國民の創生
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國民の創生
The Birth of a Nation
公開時のポスター:中央がKKKの扮装
監督D・W・グリフィス
脚本フランク・ウッズ
D・W・グリフィス
トーマス・ディクスン
原作トーマス・ディクスン(英語版)
製作D・W・グリフィス
製作総指揮ハリー・E・エイトキン
出演者リリアン・ギッシュ
ヘンリー・B・ウォルソール(英語版)
メエ・マーシュ
音楽ジョセフ・カール・ブレイル(英語版)
撮影ビリー・ビッツァー(英語版)
D・W・グリフィス
編集D・W・グリフィス
ジョセフ・ヘナベリー
ジェームズ・スミス
ローズ・スミス
ラオール・ウォルシュ
配給 エポック・プロデューシング
ユナイテッド・アーティスツ
公開 1915年2月8日(ロス)
1915年3月3日(NY)
1924年4月25日
上映時間165分
製作国 アメリカ合衆国
言語英語(中間字幕)
製作費$110,000(概算)
興行収入$3,000,000(アメリカ国内)
$10,000,000(全世界)
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『國民の創生』の動画

『國民の創生』(こくみんのそうせい、原題: The Birth of a Nation)は、D・W・グリフィス監督による1915年公開の無声映画。監督・脚本はD・W・グリフィス、主演はリリアン・ギッシュ、ヘンリー・B・ウォルソール(英語版)。アメリカ映画で最初の長編映画となった。

ミューチュアル社(英語版)のハリー・E・エイトキンとグリフィスが創設したエポック・プロデューシング・コーポレーションの出資で製作した作品。原作はトーマス・ディクスン(英語版)の小説『クランズマン(英語版)』で、グリフィスとディクスンとフランク・ウッズ(英語版)が大幅に脚色した。1,500ショット、上映時間165分・12巻からなり、広告費も含めて約11万ドル(製作費だけでも6万1千ドル)の製作費がかけられた大作で、アメリカ映画最初の長編作品でもある。

物語は、南北戦争とその後の連邦再建の時代の波に翻弄される、アメリカ北部・ペンシルベニア州のストーンマン家とアメリカ南部・サウスカロライナ州のキャメロン家の二つの名家に起こる息子の戦死、両家の子供達の恋愛、解放黒人奴隷による白人の娘のレイプ未遂と投身自殺などの出来事を、南北戦争、奴隷解放エイブラハム・リンカーンの暗殺、KKKの黒人虐待などを壮大な叙事詩のように、白人の視点から描かれている。

本作は、人種差別的な描写で批判を受け上映禁止運動も起きたが、結果的に作品は大ヒットし、ニューヨークでは44週間連続で上映されたという記録を持つ。また、クロスカッティングや極端なクローズアップフラッシュバックなどを効果的に使用するなど、映画技術や編集で画期的な工夫がみられ、映画表現を基礎づけた作品として映画史的に高く評価されている。1992年アメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
あらすじ

序章として、黒人のアメリカへの流入が簡単に描かれている。字幕の一部。ウッドロウ・ウィルソン大統領の演説が引用される。また字幕の下部には「DG」という、グリフィスのイニシャルが書かれている

第一部では、物語は北部ペンシルベニア州出身のストーンマン家のフィルとタッドが、級友のキャメロン兄弟に会いに南部のサウスカロライナ州ピドモントを訪ねることから始まる。フィル・ストーンマンはキャメロンの妹マーガレットと恋に落ち、マーガレットの兄ベン・キャメロンはフィルの妹エルジーと愛し合うようになる。そこへ南北戦争が始まり、フィルとタッドの兄弟は南部を去って北軍に加わる。激戦のためにベンの2人の弟とタッド・ストーンマンは戦死する。ベンの故郷の街ピドモントは北軍に攻撃され、ベンは負傷し、偶然にもフィル・ストーンマンの俘虜になるが、エルジーの献身的な看護によって一命を取り止める。

