地下茎
[Wikipedia|▼Menu]

地下茎(ちかけい、: underground stem, subterranean stem)とは、通常の状態として地下にあるのことであり、地下に適応した性質をもつ[1] (下図1)。これに対して、地表より上に伸びる茎は、地上茎 (aerial stem, epigeal stem, terrestrial stem) とよばれる[2]。両者の中間の性質を持つものとしては匍匐茎があり、地表面もしくはその直下で横方向へ伸びる。

地表直下にあるものから地下深くを伸びるものまであり、ハスのように水底下の地中に位置するものもある (レンコン)。地下茎はその形態や構造に応じて、根茎球茎塊茎鱗茎に区分される。

地下茎は地中にある点でと類似するが、ふつう (鱗片葉など) を付けること (しばしばその跡が残る)、根冠根毛がないことなどにより区別できる[1]。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}1a. ニセシラゲガヤ (イネ科) の地下茎 (根茎)1b. ナンキョウ (ショウガ科) の地下茎 (根茎)1c. クロッカス (アヤメ科) の地下茎 (球茎)

と同様に、地下茎は植物体を土壌に固着させる役割を担い、また地下茎からはふつう根 (不定根) が生じる。さらに地下茎は養分を貯蔵し、生育不適期 (冬など) の耐久構造となりその後に新たな地上部を生じたり、母体から切り離されて新たな個体となる (栄養繁殖) ことに用いられるものも多い。

地下茎の中には、ジャガイモタマネギニンニクサトイモウコンなど食用や薬用に用いられる例がある。
さまざまな地下茎

地下茎とは地下にあるの総称であり、異なる形態・機能をもつさまざまなタイプに類別される[1][3]。ただしこれらの区分は便宜的で必ずしも明瞭ではなく、球茎を塊茎に含めることもある[4]。また地下茎と根茎を同義とすることもある[5]
根茎

下記の球茎塊茎鱗茎のような特殊化が見られない地下茎は、根茎 (こんけい; rhizome, root stock) と総称される[1][4] (下図2)。スギナ (トクサ亜綱)、ワラビ (ウラボシ亜綱)、ドクダミ (ドクダミ科)、ギボウシ (キジカクシ科)、ススキ (イネ科)、タケニグサ (ケシ科)、ワサビ (アブラナ科)、スイバ (タデ科)、シシウド (セリ科) など根茎をもつ植物は、根茎植物 (rhizomatous plants) とよばれる[1]。またノキシノブ (ウラボシ亜綱) のような着生植物に見られる基物 (樹幹など) 上を這う茎は、地中にはないが、慣習的にふつう根茎とよばれる[1][3]。根茎は位置や伸長方向などによって以下のように類別されることがある。

地中を水平方向に伸びる根茎を横走根茎 (horizontal rhizome) という[1] (下図2a)。特に節間が長い横走根茎は匍匐根茎 (creeping rhizome, stoloniform rhizome) ともよばれる[1][4]。このように水平に伸びる根茎は、特に地表面直下にある場合は地表を這う匍匐茎 (creeping stem, repent stem) との区別が不明瞭なこともある[4]。一方、地中を垂直方向に伸びる根茎を直立根茎 (vertical rhizome) という[1] (下図2d)。2a. マダケ (イネ科) の根茎: 節から根が生じている。2b. ウコン (ショウガ科) の根茎2c. ハス (ハス科) の根茎 (レンコン)2d. ワサビ (アブラナ科) の根茎2e. ミズタマソウ属 (アカバナ科) の根茎

また上記の根茎のタイプのうち、いずれか1つだけをもつ根茎は単一根茎 (simple rhizome) とよばれる[1]。一方、2つ以上のタイプの根茎 (例:匍匐根茎と直立根茎)、または根茎と共に塊茎のような特殊な地下茎 (下記参照) をもつものは複合根茎 (compound rhizome) とよばれる[1]

根茎のうち、最初から地中にあるものを一次根茎 (primary rhizome) という[1]。一方、地上にあったものが地中に移行して根茎となったものを二次根茎 (secondary rhizome) という[1]。普通葉や花茎の名残があるものは地上茎であったことを示しており、二次根茎であることが分かる。二次根茎は、ショウジョウバカマ (シュロソウ科) やカラハナソウ (アサ科) などに見られる[1]

節にむかごを形成する根茎は、珊瑚状地下茎 (coral-shaped stem) とよばれ、スギナ (トクサ綱) などに見られる[1]
球茎

地上茎の基部に形成され、ほぼ球形に肥大した地下茎は球茎 (きゅうけい; corm) とよばれる[1][4][6][7] (下図3)。芽を1個だけ生じるものとする定義や[8]、薄皮で包まれたものとする定義もあり[9]、また塊茎と区分しないこともある[4][8]。複数の節・節間が肥大したものであり、環状の節・節間が見られる。サトイモテンナンショウ属 (サトイモ科)、クワイ (オモダカ科)、クロッカス (アヤメ科)、シラン (ラン科)、エゾエンゴサク (ケシ科)、イシモチソウ (モウセンゴケ科) などに見られる[1][6][10]コールラビ (アブラナ科) の可食部も球茎とよばれることがあるが[11]、これは地上茎に形成されたものである。3a. サトイモ (サトイモ科) の球茎3b. コンニャク (サトイモ科) の球茎3c. クワイ (オモダカ科) の球茎3d. クロッカス (アヤメ科) の球茎3e. Romulea (アヤメ科) の球茎3f. クロコスミア (アヤメ科) の球茎の断面

球茎に類似した用語として球根があるが、これは植物形態学における専門用語ではない[12]。地下茎やに養分が貯蔵されて肥大化し、休眠能をもつ構造の総称である。園芸などにおいては、クロッカスグラジオラスフリージア (アヤメ科) などの球茎、アネモネ (キンポウゲ科)、ベゴニア (シュウカイドウ科)、シクラメン (サクラソウ科) などの塊茎、チューリップ (ユリ科)、スイセン (ヒガンバナ科)、ヒヤシンス (キジカクシ科) などの鱗茎、カンナ (カンナ科) などの根茎、ダリア (キク科) などの塊根を球根とよぶ[10]
塊茎

不定形に肥大した地下茎は塊茎 (かいけい; tuber, stem tuber) とよばれる[1][4][13][14] (下図4)。根茎に側生または先端に形成され、ふつう複数の芽をもつ。よく知られた例としてジャガイモ (ナス科) があり、他にもヤマノイモ[11][注釈 1] (ヤマノイモ科)、エゾシロネ (シソ科)、キクイモ (キク科) などがある。くびれて数珠状になった塊茎は、特に念珠茎 (ringed stem) とよばれ、チョロギ (シソ科) などに見られる[1] (下図4e)。4a. ヤム (ヤマノイモ科) の塊茎4b. オカ (カタバミ科) の塊茎4c. ジャガイモ (ナス科) の塊茎4d. キクイモ (キク科) の塊茎4e. チョロギ (シソ科) の念珠茎
鱗茎

地下茎を中軸とし、周囲に肉質の葉 (鱗茎葉; bulb leaf) が多数密生しているものは鱗茎 (りんけい; bulb) とよばれる[1][4][17] (下図5)。鱗茎の主体は葉 (鱗茎葉) であり、茎ではない。身近な例としてタマネギ (ヒガンバナ科) があり、他にニンニク (ヒガンバナ科)、ヒヤシンス (キジカクシ科)、ユリ属、チューリップ (ユリ科) などに見られる[1][4][17]。1個体に、主鱗茎の他に複数の小型の鱗茎が形成される場合、小型のものは小鱗茎とよばれる[1][17]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:61 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef