培養肉
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シャーレによってハンバーグ状に形成された培養肉ハンバーグとして調理中の培養肉

培養肉(ばいようにく)は、動物の可食部の細胞組織培養することによって得られた食用の肉。動物の個体屠殺する必要がないので動物の犠牲を減らせること、牛一頭を約2年かけて育てるところを培養肉であれば2か月でできて生産効率が良いこと、厳密な衛生管理が可能であること、食用動物を肥育するのと比べて省スペース省資源で作ることができて地球環境への負荷が低いこと、抗生物質耐性菌リスクを低減できること[1][2][3][4]などの利点がある。

各国がバイオテクノロジーに戦略的に取り組んでおり[5][6]、培養肉はその分野の一つとして従来の食肉に替わるもの(代替肉)として注目されている。

人工的に牛肉や豚肉、魚肉などを生産する技術を「細胞農業」と呼ぶ[7]。培養肉の安全性は、2023年時点で国際連合食糧農業機関世界保健機関によって認められている[8]。現在では70社以上のスタートアップが培養肉や細胞農業に参入しており[9][10][11]・子羊[12]・鴨[13]・うずら[14][15][16]甲殻類うなぎ[17]フォアグラホタテ[18]などの培養肉の研究開発が進行中である。2040 年までには肉の 60% が培養された細胞から作られ、世界中の食料品店やレストランで販売されると予測されている[19]
国際的な動き

政府が魚介培養肉のスタートアップと提携する[20]など、培養肉の開発は国家レベルでの関心事になっている[21]

2005年から培養肉研究の支援をはじめたオランダ政府は培養肉の研究に4億ドルの資金を提供[22]、その後2022年には6000万ユーロ(約83億円)の資金提供を決定した[23]。2019年、インドの中央政府は細胞分子生物学センター(英語版)(CCMB)と国立研究センターに対し、クリーンミート研究のための資金を提供することを発表した[24]。2019年、オランダの培養肉の開発をするMeatable(オランダ語版)(豚肉の培養に力を入れている会社[25])は、10億円の資金調達に成功したと発表したが、この調達先の一つには欧州委員会も含まれる(助成金300万ドル)。

2020年9月、アメリカ国立科学財団も培養肉への助成枠を決定[26][27]。2021年1月、スペイン政府はBioTech Foods(英語版)の主導する培養肉プロジェクトに約6億5000万円を出資した[28]。2021年10月13日には、米国農務省が、培養肉研究所のために1000万ドルを投資することを発表[29]。2022年には、バイデン政権が培養肉を含む食品テクノロジーを優先事項とする大統領令に署名した[30][31]

2020年、EUは、代替研究開発のための3200万ユーロの新規資金提供を発表[32]。英国の政府外公共機関(英語版)である英国研究技術革新機構(英語版)(UKRI)もまた培養肉開発会社のRoslin Technologiesに公的資金を提供している[33]

2021年12月に中華人民共和国農業農村部が発表した5カ年農業計画では、初めて培養肉について具体的に言及された[34]。2022年に入ると習近平総書記が、「食品の効果的な供給を保証する必要がある」と指摘し、「従来の作物や家畜や家禽とは別に、生物科学技術を発展させることで、作物、動物、微生物からカロリーとタンパク質を得ることができる」と述べている[35]。続く5月には、中国が発表した初のバイオ経済発展計画において、「従来の畜産業がもたらす環境資源への負荷を軽減する」方法として「合成タンパク質」(オルトプロテイン)の開発を呼びかけた[36]。以降、中国政府は業界関係者に手厚い奨励金を提供している[37]

2022年、オーストラリアの政府機関であるオーストラリア連邦科学産業研究機構は今後のタンパク質製品供給について、培養肉も含めたロードマップを発表した[38]。韓国政府もまた培養肉のスタートアップに資金援助している[39]。同年、ノルウェーの研究評議会も持続可能な肉、卵、乳製品を市場に出すために、細胞農業と精密発酵の開発に資金を提供することを決定した[40]

2022年、アメリカ カリフォルニア州は、培養肉研究への初の州投資を承認した[41]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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