変形菌綱
(上) 1a. イクビマメホコリ(ドロホコリ目)の未熟子実体、(中) 1b. ヤリカミノケホコリ(ムラサキホコリ目)の子実体、(下) 1c. ウリホコリ(モジホコリ目)の変形体
分類
(Myxomycetes Link, 1833)[注 2]
和名
変形菌、真正粘菌、真性粘菌、変形体形成粘菌、非細胞性粘菌
英名
myxomycetes, myxogastrids, plasmodial slime molds, acellular slime molds, true slime molds
下位分類
明胞子亜綱 Lucisporinia
アミホコリ目 Cribrariida
ドロホコリ目 Reticulariida
コホコリ目 Liceida
ケホコリ目 Trichiida
有軸亜綱 Columellinia
ニセハリホコリ目 Echinosteliopsida
ハリホコリ目 Echinosteliida
クビナガホコリ目 Clastodermatida
クロミルリホコリ目 Meridermatida
ムラサキホコリ目 Stemonitida
モジホコリ目 Physarida
変形菌(へんけいきん、英: myxomycetes, myxogastrids)[1][2][3] とは、アメーボゾアに属する原生生物の1群、またはそれに属する生物のことである。生活環の中で、単細胞のアメーバ細胞または鞭毛細胞である時期、変形体とよばれる多核アメーバ体である時期、胞子を形成・散布する小さなキノコのような子実体である時期をもつ。アメーバ細胞や変形体は、細菌などを捕食して運動し、増殖または成長する。変形体は、目立つ色をして網状で非常に大きくなるものもあるが(図1c)、透明で微細なものもある。光や飢餓刺激によって、変形体から子実体(子嚢体)が形成される。子実体(図1a, b)の色や形は極めて多様であり、愛好家もいる。子実体は、胞子嚢(子嚢)とよばれる袋の中に胞子を内生する点で細胞性粘菌やツノホコリ類とは異なる。変形菌は基本的に陸上環境に生育しており、子実体は、ふつう腐朽木や落葉など植物遺体上に形成される。
変形菌の子実体は微小なキノコに似ているため、古くはふつう菌類に分類されていた。しかし、栄養体が細胞壁を欠き細菌などを捕食するアメーバ細胞や変形体であるため、原生動物に分類されることもあった。2020年現在では、変形菌は、真核生物の大きな系統群の1つであるアメーボゾアの中の変形菌綱(学名: Myxogastrea[注 1], Myxomycetes[注 2])に分類される。既知種数としてはアメーボゾア内で最大のグループであり、900種ほどが知られる[4]。
単に粘菌とよばれることもあるが、細胞性粘菌や原生粘菌と区別する意味で真正粘菌または真性粘菌(しんせいねんきん、true slime molds)ともよばれる[1][5][6]。また細胞性粘菌とは異なり、多細胞体ではない変形体を形成するため、変形体形成粘菌[2] (plasmodial slime molds) や 非細胞性粘菌[2] (acellular slime molds) ともよばれる[3]。 変形菌は、その生活環の中に、単細胞のアメーバ細胞または鞭毛細胞である時期、変形体である時期、胞子を形成・散布する子実体である時期をもつ[3][4][5][6][7][8](下図2)。胞子から発芽したアメーバ細胞や鞭毛細胞は単相(染色体を1セットのみもつ)の核を1個だけもち、細菌などを捕食し、分裂・増殖する。
特徴