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売春汚職事件(ばいしゅんおしょくじけん)は、1957年から1958年にかけて起こった日本の汚職事件。政治家と赤線業者への贈収賄捜査の裏で、検察内部の派閥抗争が絡み、マスコミまでを巻き込んだ大事件へと発展した。
概要
1957年
10月1日 新宿カフェー喫茶協同組合理事長・安藤恒に対する業務上横領被疑事件の取調べ中に、全国性病予防自治連合会(赤線業者の業界団体)の業務上横領容疑が発覚。東京地方検察庁特別捜査部が同連合会事務局長・今津一雄を逮捕。さらに捜査の過程で、同連合会から売春防止法の成立阻止のため、国会法務委員及び売春対策審議会委員に工作費がばら撒かれていた容疑が発覚。
10月12日 - 東京地検特捜部が同連合会理事長・鈴木明、副理事長・長谷川康ら幹部を贈賄容疑で逮捕。
10月16日 - 同連合会専務理事・山口富三郎を贈賄容疑で逮捕。
10月18日 - 読売新聞が「売春汚職、宇都宮徳馬、福田篤泰両自民党衆議院議員を収賄容疑で召喚必至。近く政界工作の業者を逮捕」と報道。しかし、この情報は捜査情報を漏洩していた人物を特定するために検察が流した偽情報であった。なお、当時本件捜査に従事していた伊藤栄樹(後の検事総長)は、引退後に朝日新聞で連載した『秋霜烈日』の中で一連の経緯を明かしているが、偽情報を流した人物と捜査情報を漏洩していた人物の名前は「すっかり忘れてしまった」として明かさなかった。渡邉文幸
事件は、売春汚職そのものよりも、新聞記者が名誉毀損で逮捕され「ニュースソース」を開示せよと迫られる、マスコミ報道の根本を問いかける立松記者逮捕事件を派生させた。立松はニュースソースを自白しなかったものの、情報自体が偽情報であったことがトドメとなり、誤報の責任を取らされる形で社内処分によって左遷され、記者生命を絶たれた。
立松はその後、酒や薬に溺れる自暴自棄な生活を送った末に、1962年(昭和37年)10月、睡眠薬の過剰服用によって自殺した。また、これまで読売新聞社会部は「社会部王国」の異名を誇っていたが、この事件を機に凋落が始まったとされる。
また、立松記者逮捕事件の影響で、公安検察の首領・岸本は事実上失脚し、次期検事総長争いに敗れた。岸本は、馬場派への復讐を図るべく、1960年(昭和35年)11月に第29回衆議院議員総選挙に自民党公認候補として大阪5区から出馬し当選、法務大臣を目指す。報復を恐れた馬場は、これを迎え撃つ形で大阪地検特捜部に選挙違反に対する徹底的な捜査を命じ、戸別訪問等の軽微な公職選挙法違反を犯した末端運動員をも逮捕した末、遂には芋蔓式に岸本本人まで訴追されこの結果、岸本は政界で影響力を失って次回選挙で落選し、失意の中で一審有罪判決の控訴中に1965年(昭和40年)に静養先で死亡した(岸本義広選挙違反事件)。
脚注^ 渡辺文幸『検事総長』(初版)中央公論新社(中公新書ラクレ)(原著2009年10月11日)、p. 116頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 9784121503312。
関連項目
読売新聞社
栄光なき天才たち:第6巻に立松が取り上げられており、立松が確度の高い情報源を元に取材活動を行ってきた稀有のジャーナリストであったと描写している。ただし、当時は偽情報の件は明らかにされていなかったため、最後は記事訂正後、懲戒休職となり、死んだとだけ記述されている。また、検察の抗争については触れられていない。
本田靖春著『不当逮捕』は、立松記者の逮捕について描かれたノンフィクション小説。
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