地方隊(ちほうたい)とは、海上自衛隊に属する防衛大臣直轄の部隊であり、主として担当の警備区域[1]の防衛・警備及び自衛艦隊等の後方支援にあたっている部隊である。帝国海軍の鎮守府に相当する。
横須賀地方隊
呉地方隊
佐世保地方隊
舞鶴地方隊
大湊地方隊
の5つが置かれている[2]。 日本の領海を5つ程度の海軍区に区分して、各々に海軍の拠点(鎮守府)を置く考えは1886年制定の海軍条例に端を発している。同条例では現在の地方総監部と同じ位置に鎮守府が置かれるものとされていた(ただし大湊ではなく室蘭であった[3])。 2024年度、大湊地方隊を改編し、横須賀地方隊と統合することが防衛省から公表された[4]。「大湊地区隊(仮称)」に改編されるが、同地方隊に所属する警備隊、弾薬整備補給所、造修補給所などは地区隊が引き継ぎ、艦艇の後方支援を担う予定である[5]。 地方隊は内陸県(群馬・栃木・埼玉・長野・山梨・岐阜・滋賀・奈良県)を含めて国内の全ての陸上及び領海を分担している。 准海尉以下の海上自衛官の任免は、地方総監が行うものとされている。そのこともあり、自衛官候補生課程及び練習員課程・一般海曹候補生課程・予定者課程・初任海曹課程・海曹上級課程は各地方隊(大湊を除く)に置かれている教育隊が担当している。 また、自衛艦その他の船舶は、必ずいずれかの地方総監部にある基地(港)を定係港としている。自衛艦に掲揚される自衛艦旗は、当該自衛艦が除籍される日又は支援船に区分変更される際に返納されるが、これは当該自衛艦在籍地の地方総監が受領し、返納された自衛艦旗は、籍を有していた地方総監が記念自衛艦旗として保存に当たる。 このように地方隊は、単に沿岸区域の警備を担うのみならず、海上自衛隊の人的・物的基礎となっている組織である。 また、地方隊の組織ではないが、海上幕僚長の指揮監督を受ける自衛隊地区病院もまた、各地方総監部所在地に置かれていた。2022年3月以降は、自衛隊横須賀病院、自衛隊呉病院以外は廃止され、衛生隊診療所に縮小されている。 機動運用が行われる自衛艦隊と異なり、沿岸警備に従事するのは主に旧型の汎用護衛艦(DD)及びあぶくま型などの小型の護衛艦(DE)や高速航行可能なミサイル艇が中心となる。なお、護衛艦は護衛艦隊に所属しており、地方隊の隷下に配備されている艦艇はミサイル艇や掃海艇等の小型艦艇のみである。海上自衛隊の地方隊は、独立した沿岸警備組織がなかった戦前に沿岸警備を行っていた「海軍鎮守府」の伝統を受け継いだ組織である一方、海上保安庁は、戦後にアメリカ沿岸警備隊をモデルに誕生した組織であり、創立時から、それぞれの職域が大きく重複していた。近年、不審船事件の発生などを受けて海上保安庁の体制が拡充しており、地方隊と海上保安庁との海上警備任務の線引きが曖昧になってきている。 能登半島沖不審船事件では、自衛艦隊隷下の護衛艦隊、第3護衛隊群所属の護衛艦や舞鶴地方隊所属の護衛艦が、海上保安庁の巡視船と共に出動した。この事件に出動した護衛艦は、高速の工作船相手の追跡に向いていなかったため、現在は、はやぶさ型ミサイル艇が配備されている。 鎮守府は元々フランス海防思想の名残でしかなく、現在ではほぼ不要になっている。大元の目的である地域防衛の所要が存在せず、その戦力も管轄区域を超えて活動している今日、地方総監部の役割は曹士人事、国有財産、監査、周辺自治体の折衝といった管理業務および経理業務が主体であり、これらの業務は全一元化ないし東日本と西日本といった大区域化でも差し支えないため、廃止ないし整理し、指揮官も将官から切り下げることが望ましいとの意見もある[6]。
概説
沿革
1952年(昭和27年)8月1日:保安庁が創設され海上警備隊が警備隊に改編されたのと同時に横須賀及び舞鶴にそれぞれ地方隊が新編された。
1953年(昭和28年)9月16日:佐世保及び大湊に新たに地方隊が新編された。
1954年(昭和29年)7月1日:防衛庁が創設され海上自衛隊が発足されたのと同時に呉に地方隊が新編された。
2008年(平成20年)3月26日:海上自衛隊体制移行による部隊再編。
地方隊所属の護衛隊は護衛艦隊隷下に地域配備型の直轄護衛隊として編入。
地方隊隷下にあった大村、小松島、大湊各航空隊は廃止され、大村航空隊は航空集団隷下の第22航空群第22航空隊と統合、小松島航空隊は第22航空群第24航空隊に、大湊航空隊は第21航空群第25航空隊に改編された。
護衛艦隊司令官と航空集団司令官がフォースプロバイダー(練度管理責任者)として平時の練度管理を一元的に行い、実任務への対応にあたっては地方総監がフォースユーザー(事態対処責任者)として高練度にある艦艇等の提供を受け、事態対処を行うことになった。
任務
担当警備区域における防衛・警備等
防衛:沿岸の防衛、海上交通の安全確保等
警備:海上における治安の維持、人命財産の保護
災害派遣・航空救難
機雷その他爆発性危険物の処理
自衛艦隊等に対する後方支援(人事・教育、補給、造修
特色
海上自衛隊の人的・物的基礎として
沿岸警備
批判
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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