地を穿つもの
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エイボンの書
The Book of Eibon
作者
クラーク・アシュトン・スミスリン・カーターほか
言語英語
ジャンルクトゥルフ神話
刊本情報
出版元新紀元社
出版年月日2008/07/08
日本語訳
訳者坂本雅之、中山てい子、立花圭一
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『エイボンの書』(エイボンのしょ、原題:: The Book of Eibon)は、クトゥルフ神話の作品集である。架空の文献「エイボンの書」を再現したという体裁をとる。

クトゥルフ神話ファンであった作家リン・カーターは、フォロワー作品を多数執筆し、また作中に登場する架空の魔道書「ネクロノミコン」や「エイボンの書」を自ら創造することを試みた。だがカーターは1988年に死没し、友人のロバート・M・プライスに引き継がれた。プライスはまた、友人のローレンス・J・コーンフォードも独力で『エイボンの書』を完成させようと企画していたことを知り、両者は協力することにした。

かくして本書は実現し、アメリカのケイオシアムから2001年に刊行され、日本では2008年に新紀元社から刊行された。

翻訳は、第一の書が中山てい子、第二の書が坂本雅之と立花圭一、他が坂本雅之[1]
基礎知識

本記事では、「エイボンの書」と『エイボンの書』を区別して記載する。
「エイボンの書」

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(以下HPL)の「ネクロノミコン」に続く、クトゥルフ神話第二の文献。古代ハイパーボリアの魔道士エイボンが記したとされる。『白蛆の襲来』(本書1-9)は、「エイボンの書」の一部。詳細は「エイボンの書」を参照
『エイボンの書』

本書のこと。「エイボンの書」を再現させた実書籍。複数の執筆者たちが「エイボンの書」の各部分を翻訳したものを一冊に集めた、という体裁をとっている。

主要執筆者について記す。

クラーク・アシュトン・スミス - 1963年没。「エイボンの書」、ハイパーボリアツァトゥグァなどの創造者。本書への収録作品数は2(1-9『白蛆の襲来』、2-10『土星への扉』)。

リン・カーター - 1988年没。本書への収録作品数は11(序2、1章4、2章2、3章1、補遺2)。

ロバート・M・プライス - 編纂担当。米国の神学者・作家。カーターの遺著管理を務める。本書への収録作品数は8(序3、1章1、2章2、4章1、補遺1)。作品は全て本書用の書き下ろし[2]

ローレンス・J・コーンフォード - 米国のファンタジー作家。本書への収録作品数は6(1章3、2章3)。作品は全て本書用の書き下ろし[3]

合作はカウント外とする。スミス&カーター作が3。
作品リスト

序(4):黒檀の書 / 『エイボンの書』の歴史と年表 / ヴァラードのサイロンによるエイボンの生涯 / エイボンは語る

第一の書『古の魔術師たちの物語』(13):二相の塔 / スリシック・ハイの災難 / モーロックの巻物 /
深淵への降下 / 羊皮紙の中の秘密 / 下から見た顔 / アボルミスのスフィンクス / 万物溶解液 / 白蛆の襲来 / 極地からの光 / 窖に通じる階段 / 星から来て饗宴に列するもの / 緑の崩壊

第二の書『ムー・トゥーランのエイボンの逸話』(10):最も忌まわしきもの / ウトレッソル / 『夜の書』への注釈 / 地を穿つもの / ナスの谷にて / シャッガイ / ウスノールの亡霊 / 霊廟の落とし子 / 指輪の魔物 / 土星への扉

第三の書『暗黒の知識のパピルス』(1)

第四の書『沈黙の詩篇』(22)

第五の書『エイボンの儀式』(24)

補遺(4):炎の侍祭 / 月の文書庫より / アトランティスの夢魔 / エイボン書簡

1・2章は時系列順。1-5までは人類以前の種族の歴史で、1-6以降はハイパーボリア人の物語、2章はエイボン主人公となる。
0-1:黒檀の書

『黒檀の書 『エイボンの書』序論』(原題:: The Ebony Book: Introduction to The Book of Eibon)。ロバート・M・プライスによる編集序文。
0-2:『エイボンの書』の歴史と年表

