堤防
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例:江戸時代初期築造の堤防
「伊木の堤」(鳥取市鹿野

堤防(ていぼう)とは、人家のある地域に河川海洋の水が浸入しないように、河岸や海岸、運河に沿って土砂を盛り上げた治水構造物のことである。一部は、土手(どて)とも呼ばれる。
河川堤防
概説

河川の堤防は主に洪水時の氾濫を防ぐ目的で設けられる。
堤防の構造一般的な河川堤防の断面図。
1.計画高水位 (HWL) 2.低水路 3.高水敷(河川敷) 4.表法 5.表小段 6.天端 7.裏法 8.裏小段 9.犬走り 10.低水護岸 11.堤外地 12.堤防敷 13.堤内地 14.河川区域整備中の堤防

堤防から見て河川のある側を堤外(ていがい)といい、その反対側を堤内(ていない)という。一般的な感覚とは内外逆に思えるが、人家のある土地を堤防で囲って護るという考え方から生まれた呼称である。

堤防の平坦になった頂部は天端(てんば)、もしくは馬踏(ばふみ)と呼ばれ、3m以上の計画高水流量により決められた幅にされている。この天端には河川管理のための人車が通行可能な河川管理用通路が設けられ、必要に応じて敷砂利やアスファルト舗装が施されている。

堤防も場所によっては、一般車両の通行可能な国道や都道府県道等の一般道と同等の「併用道路」とされているが、天端は洪水時において水防活動を実施する空間となるため、水防活動を妨げるガードレールや街灯といった構造物は可能な限り設置が避けられる。

このため一般の道路は、天端を区分して平行に設けたり、斜面を1段下がった小段に設けることで、水防活動と一般交通路としての利用を分離している区間も多い。

天端の両端の法肩(のりかた)から下る斜面は法面(のりめん)といい、堤外側の法面を表法(おもてのり)、堤内側の法面を裏法(うらのり)という。法面の勾配は原則として50%以下[1]と定められている。

通常は法面にはを生やすことで表面の崩落を防ぐが、水流が強くなることが予想される箇所の表法面はコンクリートブロックなどで護岸が行われる。

大きな堤防になると(高さ3m以上)、法面の崩壊を防ぎ、安定を図るため、中腹に水平な段が設けられる。これを小段といい、1.5m以上の幅で設けるよう定められている。ただし、小段に水が溜まることを嫌って、最近は流下断面に余裕がある場合、小段を設けずに緩傾斜とした1枚法で改修される場合がある。また、堤防の安定や非常用土砂の確保、環境保全において必要のある場合には、裏法に盛り土を行うことがある。これを側帯という。側帯はときに頂部を公園としたり、並木を植えるなどして利用されることもある。

日本では堤防を完成堤防と暫定堤防、暫々定堤防とに区分している。

完成堤防の定義は「計画高水位に対して必要な高さと断面を有し、さらに必要に応じ護岸(のり覆工、根固工等)等を施したものをいう」としている[2]。暫定堤防は計画高水位に対して必要な高さと断面(幅)を有し、さらに必要に応じ護岸等のうち、どれかは満たす状態の堤防で、暫々定堤防はそのどれも満たしていない堤防である。

前述の断面とは一般に堤防断面と呼ばれ、これは堤防を水流行方向ではなく、横断面方向にカットした際の形状断面である。

暫定堤防のうち、高さがあるが断面幅の狭い堤防のことをかみそり堤と呼んでいる[3][4]

特に隅田川に設置されているコンクリートウォール製の高さがあるが断面幅の狭い鉛直型防潮堤はカミソリ堤防と呼ばれる[5][6][4]

また、計画高水位に対して必要な高さと断面を有する堤防断面を計画堤防断面としており、河川管理施設等構造令では河川の規模(流量規模)に応じて堤防高ほかが規定されているため、これに基づいて各河川の計画堤防断面が決定されている(形状規定方式)[7]
特殊堤・胸壁
堤防の材料は土を基本とする。この場合、土は自立させるために断面を底面の広い台形に仕上げる必要があるが、都市部などで、通常の堤防を作るだけの用地が確保できない場合、主要部分にコンクリートや鋼矢板などを用いた壁状の堤防を造ることがある。これを特殊堤という。また、同様の理由で堤防高が十分に取れない場合、堤防上にコンクリートなどで壁を造り高さを補うことがある。この壁を胸壁という。

尚、同様の特殊堤として、河川構造物に越流堤、囲繞堤(いじょうてい)、背割堤及び道流堤がある。
堤防の種類多様な堤防さいたま市桜区にある荒川左岸の横堤。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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