坂東太郎
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利根川
利根川河口空撮(左側が茨城県神栖市波崎・右側が千葉県銚子市川口町から長塚町にかけて)
2008年12月29日撮影
水系一級水系 利根川
種別一級河川
延長322 km
平均流量290.43 m³/s
(栗橋観測所2001年平均値)
流域面積16,840 km²
水源大水上山群馬県
水源の標高約1,800 m
河口・合流先太平洋茨城県千葉県
流域 日本
茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都長野県

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利根川(とねがわ)は、大水上山を水源として関東地方を北から東へ流れ、太平洋に注ぐ一級河川一級水系であり、利根川水系本川(本流)である。河川の規模は日本最大級であり、日本三大河川の一つ。首都圏の水源として国内の経済活動上重要な役割を果たしている。「坂東太郎(ばんどうたろう。“東国にある日本一の大河”)」の異名を持つ日本三大暴れ川の一つで、江戸時代初期に行われた河川改修である利根川東遷事業により、流路を変更された歴史を持つ。
地理上流(群馬県前橋市付近)中流(群馬県邑楽郡明和町付近)下流(利根川河口堰付近)

群馬県利根郡みなかみ町にある三国山脈の一つ、大水上山標高1,840 m)にその源を発する。前橋市高崎市付近まではおおむね南へと流れ、伊勢崎市本庄市付近で烏川に合流後は、東に流路の向きを変えて群馬県・埼玉県境を流れる。江戸川を分流させた後はおおむね茨城県千葉県の県境を流れ、茨城県神栖市と千葉県銚子市の境において太平洋鹿島灘)へと注ぐ。江戸時代以前は大落(おおおとし)古利根川が本流の下流路で東京湾に注いだが、度重なる河川改修によって現在の流路となっている(後述)。流路延長は約322 km信濃川に次いで日本第2位、流域面積は約1万6840 km2で日本第1位であり、日本屈指の大河川といってよい。流域は神奈川県を除く関東地方一都五県のほか、烏川流域の一部が長野県佐久市にも架かっている[1][注 1]河川法に基づく政令[2] により1965年昭和40年)に指定された一級水系である。

利根川における上流中流下流区分については、おおむね下記の区間に分けられる[3]。上流:水源の大水上山から群馬県伊勢崎市八斗島(やったじま)まで中流:伊勢崎市八斗島から千葉県野田市関宿の江戸川分流点まで下流:江戸川分流点から河口まで(流路を東へ変える)

利根川の水源は大水上山である、という詳細が明らかとなったのは1954年(昭和29年)に群馬県山岳連盟所属の「奥利根水源調査登山隊」30名が行った、水源までの遡行調査による[4]。水源に関する史料としては室町時代に著された源義経一代記である『義経記』が初出で、同書では現在のみなかみ町藤原付近を水源と記している。大水上山の名称が初出したのは、それより後の1640年代に成立した『正保国絵図』においてである。しかし、利根川の源流については江戸時代後期に入ると天保七年(1835年)に成立した『江戸名所図会』や安政五年(1858年)に成立した『利根川図志』において異説が出されるなど、長らく不明となっていた。明治以降本格的な調査が開始され、1894年(明治27年)と1926年大正15年/昭和元年)と二度の探検を経て1954年に水源が確定する。さらに1975年(昭和50年)には群馬県による利根川源流域の総合学術調査が実施され、より詳細な実態が解明された[5]

利根川の出発点は大水上山北東斜面、標高1,800 m付近にある三角形の雪渓末端である。源流部は険しい峡谷を形成し、大小の沢を集めた後奥利根湖へと注ぎ込む。矢木沢須田貝藤原ダム通過後は南西に流路を変え、水上温泉付近で水上峡・諏訪峡を形成しながら南へ流れる。みなかみ町月夜野で赤谷川と、沼田市片品川と合流した辺りでは沼田盆地を形成、両岸では河岸段丘が発達している。沼田市から渋川市境に掛けては綾戸渓谷と呼ばれる渓谷を形成して蛇行、渋川市内で吾妻(あがつま)川を併せると次第に川幅を広げ、前橋市街を縦貫した後、前橋市と高崎市の市境を形成する。群馬県西毛地域を流域とする烏川を合流すると流路を東へ向け、伊勢崎市八斗島へ至る。

中流域に入ると利根川の川幅は急激に広くなり、群馬県佐波郡玉村町付近で約500 m、埼玉県熊谷市妻沼付近では約900 mにも及ぶ[6]。途中の利根大堰で河水は武蔵水路などによって荒川へ分流する。そのあと間もなく渡良瀬川を合流して茨城県猿島郡五霞町内を貫流した後、茨城・千葉県境を流れる。下流域においては野田市関宿で江戸川を、千葉県柏市利根運河をそれぞれ分流するが対岸の茨城県守谷市鬼怒川取手市北相馬郡利根町の境で小貝川が合流する。香取市付近では一旦千葉県内を流れるがその後利根川河口堰付近で再度県境を形成し、常陸利根川黒部川を左右より併せる。ここからは平均して900 mから1 kmの広大な川幅を形成し[6]、神栖市・銚子市境において太平洋へと注ぐ。下流域には日本第二位の面積を有する霞ヶ浦を始め、北浦印旛沼牛久沼手賀沼など多くの天然湖沼が含まれる。
自然