『エイボンの書』の歴史と年表(原題:: History and Chronology of the Book of Eibon)。作者はリン・カーター。1884年に『チャーネル・ハウス・チャップブック(死体安置所行商本)』として出版された。HPLの『ネクロノミコンの歴史』のオマージュ。

エイボンの弟子、ヴァラードのサイロンがまとめた。13世紀末、ヴィヨンヌのガスパール・ド・ノール(スミスの『イルゥルニュ城の巨像』の登場人物)が、ギリシャ語版からノルマンフランス語に翻訳し「Livre d'Eibon」という題名をつけた。
0-3:ヴァラードのサイロンによるエイボンの生涯

『ヴァラードのサイロンによるエイボンの生涯』(原題:: The Life of Eibon)。作者はリン・カーター。1888年に『チャーネル・ハウス・チャップブック(死体安置所行商本)』として出版された。

スミスが創造した魔道士エイボンの人生を、カーターが補ったもの。エイボンの弟子サイロンを語り手とした、魔術師エイボンの聖人伝。文献「エイボンの書」の一部という体裁をとって執筆されている。プライスは、聖書の例を引き合いに出して、「エイボンの死後に、弟子サイロンが、自分こそ正当後継者であると主張した」との旨を解説している。[4]
0-3あらすじ

白き巫女の予言から一世紀後、悪漢クニガティン・ザウムの事件により首都がコモリオムからウズルダオロムに移る(アタマウスの遺言)。同年、イックアの街にエイボンが生誕する。

イホウンデーの神官たちはエイボンの父を迫害して死に至らしめ、家と親を失った10歳のエイボンは、ムー・トゥーランに居住する魔術師ザイラックに引き取られて弟子となる。エイボンが23歳のとき、ザイラックが死に(最も忌まわしきもの)、エイボンは旅に出て、邪神ツァトゥグァに帰依する。旅を終えたエイボンは、亡き師の塔へと戻り、己の住まいとする。エイボンは魔術師として大成し、名声が高まる。エイボンは多くの弟子をとっていたが、65歳のときにサイロンを弟子にとる。サイロンは20年間修行した後に独立する。

王が代替わりしたことをきっかけに、イホウンデーの神官が大陸中に力を振るうようになる。中でも大神官モルギはエイボンを妬んで敵視しており、悪評を広めて評判を落とそうとする。エイボンが132歳のとき、サイロンの元を訪れ、書物を託す。ほどなくしてエイボンは失踪し、世間ではエイボンがモルギを道連れにして異世界に去ったと噂される(魔道士エイボン)。

サイロンは師から預かった書物を研究し、また魔術でエイボンの末路を知り記録に残す。「エイボンの書」は代々弟子へと受け継がれていき、エイボンの失踪から100年目には、大氷河が襲来し、ムー・トゥーランの地は氷の下に沈む。
0-3登場人物
人物


ザイラック - 魔術師。ホルマゴールの弟子であり、エイボンの師。享年140歳。

ミラーブ - イックァ公子に仕える文書管理官。エイボンの父。

エイボン - 「エイボンの書」開祖。サイロンの師。

ヴァラードのサイロン - 1-6章の語り手。ヴァラードの民であり、猫の女神イクセエラを信仰する。エイボンを尊敬するが、ツァトゥグァには否定的。己こそエイボンの一番弟子であると自負する。

モルギ - イホウンデーの大神官。エイボンを異端審問にかける。最終的にはエイボンと共に消息を絶つ。

ムナルディスのアラバック - 三祖。サイロンの弟子。1-6章を受け継ぐ。

カルヌーラのハラード - 四祖。アラバックの弟子。7章を書き加える。

神格


イホウンデー - ヘラジカの女神。

ツァトゥグァ - ヴーアミタドレス山の地下、ンカイ[注 1]に棲む邪神。エイボンを気に入り、知識を伝授する。

イクセエラ - 猫の女神。ヴァラードの民が信仰する。

クァルク - 風変わりな魚のような小神。イックァの街で信仰されていたが、イホウンデーの教団により潰される。

カスルアレ - 妖精。オッゴン=ガイで信仰されていたが、イホウンデーの教団により潰される。


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