地球シミュレータ
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地球シミュレータ稼働期間(4代目)2021年3月1日 -
スポンサーNEC[1]
運営者海洋研究開発機構
所在地横浜市金沢区昭和町3173番25[2]
アーキテクチャ

NEC SX-Aurora TSUBASA

NVIDIA A100

AMD EPYC 7742(HPE Apollo 2000)

電源2MW
OSCentOS 8
メモリ556.5TiB
ストレージ

120TB (ホーム領域)

1.3PB (ワーク領域)

60PB(データ領域)

処理速度19.5 PFLOPS (倍精度浮動小数点数)
コスト75億4050万[3]
ウェブサイトwww.jamstec.go.jp/es/jp/

地球シミュレータ(ちきゅうシミュレータ、英: Earth Simulator)は、NEC SXシリーズベース(現行機は第4世代のSX-Aurora TSUBASA B401-8)のスーパーコンピュータシステムである。

神奈川県横浜市金沢区海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 横浜研究所に設置されている。
目的・経緯
初代

1993年?1995年[4]TOP500首位となった数値風洞計画(NAL、富士通)を先導した三好甫が、それに引き続き日本スーパーコンピュータをリードするシステムとして、JAMSTECと日本電気を先導したのが本計算機計画である。また科学技術庁(1998年度当時)としては地球規模の環境変動の解明・予測といった大義の他、バブル崩壊により著しく落ち込んでいた業界の維持といった目的もあり、600億円を投じて開発が開始された。2001年下旬に三好は逝去したが、残された計画通りシステムは完成、2002年3月15日に運用を開始し、目標通りの威力を発揮した。まず、その実性能自体が「コンピュートニク」とすら呼ばれるほどの印象を高性能計算関連の(主として米国の)産官学に与えた。また科学的な成果としては、地球温暖化地殻変動といった、文字通り地球規模でのシミュレーションに利用され、気候変動に関する政府間パネルの2007年ノーベル平和賞受賞にも大きく貢献し、他にも多くの計算科学による成果を上げた。その後も公募により、地球科学、先進・創出分野での共同利用が行われている他、2007年からは産業界による成果専有型の有償利用も可能となっている。
2代目以降

2009年3月に2代目のシステムへ更新、2015年3月には3代目、2021年3月には4代目のシステムに更新された。また初代以来、日本のHPCの旗艦としての役割を富岳と分担する他、名実共にNEC SXシリーズの旗艦という存在になっている。
構成
初代地球シミュレータ(初代)

SX-5ベースである。SX-5では32チップで構成されていた計算モジュールを1チップ化し、それを8個集積した1ノードが8GFLOPS、それに16GBのメモリをともなう[5]。640ノード(5,120CPU)を単段クロスバースイッチで接続、最大理論性能は40.96TFLOPSであった。このシステムのために開発された、計算モジュールを集積したチップは、SXシリーズの次の世代のSX-6にも活用された。
第2世代地球シミュレータ(2代目、2015年2月までの旧システム)

SX-9ベースである。102.4GFLOPSの性能を持つプロセッサ8個と128GBのメモリを持つベクトル計算機ノード(地球シミュレータではPNと呼ばれる)160台(1,280CPU,1,280コア)を2段のクロスバースイッチでファットツリー状に接続し、最大理論性能131TFLOPSを実現している[6]
第3世代地球シミュレータ(3代目、2021年2月までの旧システム)

SX-ACEベースである。256GFLOPSの性能を持つプロセッサ1個(4コア)と256GBのメモリを持つベクトルノード5,120台(20,480コア)を2段のクロスバースイッチでファットツリー状に接続し、最大理論性能1.3PFLOPSを実現している[7]
第4世代

AMDのCPUNVIDIA A100及び、684台のSX-Aurora TSUBASA B401-8により、5,472台のベクトルエンジン(43,776コア)を搭載し、最大理論性能19.5PFLOPSを達成する見込みで、2021年3月1日より運用開始[8][9]。200Gb/s HDR InfiniBandが使われている[10]。また、データセンター環境監視システムにiDCNaviが使われている[11]
運用

単体能力を改善し、多目的に活用を図ることを目的として、スカラプロセッサからなるサーバを併用している。また、日本の学術研究のインフラストラクチャであるSINETに接続し、遠隔利用を可能にしている。AVS, Mathematica, Maple等の商用ソフトウェアやオープンソースソフトウェアも利用可能である。

第3世代までのOSはSXシリーズ用のSUPER-UXをベースに特化した拡張をしたものであり、プログラミング言語処理系としてはFortran 90C/C++コンパイラが利用できる(いずれも地球シミュレータ専用のカスマイズや調整(チューニング)が入っている)。並列化にあたっては、「ハイブリッド並列化」と「フラット並列化」の二つのプログラミングモデルがある。前者はノード間並列化をMPI、ノード内並列をマイクロタスクまたはOpenMPで記述する一方、後者はノード間・ノード内の両方の並列化をいずれもMPIで書く。一般的には前者はパフォーマンス重視、後者はプログラミング効率重視のモデルとされている。ユーザはこれらの並列化に対応したプログラムをバッチジョブとして投入する。名前が与えるイメージとは裏腹に、GRAPEのような専用計算機ではなくあくまで汎用計算機であるので、地球科学とは直接にかかわりのない分子動力学計算などにも利用されている[12]
性能
初代

2002年3月15日に運用を開始した[13]。2002年6月LINPACKベンチマークで実効性能35.86TFLOPSを記録し、スーパーコンピュータの計算性能の世界ランキングであるTOP500で第2位の IBM ASCI White に5倍の差をつけてトップを獲得して[14]以来、2004年11月IBM Blue Gene に首位を明け渡す[15]まで、5期連続でトップを維持した。これは全640ノードの内638ノード(5,104プロセッサ)を用いて得られたもので、ピーク性能に対する実測性能比は87.2%となる。ASCI Whiteが7.226TFLOPS(ピーク性能12.288TFLOPS:ピーク性能比58.8%)であったのと比較して、理論ピーク性能に対する実効性能の比が非常に高く、ベクトル計算機特有の高速メモリシステムおよび単段クロスバーネットワーク接続[16]によるものと分析された。
第2世代

初代のシステムを2009年3月に更新して、4月運用を開始した[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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