塵旋風
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2005年6月、アメリカアリゾナ州で撮影された大規模な塵旋風の写真。

塵旋風(じんせんぷう)とは、地表付近の大気渦巻状に立ち上る突風の一種である。一般的には旋風(せんぷう、つむじかぜ)や辻風(つじかぜ)と呼ばれ、英語ではダストデビル(Dust devil)と呼ばれる。竜巻と誤認されることがあるが、塵旋風と竜巻は根本的に異なる気象現象である。
概要

塵旋風(じんせんぷう)とは、地表付近の大気上昇気流が発生し、これに水平方向の強風が加わるなどして渦巻状に回転しながら立ち上る突風の一種である。乾燥したなどの、細かい落ち葉ゴミといった粉塵(ふんじん)が激しく舞い上がることから塵旋風と呼ばれる。対流混合層がよく発達した晴天強風[注釈 1]の日中などに砂漠荒地空き地田畑運動場駐車場などのある程度の広さがある場所で発生しやすく、小規模な塵旋風であれば日常生活の中でも比較的容易に見ることができる。大部分の塵旋風は無害であるが、ごく稀に大規模な塵旋風が発生して建物などに被害を及ぼすことがある。

塵旋風は、一般的な日本語では「旋風」(せんぷう、つむじかぜ)や「辻風」(つじかぜ)と呼ばれ、ニュース天気予報などでは「塵」(じん)という漢字平仮名にして「じん旋風」と表記することもある。英語では「ダストデビル」(Dust devil)と呼ぶことが一般的で「埃の悪魔」という意味だが、「ダストワール」(Dust whirl)と呼ぶこともある。なお、ダストデビルよりも細長く渦巻いて立ち上るような場合は「ワールウィンド」(Whirlwind)と呼ばれ、ワール(Whirl)には「渦巻く」や「目眩」といった意味がある[2]。雪上などの別環境で発生する場合は「スノーデビル」(Snow devil)や「アッシュデビル」(Ash devil)や「スチームデビル」(Steam devil)と呼ばれる場合もある。

これらの気象現象の厳密な区分は困難であるが、何れも突風の一種として分類される。また、これらの気象現象は竜巻(トルネード)と誤認されやすいが、塵旋風と竜巻は定義や発生要因が根本的に異なる。
定義

塵旋風の定義を簡潔に述べるため、日本気象庁気象研究所日本気象学会などによる竜巻の定義と併せて述べる[3][4][5][6]塵旋風 Dust devil
塵旋風の定義


地表付近の大気状態が主な発生要因である。具体的には、強い日射による熱上昇気流(サーマル)や、地形性の収束が挙げられる。

主に、が少なく風が強い、晴天時に発生する。

地表から上空へと回転性の上昇気流が立ち上るが、上端の高度は数十 m - 100 m程度で雲底高度にも達しない。

地面から巻き上げられたが立ち上っていることが多い。垂れ下がる雲を伴うことはない。

気象現象として小規模で、付近の天候が変化するようなことはない。

下降気流を伴うことはない。

塵旋風の直下や付近に建物などが存在した場合でも、甚大な被害を及ぼす可能性は低い。

塵旋風の規模を計る指標基準は特にない。
竜巻 Tornado
竜巻の定義


上空大気状態が主な発生要因である。具体的には、突風前線面での寒気と暖気の衝突による上昇気流や、シアーの大きい風の収束などが挙げられる。

主に、どんよりと暗く低いが立ちこめる、荒天時に発生する。

地表から上空の積乱雲の中へと回転性の高速の上昇気流が立ち上り、上端の高度は数百 m - 1 km程度に達する。

地面から巻き上げられた、海面から巻き上げられた水滴が立ち上っていることが多い。また、積乱雲から柱状または漏斗状の雲が垂れ下がることが多い。

気象現象として大規模で、付近の天候が急激に変化することがあり、(ひょう)や(あられ)が突然降り出すこともある。

襲来前後にダウンバースト等の激しい下降気流が発生することが多い。

竜巻の直下や付近に建物などが存在した場合、甚大な被害を及ぼす可能性は高く、自然災害となり得る。

竜巻の規模を計る指標として、シカゴ大学名誉教授藤田哲也による「藤田スケール」が国際的に知られている。

発生要因2008年4月、ポーランドクラクフ市で撮影された塵旋風の連続写真。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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