地球の年齢
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地球

地球の年齢(ちきゅうのねんれい)は、地球誕生から現在までの経過年数である。45.4 ± 0.5億年 (4.54 × 109 年 ± 1%)であると推定されている[1][2][3]。この年齢は、隕石放射年代測定から得られたデータに基づいている。
原理

現在、地球の年齢は放射年代測定によって求めるのが一般的である。これは、岩石の中に含まれる放射性同位体の量を調べる方法で、地球の年齢を調べるにはその中でもウラン-鉛法(U-Pb法)、カリウム-アルゴン法(K-Ar法)、ルビジウム-ストロンチウム法(Rb-Sr法)などが用いられる。

放射性同位体はそれぞれ決められた崩壊定数 λ を持ち、時がたつにつれ放射性崩壊によって原子の数を減らしてゆく。現時点での原子数を N、岩石ができた時点(時間 t = 0)の原子数を N0 とおくと、 N = N 0 e − λ t {\displaystyle N=N_{0}e^{-\lambda t}} …(1)

という式が成り立つ[4]。この式を利用して、岩石の年代 t を求める。

ルビジウム-ストロンチウム法での例を示す。ルビジウムRbの同位体は次のような崩壊を起こし、87Rbが87Srへと変化する。 87 Rb → 87 Sr + β − {\displaystyle {}^{87}{\hbox{Rb}}\;\to \;^{87}{\hbox{Sr}}\;+\;\beta ^{-}}

この87Rbに対して(1)式を用いると、 87 Rb   = ( 87 Rb ) 0 e − λ t {\displaystyle {}^{87}{\hbox{Rb}}\ =({}^{87}{\hbox{Rb}})_{0}e^{-\lambda t}} …(2)

となり、これを(87Rb)0について解くと、 ( 87 Rb ) 0 = 87 Rb e λ t {\displaystyle ({}^{87}{\hbox{Rb}})_{0}={}^{87}{\hbox{Rb}}\,e^{\lambda t}} …(3)

が得られる。

一方、現在の87Srの量は、岩石中に元から含まれていた原子数(87Sr)0に、上記の崩壊で87Rbから新たに誕生した原子数(87Rb)0 ? 87Rbを加えたものと等しくなるので、 87 Sr = ( 87 Sr ) 0 + ( 87 Rb ) 0 − 87 Rb {\displaystyle {}^{87}{\hbox{Sr}}=({}^{87}{\hbox{Sr}})_{0}+({}^{87}{\hbox{Rb}})_{0}-{}^{87}{\hbox{Rb}}} …(4)

(4)に(3)を代入すると、 87 Sr = ( 87 Sr ) 0 + 87 Rb ( e λ t − 1 ) {\displaystyle {}^{87}{\hbox{Sr}}=({}^{87}{\hbox{Sr}})_{0}+{}^{87}{\hbox{Rb}}(e^{\lambda t}-1)} …(5)

となる[5]

この式に測定で求めた値を代入すればよいのだが、一般的に同位体の量は絶対値よりも同位体比の形で測定する方が簡単である。今の場合は(5)の両辺を86Sr で割って、 87 Sr 86 Sr = ( 87 Sr 86 Sr ) 0 + 87 Rb 86 Sr ( e λ t − 1 ) {\displaystyle {\frac {{}^{87}{\hbox{Sr}}}{{}^{86}{\hbox{Sr}}}}=\left({\frac {{}^{87}{\hbox{Sr}}}{{}^{86}{\hbox{Sr}}}}\right)_{0}+{\frac {{}^{87}{\hbox{Rb}}}{{}^{86}{\hbox{Sr}}}}(e^{\lambda t}-1)} …(6)

として、87Sr / 86Sr および 87Rb / 86Sr の測定値を代入する[6]。この式には、t と (87Sr / 86Sr)0 という2つの未知数が含まれているため、岩石の年代 t を求めるには、2個の試料で測定して2つの式を作る必要がある。実際に式から求める際には、複数の測定値をグラフ上にプロットし、その傾きから年代を求めるアイソクロンと呼ばれる方法がとられている[7]

このような放射年代測定によって求めた地球上の物質のうち、古いものでは、オーストラリア西部で採集された44.04±0.08億年前のジルコンが存在する[8]。ただし地球上の物質は、火山活動の影響などによって絶えず変成を繰り返しているため、地球誕生時の姿をそのまま残している物質を見つけ出すのは不可能に近い[9]

そこで、地球に落下した隕石の年代から地球の年齢を求める方法がとられている。隕石の安定同位体の組成は、地球の組成とほとんど変わらないため、隕石と地球は同じ元素合成反応でつくられたと考えられている[10]。つまり、隕石の年齢は地球の年齢と同じとみなせる。そのため、隕石に放射年代測定を導入することで地球の年齢が求められている[11]。この方法により、現在では地球の年齢はおよそ45億年ないし46億年と考えられている。
歴史
古代

古代、地球の年齢について語るのはごく一部の人々に限られた。というのも、古代に伝えられていた様々な神話では、この世界は永遠で、誕生と死を繰り返し、地球も何度も再生するという考え方が多くを占めていたからである[12]。たとえば古代インドでは、約90億年ごとに世界が生まれ変わると考えられていた[13]。古代ギリシャのストア派も、世界はやがて滅びまた再生されると考えた[14]。またアリストテレスは、世界は滅びることなく永遠に続くと考えた[14]

その中で例外的にキリスト教の世界では、天地創造からアダムイヴの誕生、さらにそこから最後の審判に至るまで、繰り返されることのない直線状の歴史が語られている[15]。そのためキリスト教徒の中から、旧約聖書創世記を元に地球の年齢を計算する人物が現れはじめた。最初にこれを実行したとされているのがアンティオキアの第6代主教テオピロスである。テオピロスは169年、この方法によって地球創世は紀元前5529年と計算した[15][16]。また、ユリウス・アフリカヌスは、キリストの誕生を天地創世から5500年後とし、現在の地球はそこから500年続くと計算した[17]
ビュリダンによる推定

聖書から地球の年齢を読み解く動きはその後も続いたが、その結果は、地球の年齢を6000年未満とするのがほとんどだった。当時、最後の審判は天地創造からおよそ6000年後に起こると信じられていたので、地球の年齢をそれより古く設定することはできなかったのである[16]

一方で中世では、別の方法から、地球の年齢は6000年より古いのではないかとする考えもあった。たとえば1000年前後に活躍したアラビアの学者アルハゼンは、山地の地層に魚の化石があることから、海で死んだ魚に堆積物がたまってさらにそれが隆起して山になるには非常に長い時間がかかるのではないかと考えた[18]

また、世界は周期的に繰り返されるという考え方も、中世では影響力を持っていた。当時、夜空に見える恒星は3万6000年周期でゆっくりと回転することが知られていた。そのため、地球の現象もこの周期に従うと信じられていたのである(現在、この恒星の動きは地球の歳差運動によるものと説明されている。また、周期はおよそ2万6000年である[19])。また12世紀になると、世界は永遠に続くというアリストテレスの考え方がヨーロッパに伝わるようになった[16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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