塩素酸ナトリウム
IUPAC名
塩素酸ナトリウム
別称塩素酸ソーダ
識別情報
CAS登録番号7775-09-9
248
沸点
>300 (分解)
水への溶解度100g/100 mL (20℃)
出典
ICSC
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
塩素酸ナトリウム(えんそさんナトリウム、sodium chlorate)は、ナトリウムの塩素酸塩で、化学式 NaClO3の化合物。塩素酸ソーダとも呼ばれる。 工業的な主流は熱濃厚食塩水の電気分解である。電気分解時の陽極には食塩水電解用の寸法安定性電極[2]、二酸化鉛、黒鉛、白金などの耐酸化性のものが必要である。温度とpHが重要であり、低温や高pH条件では次亜塩素酸ナトリウムが生じる。 Cl − + 3 H 2 O ⟶ ClO 3 − + 6 H + + 6 e − {\displaystyle {\ce {{Cl^{-}}+3H2O->{ClO3^{-}}+{6H^{+}}+6{\it {{e}^{-}}}}}} 工業的には廃れたが、熱濃厚水酸化ナトリウムに塩素を吹き込んでも得られる。 6 NaOH + 3 Cl 2 ⟶ NaClO 3 + 5 NaCl + 3 H 2 O {\displaystyle {\ce {6NaOH + 3Cl2 -> NaClO3 + 5NaCl + 3H2O}}} 実験室的には次亜塩素酸ナトリウムの加熱、さらし粉とナトリウム塩を反応させたのち、加熱することにより不均化して生成する。いずれの場合も水溶液のpHが収率に重大な影響を与える。 3 NaClO ⟶ NaClO 3 + 2 NaCl {\displaystyle {\ce {3NaClO -> NaClO3 + 2NaCl}}} 工業的には二酸化塩素(ClO2)を合成し、パルプを漂白するのが主な用途である。その他、各種の塩素酸塩の原料として用いられる。 身近なところでは、非選択性土壌処理型除草剤として利用されている。かつては純度98%の塩素酸ナトリウムが農薬として流通していたが、危険性が高く、また爆発物に混ぜて非合法に利用される例が多発したこともあり、1970年代以降は炭酸ナトリウムなどが配合された製剤に置き換わっている。欧州連合では、環境への影響を懸念して2009年に除草剤としての使用が禁止された。アメリカ合衆国では綿花や大豆の収穫前に葉を落とす目的でも使われているが、1995年以降使用量は減少している[3]。 航空機や潜水艦、国際宇宙ステーションの緊急用、あるいは携帯用医療機器としての化学的酸素発生器(クロレートキャンドル)にも用いられている。少量の鉄粉が酸化することで発熱し、それにより塩素酸ナトリウムが熱分解することで、多量の酸素を供給できる。このとき副生成物の塩素は、過酸化バリウムに吸収させる。 吸入した場合は、患者を新鮮な空気の場所に移し、安静にさせる。触ってしまった、目に入ってしまった場合は、多量の水で洗い流す。これらは、医師の処置を受けるまでの応急措置であって、これでよしというわけではない。 摂取した場合、ヘモグロビンがメトヘモグロビンとなり、赤血球膜のタンパク質を変性させて溶血を引き起こすほか、腎機能を障害する。 化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)における酸化性固体
性質
無色無臭の結晶で潮解性がある。
水に極めて溶けやすく、水溶液は中性。
300℃以上に加熱すると分解して酸素を放出する。
強酸と反応して二酸化塩素を放出する。
強い酸化作用をもち、有機物、硫黄、金属粉などが混ざると、加熱、摩擦又は衝撃で爆発する。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の不均化で生じる。
光で分解するため褐色の瓶に密栓して保管、あるいは冷暗所に保管する。
製法
用途
人体への影響と応急措置
規制
事故・事件
1916年5月5日 - 現在の大阪市福島区野田6丁目にあった東京倉庫で塩素酸ソーダが爆発。死者43人、重軽傷者316人[4]。
1971年9月5日 - 神奈川県の坂田種苗会社(現サカタのタネ)で火災が発生。倉庫に延焼し、除草剤として保管していた塩素酸ナトリウム200kgが爆発した[5]。
注釈^ 相川洋明「 ⇒技術の系統化調査報告「ソーダ関連技術発展の系統化調査」」(pdf)『国立科学博物館技術の系統化調査報告』第8巻、国立科学博物館 産業技術史資料情報センター、2007年3月、32頁、2018年9月3日閲覧。
^ 電解生成物に対し完全耐食性を持つ酸化物被覆チタン系金属電極。イタリアのデ・ノラ社が1966年に実用化した[1]。
^ USGS. “Pesticide Use Maps - SodiumChlorate
^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』313頁 河出書房新社刊 2003年11月30日刊 全国書誌番号:.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}20522067
^ 「火事で農薬爆発」『中國新聞』昭和46年9月6日 15面