土壌
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A, B, C はヴァシーリー・ドクチャーエフが考案した土壌層位であり、A層は表土、B層はレゴリス、C層は腐食岩石(en)、最下層は基盤岩である北アイルランドの氷礫に発達した湛水グライ土壌

土壌(どじょう)とは、地球上の陸地の表面を覆っている鉱物有機物気体液体生物混合物である。一般には(つち)とも呼ばれる[1]。陸地および水深2.5メートル以下の水中の堆積物を指す[2]

地球の土壌は土壌圏を構成し、以下の4つの重要な機能を持って生命を支えている。

植物の生育媒体。

水を蓄え、供給し、浄化する。

地球の大気の組成を変える。

(植物以外を含む)生物の住みかとなる。

これら全ての機能は、土壌を変化させる働きを持っている。

土壌圏は岩石圏水圏大気圏生物圏と接触する[3]。土壌は鉱物と有機物から成る固体の部分と、気体(土壌空気)と水(土壌溶液)を蓄える間隙(空隙)で構成される[4][5][6]。すなわち、土壌は固相、液相、気相の三相システムである[7]

土壌が生成されるためには母材(土壌の元となる材料)、気候地形、生物、時間という5つの因子がある[8]。土壌は侵食による風化など、多くの物理的、化学的、生物的過程によって常に変化している。土壌はとても複雑で強い内部相互作用を持つ生態系である[9]

多くの土壌の仮比重(水がない状態での間隙を含んだ土壌の密度、乾燥密度とも言う)は 1.1 から 1.6 g/cm3 であり、土粒子そのものの密度は 2.6 から 2.7 g/cm3 とずっと大きい[10]。地球上には更新世よりも古い土壌はほとんどなく、新生代よりも古い土壌は全くない[11]。ただし、太古代の土壌が化石土壌として残っていることがある[12]

土壌学はエダフォロジー (edaphology) とペドロジー (pedology) に分かれる。エダフォロジーは土壌が生物に与える影響を研究する[13]。ペドロジーは自然環境における土壌の形成、状態の記述、分類をする[14]。工学的には土壌はレゴリスに含まれる。レゴリスには母岩の上の土壌以外の物質も含まれ、地球以外の天体にも存在する[15]
概要
機能

広義の土壌は、以下の機能を持っている。以下のうち自然機能については、土壌の環境機能と呼ばれている。
自然機能

生物生存空間

自然界の構成要素

地下水の媒体


利用の機能

天然資源の存在

居住地保養地の存在

農業林業用地の存在

その他の経済的・公用的利用地の存在


自然・文化遺産の存在場所

植物生産的見地からみると、土壌は植物培地の一種といえる。ほとんどの農業では土壌を培地とする。

なお、培地に土壌を用いないものを水耕栽培と呼ぶ。養液栽培の場合では、培地としての土壌の種類はさらに細かく、有機質培地を土壌としこれを用いる場合は養液土耕と呼び、無機質培地を用いる場合は養液栽培と呼ばれる。
構成

土壌は、岩石風化して生成した粗粒の無機物一次鉱物)やコロイド状の無機物(粘土鉱物あるいは二次鉱物)、生物の死骸などの粗大有機物、粗大有機物が微生物などの分解者の作用などによって変質して生じる土壌有機物腐植)などを含む。

土壌の固体成分は粗に充填されているため、土壌は多くの間隙を持つ。土壌中の間隙は、土壌溶液と土壌空気によって満たされている。土壌溶液の主成分はであり、この水に水溶性塩基や有機物などが溶解している。土壌空気の主成分は二酸化炭素窒素および水蒸気であり、酸素濃度は大気と比較して低い。土壌の間隙には、多くの土壌微生物土壌動物が生息しており、土壌生物と呼ばれる。
研究の歴史

土壌研究の歴史は、人間が食料と飼料を生産するための差し迫った必要性と密接な関係がある。歴史を通して、文明の繁栄と衰退は土壌の生産能力の関数であったとされる[16]。土壌が農業生産を支える力を「地力」と言い、古代エジプト以来のエジプト社会は、ナイル川洪水によりナイル川デルタなど流域に運ばれた肥沃な土壌を使って農業を行い、食料を得てきた[17]。一方でインダス文明メソポタミア文明マヤ文明アステカ文明などの滅亡は、侵食や塩害といった土壌の荒廃が一因となった[18]

古代ギリシアの歴史家クセノポン(紀元前 450-355 年)は、「地面に生えているどのような雑草であっても、土に混ぜれば糞と同じように土壌を豊かにする。」と書いているため、緑肥のメリットを解説した最初の人であると評価できる[19]
生成

土壌学者のハンス・ジェニーは、1941年に土壌の性質は土壌を供給する地表の地形、気候、動植物相に反映されると提唱し、以下の5つの要素を土壌生成を司る5大要素とした[20]
母材(岩)

気候

有機体

地形

時間

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学問分野については「土壌物理学」をご覧ください。

土壌の物理的性質には、農業のような生態系サービスにとって重要なものから順番に、土性(英語版)、土壌構造(英語版)、仮比重(乾燥密度)、間隙(孔隙・空隙)、コンシステンシー、温度、色そして土壌電気抵抗(英語版) がある[21]。土性はシルト粘土という3種類の土壌鉱物粒子の構成比率によって決まる。酸化鉄炭酸塩二酸化ケイ素腐植土が土粒子を被覆し、土粒子同士を接着することによって、土粒子がより大きな塊となると、ペッド(英語版) すなわち「土壌団粒」という土壌構造を構成する[22]。土壌の仮比重は、土の締固め(英語版) 程度の指標となる[23]。土壌の間隙は粒子と粒子の間の空間であり、空気と水によって構成されている。コンシステンシーは土粒子同士がくっつき合う強度である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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