利根川流域の自然は、上流・中流・下流において様相が大きく異なることが多い。本節では利根川流域における自然環境について詳述する。ただし水質については別掲して後述する。
気候・水文利根川中流の埼玉県久喜市栗橋にある国土交通省関東地方整備局の栗橋観測所。過去の洪水位が示されている。

利根川流域の気候関東平野東日本気候区に属しているため、おおむね温暖湿潤の気候である。しかし流域面積が広大なこともあって上流・中流・下流が一律に温暖湿潤という訳ではなく、季節により相違が見られる。

降水量は年平均で 1,300 mm と、日本の年平均降水量 1,700 mm に比較すると少ない[7]

上流部は三国山脈などの高山地帯があり、冬季は雪が多く寒さが厳しい。1955年(昭和30年)から2002年(平成14年)の間における平均累積積雪量は大水上山源流部で16 m、矢木沢ダム付近で10 - 14 m、みなかみ町付近や片品川上流部などでは2 - 10 mとなっており[7]、最上流部は関東地方でも屈指の豪雪地帯であるが少雨地帯でもある。しかしこの積雪が春季には融雪して利根川上流ダム群に注ぎ、首都圏の重要な水源となる。中流部については夏季は太平洋高気圧の影響で晴天が多いがその分暑さも厳しい。2007年(平成19年)8月16日に熊谷市で記録した40.9 °Cは、同日記録した岐阜県多治見市ともに当時の日本最高気温記録となった。また群馬県や栃木県では雷雨が多くなるのも特徴である。一方冬季には北西の乾燥した季節風が強く吹き、群馬ではこれを「上州のからっ風」・「赤城おろし」・「榛名おろし」とも呼ぶ[8]。下流部においては黒潮の影響もあり温暖であり中流部のような猛暑も少ないが、冬季には曇りの日が比較的多い[9]。降水量については中・下流部は夏季や秋の台風シーズンにその極期を迎える。

ただし利根川の年平均降水量は観測が開始された1900年(明治33年)以降一貫して減少傾向が続いており、平成に入ると多雨の年と少雨の年の降水量の差が顕著になっている[7]

利根川の年間流出量は約91.5億t、年平均の流量は埼玉県久喜市栗橋の観測地点で毎秒290.43 m3で、いずれも日本第5位である[10][注 2]
地形・地質神流川支流の三波川に見られる三波石の露頭。国の天然記念物利根川と信濃川分水嶺である三国山脈を形成する山岳の一つ、谷川岳

上流部では火山活動などによる地質形成が主体で、中・下流部の平野部については沖積平野が主体となっている。利根川最上流部の奥利根周辺は古第三紀花崗岩類が多く占め、比較的堅固な地質となっている。それ以外の山地については主に新第三紀堆積岩が占め、関東山地八溝山地足尾山地中生代から古生代に掛けて形成されたチャート砂岩粘板岩などの堆積岩が主体となっている[11]。烏川流域、特に神流(かんな)川一帯は三波川(さんばがわ)変成帯と呼ばれる地質であり、神流川の三波石峡や支流の三波川では三波石と呼ばれる緑色の結晶片岩が多く見られる。群馬県、栃木県を流れる支流の上流部の多くは多くの火山が存在し、これらの噴火活動による火山砕屑物層や風化した花崗岩、安山岩凝灰岩などが地質の多くを占めている。このことから地すべり土石流に伴う被害も多い(後述)。

中・下流部に広がる丘陵地帯や洪積台地第四紀に形成され、古東京湾により堆積した砂や泥が主体の固結度の低い下総層群と呼ばれる海成地層などが主体である。この地層の上に関東ローム層が覆う。沖積低地更新世の末期より完新世に掛けて形成された厚い沖積層が主体で、現在の東京湾沿岸部などでは最大で60 mから80 mもの厚みになる。これら洪積台地・沖積低地では第四紀に関東山地など関東平野を囲む周辺山地の隆起運動が活発になり、相対的に平野中央部が沈降する関東造盆地運動が本格化することで低地には上流から流れてきた土砂が沖積層に堆積。その後沈降していた平野中央部が隆起に転じたことから今度はそこに土砂が堆積し、現在の台地・低地となった[12]。こうして形成された山地や台地が現在利根川および利根川水系の分水界を形成する。分水界は群馬・新潟県境の三国山脈や群馬・栃木・福島県境の帝釈山脈、および茨城県から栃木県にかけて広がる八溝山地が北側、群馬・長野・埼玉県境の関東山地が西側に位置し、これらの山地の南麓および東麓に降った雨が最終的に利根川へと注ぐ[12]

三国山脈は太平洋と日本海分水嶺であり、ここを境とし南麓は利根川本流を始め大小の沢の水源となるが北麓は魚野川中津川などの信濃川水系となる[13]


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