地方競馬
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地方競馬(ちほうけいば)とは、日本で勝馬投票券の発売を伴う競馬における法令上の興行形式のひとつである。本記事では主に日本の地方自治体等(都道府県、市区町村など)が主催する競馬(平地競走)について詳述しているが、外国における比較的小規模の競馬についても触れる。平地競走のレース風景(第51回東京大賞典2005年
概要

1948年7月に制定された競馬法の下で地方公共団体によって主催される公営競技[1]であり、日本中央競馬会(JRA)の主催する「中央競馬」と対をなす法令用語となっている[2]。2013年4月現在は14の主催者により全国17か所の競馬場(開催が行われていないものも含む)[1]平地競走ばんえい競走が施行され[3]、競馬法に基づく地方共同法人地方競馬全国協会(NAR)がこれを統括する。

戦前の公認競馬から国営競馬を経て、政府によって出資される特殊法人である日本中央競馬会によって施行されている現在も国庫への納付金を課せられている中央競馬に対して、現在の地方競馬は都道府県ないしは競馬場が所在する総務大臣が指定した市町村、または左記の地方公共団体で構成される一部事務組合が施行する競馬である[注 1][4]

2014年現在、日本での馬券発売を伴う競馬全体において在籍頭数のおよそ6割、競走数の約8割を占める[注 2][5][6][7]勝馬投票券における払戻率は70?80%であり[8][9]、その収益は主催自治体の畜産の振興、社会福祉の増進、医療の普及、教育文化の発展、スポーツの振興、災害の復興に充てられるほか[10]、競馬を主催していない地方公共団体に対しても地方公共団体金融機構の貸付金利引き下げによって還元される[11]。また、地方競馬全国協会を通じても広く馬の改良増殖や畜産振興のために用いられている[12]。しかしながら、1990年代以降は景気後退や娯楽の多様化などによって開催成績は低迷を続け、競馬事業を廃止する自治体も現れている[13]

戦前は草競馬と蔑まれた地方競馬も、戦後の一時期は平日開催が可能でかつ開催数が多いことが追い風となり好景気を迎えたこともあった。開催数が多いことで賞金総額は国営競馬の2倍近くとなり、1950年にはダービーの有力候補や天皇賞好走馬(エゾテッサン、二着入線後に失格)が続々と地方競馬入りするといったこともあった[14]が、中央競馬の巻き返しにより再び人気は逆転していった。激しい淘汰の時代を経て、2011年には主催団体が15にまで減少。売り上げは3314億円まで減少した。その後2013年に福山競馬が廃止されたものの、JRAのIPAT投票での発売開始や日本経済の好転に伴って売り上げが急激に回復し、中にはバブル期を上回る過去最高の売り上げを記録する競馬場も出てきている。2022年度の全国総売上は1兆703億5968万3860円に達し、史上初めて1兆円を超えた[15]
競走馬の登録・格付け平地最多出走回数記録を更新したセニョールベスト

競走馬の登録は地方競馬全国協会が行い[12]、競走馬の格付け(クラス分け)は各主催者(地区)の区分によって行われる。格付けは各馬がレースで獲得した本賞金に各主催者(地区)が定める補正を行った番組賞金によって定められ、各主催者(地区)とも3段階(A・B・C)の大区分を基本としているが、各主催者(地区)ごとに年齢・収得賞金・着順のポイント換算など基準は異なる。主催者(地区)によっては前述の大区分に数字を組み合わせ、「A1・A2・B1…」のように細分化されることもある[16]兵庫県競馬組合は競走馬の格付けに独自のポイント制を採用している[17]。南関東地区でも2024年1月1日から番組賞金に代わってポイント積算方式を全面導入することが発表され、2歳馬については2023年4月1日から先行導入が開始されている[18]。「日本の競馬の競走体系#地方競馬」も参照

なお、中央競馬における初出走馬にはゲート試験が課せられているが[19]、地方競馬ではそれに加えて基準タイム以上で模擬競走を走破する能力試験[注 3]が行われる[24]ほか、転入馬や長期休養明けの競走馬には同様の調教試験が実施される[25]
調教師・騎手・馬主田中道夫と同じ勝負服を受け継いだ田中学騎手

調教師騎手など競馬関係者の免許は地方競馬全国協会より付与され[12]、免許試験も地方競馬全国協会が行う[26]。騎手や調教師の養成や研修を行う施設として、栃木県地方競馬教養センターがある(ばんえいの養成は行っていない)[27]。ただし、厩務員JRA競馬学校の卒業が義務づけられている中央競馬と異なり、地方競馬の場合は特別な試験を必要とせず、厩務員を希望する者は各地方競馬の厩舎(調教師)と直接雇用契約を結ぶ[26]。開催執務を担う人材は、各主催者の職員が地方競馬教養センターで研修を受けるなどして業務に就いているほか、主催者の要請に応じて一部は地方競馬全国協会からも派遣されている[27]

騎手は原則として必ずいずれかの競馬場の厩舎に所属することとされている[26]が、南関東公営競馬(浦和・大井・船橋・川崎)と兵庫県競馬組合(園田・姫路)では、所定の要件を満たした騎手に限って特定の厩舎に所属しない「騎手会所属騎手(中央競馬のフリー騎手に相当)」の制度を導入している[28][29]

騎手がレースの際に着用する勝負服は、原則として騎手ごとに固有の服色(騎手服)である[30]が、ホッカイドウ競馬と南関東公営競馬では例外的に馬主固有の服色(馬主服)を着用しての騎乗を認めている場合もある[31]。なお、中央競馬は馬主服が原則のため、地方競馬の騎手が中央競馬で騎乗する場合も馬主服を着用する。また、地方競馬の競走馬が中央競馬で行われる交流競走(後述)に出走する際、馬主が日本中央競馬会に登録されていない場合は「交流服」と呼ばれる専用の服が日本中央競馬会より貸与される[32]

騎手は原則として所属する競馬場(地区)内のみでの騎乗となるが、2000年代以降は他地区の地方競馬で期間限定騎乗を行ったり、重賞競走でスポット騎乗を行うなど、活躍の場が広がりつつある[33]吉原寛人(金沢)は各地の地方競馬で重賞を勝つなど活躍し、2024年には史上初となるばんえいを除く地方競馬全14場での重賞制覇を達成した[34][35]。このほか、2007年に韓国競馬へ長期遠征を行った倉兼育康[注 4]を先駆者として、海外競馬への遠征を行う騎手も現れるようになった。また、多くの女性騎手が各地の地方競馬で活躍していることも特徴となっている[26]

馬主の審査・登録も地方競馬全国協会が日本中央競馬会とは別に行っており[12]、必要とされる所得額は個人馬主の場合で500万円以上となっている[注 5][38]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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