土田世紀
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土田 世紀
(つちだ せいき)
生誕 (1969-03-21)
1969年3月21日
日本秋田県平鹿郡大森町
死没 (2012-04-24) 2012年4月24日(43歳没)
日本滋賀県栗東市
職業漫画家
ジャンル青年漫画
代表作『同じ月を見ている』、『編集王
受賞ちばてつや賞
四季賞
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土田 世紀(つちだ せいき、1969年3月21日 - 2012年4月24日)は、日本漫画家
人物

秋田県平鹿郡大森町(現在の横手市大森町)出身。男性。秋田市立秋田南中学校秋田県立新屋高等学校卒業。

幼い頃はそれほど漫画を読んでいたわけではなく、姉や友人が買ったものを読ませてもらう程度で、数を読むようになったのも漫画家としてデビューした後だった[1]。絵に関しても近所に住んでいた人間から基礎を教わった程度だったが[2]、絵を描くことはむしろ得意な方であり、科学技術庁長官賞を受賞したこともあったという[1]。漫画らしきものを描き始めたのは高校生になってからで、その頃からクラスの仲間に見せてまわっていた。また高校時代の土田には自分の描いた不良たちのような一面もあり[3]、「気合いの入った」髪型にするだけでなく、飲酒運転や無免許運転で捕まることもしばしばだった[4]。高校2年生の時に、ニューヨークを舞台にした青春ストーリー[5]を『漫画アクション』の新人賞に応募し、奨励賞を受賞した[1]

1986年、『残暑』にて『モーニングちばてつや賞一般部門・入選を受賞、次いで『未成年』(第3話として収録)にて『月刊アフタヌーン四季賞を受賞した。『未成年』の舞台は東北であり(奨励賞を獲ったニューヨークと同じく)都市に対置される地方人の「泥臭さ」をテーマとして意識するようになる。実際に土田はインタビューで「僕が何を描いても泥臭くなっちゃうと思うんですよ。特に舞台がどこっていうのを意識しているわけじゃないんだけど」と語っている[5]

主な作品に『俺節』『編集王』『ギラギラ』『同じ月を見ている』など。ヒットが続き、1990年代半ばには一週間に2日しか家に帰れない日々が続いた[6]。『同じ月を見ている』は、平成11年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。2005年には窪塚洋介主演で映画化もされた。2000年に『編集王』がフジテレビでドラマ化。2008年に『ギラギラ』がテレビ朝日でドラマ化。2017年に「俺節」が舞台化。

2012年4月24日滋賀県栗東市の自宅で死去[7][8]。43歳没。死因は肝硬変[7]。漫画家の西原理恵子によれば、20代の頃から酒が入ってないと他人に会えないようなアルコール使用障害気味のタイプだったという[9]

結婚はしていたが、土田の希望により妻の存在は明らかにしていなかった。籍を入れない事実婚であったため、妻は葬儀では喪主を務めなかった。

週刊漫画ゴラク』連載中の『かぞく』が遺作となった。亡くなる直前まで『夜回り先生』の最新作を執筆中だった[10]

母校である秋田県立新屋高等学校には、土田のサイン色紙が展示されている。
作風

土田自身が「泥臭い」と自嘲するように、その作風はしばしば時代錯誤的であったり「反トレンド」だとされている[11][12]。たしかに世間や大勢に反発する登場人物たちは、涙や怒りを我慢しないが[13]、それは単なる一手法ではなく、「人は本気で泣いたり笑ったり出来るし、そうしたいと思っている」という土田の哲学によるものである[12]。そしてストーリーが時代に逆行するような泥臭い展開をみせても、読者はそこに溢れる感情の流れに快いカタルシスを感じてしまうのである[13]。また、この横溢する感情は作画によっても表現されている。例えば夏目房之介は、土田の描く服のシワや顔の陰影が、「非常にしつこい」上、「演歌のような」重さがあることを指摘し、それが主人公の感情やコマの流れと連動して、巧みに(鉛筆によるデッサン画からほとんど白っぽい画面まで)軽重が変わりカタルシスにつながると述べている[14]。夏目によれば、このように絵と感情とを同期させて凝縮し、読者を「掴む」ことこそ土田の真骨頂である[15]

少年時代に特に漫画を読んでたわけではなく、漫画家の友人も特にいない土田が好む作家は宮沢賢治であり[16]、しばしば作中にも登場している。『同じ月を見ている』の主人公の水代元は宮沢賢治がモデルであり、作品の中にも、自分を勘定に入れない生き方(『雨ニモマケズ』)や、この身を何度焼かれたって構わない(『銀河鉄道の夜』)、世界全体が幸せにならない内は、個人の幸せはありえない等、宮沢賢治の詩や言葉が引用されている。直接の引用だけでなく、「自己犠牲」といったテーマにも共通するところが見い出せる[17]

浜田省吾の大ファンとしても知られ、『俺節』に浜田をモデルとしたキャラクター「浜田山翔」が登場する他、1998年?1999年にはファンクラブ会報の表紙漫画を担当していた。

また新沼謙治の大ファンでもあり、演歌の世界を描いた出世作『俺節』の作品中には新沼の「おもいで岬」「嫁に来ないか」「ヘッドライト」「北の故郷」「情け川」「津軽恋女」「さよなら橋」「渋谷ものがたり」などが登場するほか、主人公・コージのキャラクターも新沼を思わせるものとなっている。また土田は、2010年刊行された『定本 俺節』上・中巻(太田出版)掲載のメールインタビューの中で、CD化して欲しい新沼の作品として、1976年発売のアルバム『望郷詩集』の収録曲「春陽炎」と、1977年発売のライブ盤『新沼謙治みちのく帰行』を挙げていた。
『編集王』詳細は「編集王」を参照

代表作の『編集王』は、情熱的な新人編集者と、データ主義の編集長との対立を通じながら漫画への愛が語られていく作品。漫画の世界の裏方ともいえる出版社や編集者をメインにすえ、アンケート至上主義や、有害コミック論争などの内幕的なテーマも正面から描いている。主人公のモデルともなった編集者の八巻和弘が原案をつとめており[18]、その影響は大きいとされている[19]。エピソードやキャラクターは八巻が実際に経験した話を土田が膨らませる形がとられた[2]。そのためキャラクターなどに特定のモデルはいないという[20]

『編集王』はそのテーマゆえに話題を呼んだが、様々な事情があり、中途半端な状態で終了せざるを得なかった[21]。〔土田は〕ものすごい才能を持った、出来の悪い男。そう、ある意味彼こそがマンボ好塚[注 1]なんですよ ? 八巻和弘が土田を評して[22]
作品リスト

以下のリストは『土田世紀 43年、18,000枚の生涯』掲載の『土田世紀作品一覧(最新研究版)』に基づく[23]

やりきれない気持 - 未発表(『土田世紀 43年、18,000枚の生涯』(単行本、2014年)に収録) : 原稿裏に「16歳高校二年」の書き込みあり

未成年 - 『モーニング』(1986年)→『月刊アフタヌーン』(1987年)→『アフタヌーンシーズン増刊』(1987年 - 1988年) : デビュー作


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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