地上権(ちじょうけん)とは、工作物または竹木を所有するためなどの目的で他人の土地を使用する権利。日本の民法では第265条以下に規定が設けられている。ウィキブックスに第2編 物権 (コンメンタール民法)#第4章 地上権(第265条?第269条の2)関連の解説書・教科書があります。 地上権とは他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利である(第265条
日本の民法は、以下で条数のみ記載する。
概説
地上権の意義
土地を直接的に支配できる強力な権利を有し、権利所有者は、地主の承諾なく、地上権を登記し、第三者に譲渡し、転貸することができる。また、地主には法的に登記の協力義務があり、借地権者の希望により地上権の登記に応じる義務がある[1] [2]。
日本法では土地と建物とは別々の不動産であるとの法制をとるが、欧米では「地上権は土地に従う」の法原則から、基本的に建物は土地に附合する関係にあるとみられ、日本のような借地は例外的とされる[3]。
なお、日常において「地上権」という語が用いられる場合、民法上の地上権(265条)ではなく、賃貸借に基づく土地使用権や地上物の採取権を指して用いられることもあり、注意を要する[4]。 明治33年(1900年)の地上権ニ関スル法律(明治33年3月27日法律第72号)は「本法施行前他人ノ土地ニ於テ工作物又ハ竹木ヲ所有スル為其ノ土地ヲ使用スル者ハ地上権者ト推定ス」(同法第1条)とし、ただし、「第一条ノ地上権者ハ本法施行ノ日ヨリ一箇年内ニ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」と規定していた(同法第2条第1項)。ただ、この法律に基づく登記件数は実際には少なかったといわれる[5]。 地上権と同様に土地利用権として用いられる権利に「土地賃借権」がある。建物所有を目的とする地上権及び土地賃借権は「借地権」として借地借家法の適用を受ける(借地借家法2条1号)。その結果、土地賃借権についても借地借家法の適用による対抗力の具備、長期の存続期間、更新事由の法定などにより限りなく物権に近づいており(賃借権の物権化)[6]、譲渡性などの点を除いて地上権と土地賃貸借との違いは大きなものではなくなっている[3]。とはいえ現実に用いられているほとんどの土地利用権は地上権ではなく土地賃借権である[6]。地上権か賃借権か不明の場合は当事者間の意思解釈、地方の慣習、借地の目的など一切の事情を考慮し判断すべきとされるが、今日、約定による地上権設定が例外的であることから、原則として賃借権と推定すべきとされる[7][8]。 地上権の目的は工作物や竹木の所有である(第265条 ただ、あくまでも地上権は土地そのものを目的とするものであり、使用目的の限定の仕方、あるいは工作物や竹木が現に存在するか否かは地上権の存立に影響しない[9][12][13]。 通常、地上権は地上権設定行為により取得される(設定行為による地上権を約定地上権と呼ぶ[7])。地上権設定行為は契約または遺言による[10][5]。このうち地上権設定契約は諾成・不要式の物権契約である[7]。 地上権は譲渡契約によっても取得しうる。後述の地上権者の権利(地上権の処分)を参照。 法定地上権は同一の所有者に属する土地・建物について抵当権の実行または強制競売が行われた結果土地と建物の所有者が異なることとなったとき、法律の規定により発生する地上権である(第388条 地上権も取得時効により取得しうる(第163条 地上権は相続によっても取得される[15]。 地上権の対抗要件は登記である(不動産登記法78条、借地借家法10条、罹災都市借地借家臨時処理法10条)[16]。「地上権設定登記」も参照
地上権ニ関スル法律
土地賃借権との差異
地上権の目的
地上権の取得
法律行為による取得
地上権設定行為
地上権譲渡契約
その他の原因による取得
法定地上権詳細は「法定地上権」を参照
取得時効
相続
地上権の対抗要件
地上権の効力
地上権者の権利
土地使用権地上権者は目的の範囲内で土地を使用する権利を有する(第265条)。地上権者間あるいは地上権者と土地所有者との関係については原則として相隣関係の規定が準用される(第267条
物権的請求権地上権は物権(本権)であるので物権的請求権が認められる[17][18]。
地上権の処分
土地賃借権とは異なり、地上権者は所有権者の承諾なくして自由に土地を第三者に譲渡・賃貸しうる(賃貸につき大判明36・12・23民録9輯1472頁)[19][20]。