数学における圭(けい)、分配亜群(ぶんぱいあぐん、дистрибутивныи Группоид; distributive groupoid, quandle; カンドル)および残滓(ざんし、rack; ラック)は、結び目の局所変形であるライデマイスター移動を図式操作と考えたときに抽出される公理と類似の公理を満たす二項演算を備えた集合である。
主に結び目理論を背景として研究されるものであるが、抽象代数学的な構造としては、自身の右からの作用を備えた代数系であると見なすことができる。 1942年、満洲国の高崎光久
歴史
これらの構造が再び表面化するのは1980年代になってからのことで、1982年にデーヴィド・ジョイスの論文で術語 quandle が用いられ、同じく1982年のセルゲイ・ヴラジーミロヴィチ・マトヴェーエフの論文では дистрибутивные группоиды(ラテン文字転写: distributivnye gruppoidy, 英: distributive groupoids)の名称で、そして1986年のエグベルト・ブリースコルンの会議録では automorphic set と呼称されているが同じものが取り扱われている。 圭は、a, b, c が集合 K から任意に選んだ元である限り常に なる条件を全て満たす二項演算 ⋆ {\displaystyle \star } つきの代数系 K として定義される。 ここでの演算 " ⋆ {\displaystyle \star } " はここに挙げた3条件のみを満足することのみを要請され、この要請を満たす演算を持つ集合を一般に圭と呼ぶのである。記法としては代数学における乗法的な演算記法の約束に従っているけれども、結合律を満足するなどの通常の「乗法」に期待される性質が、この代数系を考える際には(あってもなくても)問題にされないという意味で、圭演算 ⋆ {\displaystyle \star } は通常の乗法を意味していない。 なお " a ⋆ b {\displaystyle a\star b} " という式を、b が a に右から作用しているものと考えると便利である。そのように見るとき、2番目の条件は圭 K の任意の元による K 自身への右作用が二度行うと恒等変換となる、すなわち対合を与えることを意味していることになる。また、3番目の条件は右作用が ⋆ {\displaystyle \star } に関して(マグマとしての)準同型性を示すことを意味しており、対合は全単射となるから、特に K はこの作用を通して K 上の対合的自己同型 (involutive automorphism) からなる特定の集合と同一視されることがわかる。 カンドル Q は、任意の元 a, b, c に対して
圭
反射律: a ⋆ a = a . {\displaystyle a\star a=a.}
対合性: ( a ⋆ b ) ⋆ b = a . {\displaystyle (a\star b)\star b=a.}
右分配律: ( a ⋆ b ) ⋆ c = ( a ⋆ c ) ⋆ ( b ⋆ c ) . {\displaystyle (a\star b)\star c=(a\star c)\star (b\star c).}
カンドル
反射律: a ⋆ a = a . {\displaystyle a\star a=a.}
右可逆性: ∃ ! x ∈ Q : x ⋆ a = b . {\displaystyle \exists !x\in \mathrm {Q} \colon x\star a=b.}