土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
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土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律

日本の法令
通称・略称土砂災害防止法
法令番号平成12年5月8日法律第57号
種類行政手続法
効力現行法
成立2000年4月27日
公布2000年5月8日
施行2001年4月1日
主な内容土砂災害の防止について
関連法令災害対策基本法土地収用法建築基準法など
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土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(どしゃさいがいけいかいくいきとうにおけるどしゃさいがいぼうしたいさくのすいしんにかんするほうりつ)は、がけ崩れ土石流地すべりなどの土砂災害の発生するおそれがある区域を指定し、警戒避難態勢の整備や開発行為の制限など土砂災害の防止のための対策の推進を図るための日本法律である。通称「土砂災害防止法」(どしゃさいがいぼうしほう)。

特に定めない限り、本項において単に「法第○条」と記したものは、本法律の各条文を指すものとする。
概要

日本における土砂災害対策を定めた法律は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)・砂防法地すべり等防止法などがあるが、これらはいずれも行政により土砂災害防止施設(がけ崩れ防止用の擁壁砂防堰堤など)を設置する際の根拠法として定められたものである。これに対し、本法律は、人家に影響を及ぼすおそれのある土砂災害の発生する可能性のある区域を、土砂災害防止施設の有無にかかわらず全て明らかにすることを目的としている。所管官庁である国土交通省では、施設(ハードウエア)の整備を前提とする「ハード対策」に対して、本法律に基づく情報伝達の整備や広報活動などの施策をまとめて「ソフト対策」と読んでいる[1]

本法律に基づき、人家に影響を及ぼすおそれのある区域を現地調査し、行政は「土砂災害警戒区域」(通称「イエローゾーン」[2]、法第6条)と「土砂災害特別警戒区域」(通称「レッドゾーン」[2]、法第8条)を指定する。

イエローゾーンでは行政が当該区域における警戒避難体制の整備を図ることを義務づけられている(法第7条第3項)。

レッドゾーンでは、イエローゾーン同様の警戒避難体制の整備を行うとともに、都市計画法に基づく特定開発行為(住宅宅地分譲、社会福祉施設等の建設)に許可を要すること(法第9条)や、建築基準法に基づく建築確認の際に建物構造上で建築基準法第20条に基づく土砂災害対策が施されているかどうかの確認をおこなう(法第23条)などの制限事項を定めている。
構成

第一章 総則(第1条・第2条)

第二章 土砂災害防止対策基本指針等(第3条―第5条)

第三章 土砂災害警戒区域(第6条・第7条)

第四章 土砂災害特別警戒区域(第8条―第25条)

第五章 雑則(第26条―第28条)

第六章 罰則(第29条―第33条)

附則

指定の流れと基準
指定の流れ

土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定は都道府県が行う。指定のために行われる地形、地質、降水、土地利用などの状況調査を「基礎調査」という。都道府県は、国土交通省が定める土砂災害防止対策基本指針(法第3条)に基づき、概ね5年ごとに基礎調査を行う(法第4条)。この基礎調査を基に警戒区域の選定が行われる。なお、基礎調査の結果は終了後、関係市町村に対して遅滞なく通知されることとなっている(法第4条第2項、施行規則第1条)。

指定を行おうとする際、都道府県は予め、関係市町村長の意見を聴かなければならない(法第6条第3項)。住民の同意を要するという規定はないが、実情として住民への説明を行う自治体が多く、住民の理解を得るまでに時間を要することが少なくないという問題がある[3]。基礎調査の終了から指定までには約半年から1年程度かかるとされているが、1年を超える例も少なくない[4]。このように、基礎調査が終了しても指定に至らず、調査結果が長い期間公表されない場合がある[3]。これを受けて2014年の改正では、基礎調査終了の段階で住民に対しても公表することが義務付けられた[5][6]

都道府県が指定を行うと、その旨は都道府県広報に掲載され、関係市町村には公示図書(縮尺50,000分の1の土砂災害特別警戒区域位置図および、縮尺2,500分の1の土砂災害特別警戒区域区域図)が送付される(法第6条、施行規則第6・7条)。
土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定基準指定の例(渓流沿いに住宅が立地する広島県広島市安佐北区可部東付近、2014年時点)。一定条件の想定に基づき、警戒区域(黄色)および特別警戒区域(赤色)が指定される。この図は2014年時点のもので、同年の土砂災害後の見直しで大幅に変更されている。

法施行令第2条および同第3条に規定されている。
土砂災害警戒区域  
急傾斜地の崩壊

傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域

急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域

急傾斜地の下端から急傾斜地高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
土石流

土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
地滑り

地滑り区域(地滑りしている区域または地滑りするおそれのある区域)

地滑り区域下端から、地滑り地塊の長さに相当する距離(250mを超える場合は250m)の範囲内の区域

土砂災害特別警戒区域  
急傾斜の崩壊に伴う土石等の移動・堆積により建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石等の移動に対して住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく耐えることのできる力を上回る区域(ただし、地滑りについては、地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等により力が建築物に作用した時から30分間が経過した時において建築物に作用する力の大きさとし、地滑り区域の下端から最大で60m範囲内の区域)
類義語

類義語に「土砂災害危険箇所」「山地災害危険地区」がある。

土砂災害危険箇所は、砂防施設の設置などのハード対策を主目的に、国土交通省(旧建設省)の指示により都道府県が調査公表するもので、土砂災害防止法の制定以前から行われており開発規制等はない。ただし、土砂災害危険個所が土砂災害警戒区域に重複して指定されることはあり、この場合は土砂災害防止法による規制がある。「土石流危険渓流」、「地すべり危険箇所」「急傾斜地崩壊危険箇所」の3種類がある[7]

山地災害危険地区は、治山事業などのハード対策を主目的に、農林水産省(旧林野庁)の指示により都道府県が調査公表するもので、こちらも土砂災害防止法の制定以前から行われており開発規制等はない。「崩壊土砂流出危険地区」、「地すべり危険地区」、「山腹崩壊危険地区」の3種類がある[8]

また、「地すべり防止区域」は地すべり等防止法に基づいて指定される地すべりを起こす可能性のある一定規模以上の斜面で、掘削造成などに制限がある。「急傾斜地崩壊危険区域」は急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づいて指定されるがけ崩れを起こす可能性のある一定規模以上の斜面で、こちらも掘削造成などに制限がある。
警戒区域の指定状況

指定数の推移[9][10]時点(レッドゾーン)
特別警戒区域の数(イエローゾーン)
警戒区域の数
2003年3月末813
2006年3月末6,98314,296
2011年3月末103,268219,903
2016年3月末282,516438,321
2020年12月末517,243640,810

2020年12月末時点では、警戒区域が640,810箇所、うち特別警戒区域が517,243箇所(約81%)となった。都道府県別に見ると警戒区域が多い順に広島県(47,695)、島根県(32,273)、長崎県(31,362)、長野県(27,048)、山口県(25,606)、大分県(23,596)、鹿児島県(21,952)、和歌山県(21,753)、兵庫県(21,252)の9県で2万箇所を超えている一方、最も少ない沖縄県は1,183箇所である。


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