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圓(えん、げん、韓国語:ウォン(Won)、ドルポルトガル語:パタカ(Pataca)、モンゴル語:トゥグルク(Т?гр?г, Tukhrik))は、東アジアの各国において使用されている通貨単位である。なお「圓」は元来、「まる」を意味する文字で、日本における「」の旧字体である。現在では各国において通貨単位は「円」、「?」、「元」、「?」の文字が使用され、現在でも貨幣面に「圓」を用いているのは繁体字を標準字体とする台湾香港および澳門である。

「圓」の文字は中華人民共和国では「?」(Yuan)と簡略化されるようになった。韓国のウォンハングル:?、ローマ字:Won)は過去には漢字で「圓」と書いたが、一時期に「圜」(ファン、ハングル:?、ローマ字:Hwan)に変えた。その後ウォンに回帰したものの、現在は公式的に漢字の「圓」を廃棄してハングル・漢字交じり文にもハングルで書く。台湾ドル香港ドルおよびマカオ・パタカは現在でも「圓」の文字が使用されている。

ちなみに現代の漢字文化圏という観点から見ると、中華人民共和国(?・元)、台湾()、香港()、澳門()、日本()、韓国(?)、北朝鮮(?)までは、本質的には「圓」という名称を共有しているが、これらに対し、ベトナムの通貨単位はドン(??ng)であり、これは「銅」の漢字音であるため、これのみ表記はもとより語としても「圓」に由来していない。
メキシコドルの流入.mw-parser-output .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .trow>.thumbcaption{text-align:center}}スペインドル(8レアル)、1768年メキシコドル(8レアル)、1894年

中国においては古来から銅銭が通貨として広く用いられてきたが、経済の拡大、あるいは産銅不足から銅銭のみによる取引に限界が生ずるようになった。以後には紙幣や銀(銀地金や銀製品)が通貨の代わりに用いられるようになり、においても銅銭は引続き併行流通したものの、銀錠と呼ばれる秤量貨幣が通貨の主導的な地位を占めるようになった。

18世紀になると絹織物の代価として、スペインおよびその植民地であったメキシコから多量のメキシコドルなどの大型銀貨が流入するようになり、「銀圓」と呼ばれて中国国内でも広く流通した。銀圓は従来の銀錠に対し、メキシコドルが円形の銀貨であったことに由来する[1]。メキシコは漢字で「墨西哥」と表記され、メキシコドルは「墨銀」とも呼ばれた。また当初は南蛮から流入したことを意味する「番銀/蕃銀」や、デザインおよび英(イン)と同じ発音である「鷹」から「鷹洋」の呼称もあった。

日本においてもアメリカ合衆国の開港要求に応じた結果、1859年7月から、日本国内外の金銀比価の違いにより小判が多量に流出すると云う通貨問題が生じ、代わりに多量のメキシコドルが流入した。

ヘラクレスの柱を描いたピラードルとも呼ばれるスペインドルはスペイン王カルロス1世の命により1535年に鋳造が始まり、1821年にはメキシコが独立し1823年からはを描いたメキシコドルが発行された。特にメキシコドルは1903年までに総鋳造量が約35億5000ドルに達し、世界の流通市場を圧倒した[2]。メキシコドルは量目27.07グラム、品位90.3%であり[3]、スペインドルもほぼ同様であった。
圓とドル

ドルの起源はターラーであるとされるが、アメリカの1ドル銀貨はメキシコドルに基づくもので、量目、銀品位もほぼ等しくつくられた。また東アジアにおいてはドルを漢字「圓」で表記したのであり、圓、ドル共に元をたどれば起源を同じくするもので、19世紀後半において圓、ドルは国際通貨であった。しかし300年以上に亘る流通と、圧倒的な鋳造量を誇るメキシコドルに対し、歴史の浅いアメリカ、香港および日本などの銀貨は市民権が容易には得られず市場において若干の増歩を要求される始末で、アメリカおよび日本は量目を420グレーン(27.216グラム)と若干増量した貿易銀を発行して対抗したが成功には至らなかった。

19世紀ごろまでは世界各国において銀本位制が主流であったが、1821年にはイギリス1873年からはアメリカ、ドイツ帝国1876年からはフランスと欧米各国が相次いで金本位制へ移行した。日本も名目上は1871年から金本位制を敷いていたが、金準備の絶対的不足、金貨の国外流出から金本位制はほとんど機能せず、1878年からは貿易一圓銀貨を事実上の本位貨幣とし、事実上、他の東アジア諸国と並ぶ銀本位制となっていた。

その後、世界的な銀の増産、各国の銀本位制からの離脱は金高銀安を招き、19世紀終盤には銀本位制であった東アジア諸国の圓は、米ドルなど金本位制の通貨に対し相対的に下落した[4]

中国および台湾では、米ドルは「美圓(美元)」、ユーロは「欧圓(欧元、歐羅)」などと表記される。
香港壹圓銀貨、1867年貿易銀壹圓、1895年

清国では1696年広東がイギリスとの貿易地として事実上開港され、1757年には公認の開港地となった。主にイギリスとの貿易においてメキシコドルが多量に流入し華南一帯で流通するようになった。

アヘン戦争の結果、1842年8月29日に南京条約において香港がイギリスに割譲されることとなった。1864年にイギリスは香港に造幣局を設立し、1866年から量目416グレーン(26.957グラム)、品位90%の一圓銀貨(1ドル銀貨)の製造を始めた。これは表面に「壹圓」および「ONE DOLLAR」と額面が表記され「香洋」と呼ばれた。しかしながら多量に流通しているメキシコドルに対し、この一圓銀貨は市民権を得ることなく増歩まで要求される始末であったため1868年には製造停止、造幣局も閉鎖に追い込まれた[5]。発行枚数は僅か2,108,054枚にとどまるものであった。このときの造幣局長であったキンドルは、後に設立された日本の造幣寮の首長となり、不要となった造幣機械も日本へ売却移送された。

やがてイギリスは東洋との貿易において様々な種類の大型銀貨が混在流通する中、植民地におけるイギリスの信用を確立するため、1895年から貿易取引専用の貿易銀を発行することとした。この「站人洋」と呼ばれた貿易銀は先に香港で発行された一圓銀貨および日本の一圓銀貨と同じ量目、品位でつくられた。

通貨の補助単位として1圓(ドル、Yuan、HKD)の1/10の10セントは「毫(Chiao)」、1/100の1セントは「仙(Hsien、Centの転)」と表記する。香港ドルは「港元」と表記される。「港圓」は過去の表記であるが、現在も使用し続けている。
日本貿易一圓銀貨、1871年一圓金貨、1872年

江戸時代の貨幣制度は金、銀、銭の三貨が併行流通するというものであり、それぞれの単位は「、分、」、「」、「」であった。しかもそれぞれが変動相場で取引され、金貨は四進法と複雑なものであった。開国により通貨の国際化を迫られた幕府慶應2年(1866年)の改税約書において国外から持ち込まれる金銀貨を日本の貨幣に改鋳することを請求できる自由造幣局の設立を確約した。

明治2年3月4日(1869年4月15日)、京都で開催された?議事院上局会議において大隈重信は「親指と人差指の先で丸をつくると三歳の童児でもそれが貨幣を意味していることがわかる」と発言したとされ、このことが「圓」の名称は円形の新貨幣の形状に由来しているとの俗説を生んだとされるが[5]、先の銀圓の由来からすれば単に俗説として切って捨てるべきものでもない。


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