エルジー・ストーンマンとその母は、負傷したベンの解放をリンカーンに請願する。また、フィルとエルジーの父親オースティン・ストーンマンは南部に厳罰を科すよう主張するがリンカーンはこれを許さない。業を煮やしたオースティンは、白人と黒人の混血児サイラス・リンチの手を借りて、直接実力行使に出ようとする。その後、リンカーンの暗殺事件が起きて、その勢力を伸ばす。子供の遊びからKKK団結成のインスピレーションを受けるキャメロン

第二部では、オースティンは娘エルジーを伴い南部のサウスカロライナ州へ移り、キャメロン家の隣に住み、南部への政治工作を始める。解放黒人軍人たちは街でパレードを行い、選挙権を与えられた黒人たちは白人との結婚の自由を法律化する。混血児リンチは政治権力を与えられて、彼のグループと共に南部で、白人たちにとっては目にあまる行為を始める。これに対して、ベン・キャメロンは白人の子供が白い布をかぶり、幽霊の格好をして黒人の子供を怖がらせているのを見てインスピレーションを得て、南部の白人たちとともに「見えざる帝国」すなわち、クー・クラックス・クラン(KKK)を結成し、その指導者の一人となる。その頃、白人の教育を受けて軍人としての地位も得た使用人の黒人のガスは、キャメロンの娘のフローラに求婚する。フローラはこれを拒否して森に逃げ込み、追いつめられて自ら崖に身を投げ死ぬ。これに激怒したキャメロンとKKK団は黒人のガスをリンチし、有罪判決を下してこれを殺す。黒人の使用人ガスに求婚されたフローラは森の中へと逃げる

このためキャメロンの父がKKK団の幇助の罪に問われる。マーガレット・キャメロンと婚約したフィル・ストーンマンは、キャメロンの父を救い出し、キャメロン夫人やマーガレットや黒人の使用人と共に森の丸太小屋に隠れ、彼らの追っ手の一軍との戦闘準備を整える。一方エルジー・ストーンマンはリンチの元に直接赴き、フィルやキャメロン一家の助命を嘆願する。しかし、リンチは彼らの助命と引き替えにエルジーとの結婚を強要する。この「危機」に、ベンの率いるKKKたちはリンチの本部を襲って、リンチ一味を倒してエルジーを救い出し、丸太小屋で殺されかけているキャメロン一家とフィル・ストーンマンを救い出す。

こうして、KKKの勢力は、「南部の混乱」を収拾し、ベン・キャメロンとエルジー・ストーンマン、フィル・ストーンマンとマーガレット・キャメロンの2組の恋人は晴れて結ばれる。
キャスト


エルマー・クリフトンリリアン・ギッシュミリアム・クーパー


エルジー・ストーンマン:リリアン・ギッシュ

フィル・ストーンマン:エルマー・クリフトン

オースティン・ストーンマン:ラルフ・ルイス(英語版)

タッド・ストーンマン:ロバート・ハーロン(英語版)

ベン・キャメロン:ヘンリー・B・ウォルソール(英語版)

フローラ・キャメロン:メエ・マーシュ

マーガレット・キャメロン:ミリアム・クーパー(英語版)

ガス:ウォルター・ロング(英語版)

鍛冶屋のジェフ:ウォーレス・リード

エイブラハム・リンカーン:ジョゼフ・ヘナベリー(英語版)

グラント将軍ドナルド・クリスプ

リー将軍:ハワード・ゲイ(英語版)

ジョン・ウィルクス・ブースラオール・ウォルシュ

南軍の兵士:デイヴィッド・バトラー

KKKの団員:ジョン・フォード

連合兵士:ユージン・パレット

ベッシー・ラブ

チャールズ・キング

トム・ウィルソン

エリッヒ・フォン・シュトロハイム

製作劇中のワンシーン

本作は1914年夏から撮影が行われ、翌年に完成した。もともとは4万ドルの予算でスタートしたが、グリフィスは11万ドルも予算を使ってしまい、当時では最も予算を使った映画となった。撮影だけでも長い期間がかかったが、編集作業も6週間余りの時間を費やした。


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