電所も存在する。
移動式変電所
詳細は「移動変電所」を参照トレーラー鉄道車両の上に変圧器などを設置して、移動可能にした形式の変電所である。既存の変電所が故障したり、機器更新のために一時設備の運用を停止したりしたときに、現地に仮設して変電所の容量を補う役割を果たす。
形態による分類

変電所は絶縁の方式により、気中絶縁形、GIS、ハイブリッドGISの形態に分類できる。
気中絶縁形変電所
変電所の回路の主要部分の絶縁が空気によっている変電所である。回路を碍子などで空気中で間隔を置いて保持することで、他の回路や地面との間を絶縁している。変電所の用地面積は最も広く必要とするが、工事費は最も安くなる。
GIS変電所
絶縁性能の高い六フッ化硫黄 (SF6) ガスを利用したガス遮断器 (GIS: Gas Insulated Switch) を用いて回路の主要部分を構成した変電所である。用地面積は少なくて済むが、工事費は高くなる。
ハイブリッドGIS変電所
母線部分は気中絶縁とし、開閉設備はGISで構成した変電所である。用地面積を縮減しながら、工事費も削減する方式である。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:86 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef