変形菌
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細胞性粘菌」あるいは「原生粘菌」とは異なります。

変形菌綱


(上) 1a. イクビマメホコリ(ドロホコリ目)の未熟子実体、(中) 1b. ヤリカミノケホコリ(ムラサキホコリ目)の子実体、(下) 1c. ウリホコリ(モジホコリ目)の変形体
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
階級なし:アモルフェア Amorphea
:アメーボゾア門 Amoebozoa
亜門:コノーサ亜門 Conosa
下門:動菌下門 Mycetozoa (真正動菌 Eumycetozoa)
:変形菌綱 Myxogastrea

学名
Myxogastrea Macbride, 1899[注 1]

(Myxomycetes Link1833)[注 2]
和名
変形菌、真正粘菌、真性粘菌、変形体形成粘菌、非細胞性粘菌
英名
myxomycetes, myxogastrids, plasmodial slime molds, acellular slime molds, true slime molds
下位分類


明胞子亜綱 Lucisporinia

アミホコリ目 Cribrariida

ドロホコリ目 Reticulariida

コホコリ目 Liceida

ケホコリ目 Trichiida


有軸亜綱 Columellinia

ニセハリホコリ目 Echinosteliopsida

ハリホコリ目 Echinosteliida

クビナガホコリ目 Clastodermatida

クロミルリホコリ目 Meridermatida

ムラサキホコリ目 Stemonitida

モジホコリ目 Physarida


変形菌(へんけいきん、: myxomycetes, myxogastrids)[1][2][3] とは、アメーボゾアに属する原生生物の1群、またはそれに属する生物のことである。生活環の中で、単細胞アメーバ細胞または鞭毛細胞である時期、変形体とよばれる多核アメーバ体である時期、胞子を形成・散布する小さなキノコのような子実体である時期をもつ。アメーバ細胞や変形体は、細菌などを捕食して運動し、増殖または成長する。変形体は、目立つ色をして網状で非常に大きくなるものもあるが(図1c)、透明で微細なものもある。光や飢餓刺激によって、変形体から子実体(子嚢体)が形成される。子実体(図1a, b)の色や形は極めて多様であり、愛好家もいる。子実体は、胞子嚢(子嚢)とよばれる袋の中に胞子を内生する点で細胞性粘菌ツノホコリ類とは異なる。変形菌は基本的に陸上環境に生育しており、子実体は、ふつう腐朽木や落葉など植物遺体上に形成される。

変形菌の子実体は微小なキノコに似ているため、古くはふつう菌類に分類されていた。しかし、栄養体細胞壁を欠き細菌などを捕食するアメーバ細胞や変形体であるため、原生動物に分類されることもあった。2020年現在では、変形菌は、真核生物の大きな系統群の1つであるアメーボゾアの中の変形菌綱(学名: Myxogastrea[注 1], Myxomycetes[注 2])に分類される。既知種数としてはアメーボゾア内で最大のグループであり、900種ほどが知られる[4]

単に粘菌とよばれることもあるが、細胞性粘菌原生粘菌と区別する意味で真正粘菌または真性粘菌(しんせいねんきん、true slime molds)ともよばれる[1][5][6]。また細胞性粘菌とは異なり、多細胞体ではない変形体を形成するため、変形体形成粘菌[2] (plasmodial slime molds) や 非細胞性粘菌[2] (acellular slime molds) ともよばれる[3]
特徴

変形菌は、その生活環の中に、単細胞アメーバ細胞または鞭毛細胞である時期、変形体である時期、胞子を形成・散布する子実体である時期をもつ[3][4][5][6][7][8](下図2)。胞子から発芽したアメーバ細胞や鞭毛細胞は単相染色体を1セットのみもつ)のを1個だけもち、細菌などを捕食し、分裂・増殖する。このような細胞は配偶子として合体し、複相(染色体を2セットもつ)の接合子となり、これが成長して多核の原形質塊である変形体になる。変形体も運動し細菌などを捕食して成長するが、飢餓刺激などによって子実体を形成する。子実体は、減数分裂によって胞子を形成、散布する(よって胞子は単相)。2. 変形菌の生活環:胞子 (右上) は単相 (1n) であり、発芽して鞭毛細胞またはアメーバ細胞を形成し変換可能である。アメーバ細胞は二分裂で増殖する。これらの細胞は配偶子となり、細胞質融合 (P!)、核融合 (K!) して複相 (2n) の細胞になる (下)。この細胞は核分裂を繰り返し (左下)、多核の変形体 (左) になり、細菌などを捕食して成長する。変形体は子実体 (左上) を形成し、減数分裂 (M!) を通して胞子を形成する。

このように、変形菌における生活環は、ふつう有性生殖と連動している。しかし、このような生活環が有性生殖と連動せずに無性的に起こることもある。この場合、子実体が減数分裂ではなく体細胞分裂によって胞子を形成(単相または複相)、この胞子から発芽した細胞が配偶子合体を経ずにそのまま変形体に成長し、子実体を形成する[4][6][9]。単一の胞子に由来する株が変形体・子実体形成をする場合、ホモタリック(同一株内での配偶子合体が起こる)であると考えられていたが、実際にはこのような例の多くが上記のような無配生殖(配偶子を経ない生殖)であることが示されている[6](2016年現在、確実にホモタリックである例は知られていない[9])。
アメーバ細胞・鞭毛細胞3. カタクミホコリ属(ムラサキホコリ目)の胞子と発芽した細胞

胞子が発芽すると、1個のをもつアメーバ細胞(粘菌アメーバ[10]、粘液アメーバ[11] myxamoeba)または鞭毛細胞 (myxoflagellate, flagellate cell[12], swarm cell[6]) が生じる[6][7][11](図3)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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