国際紛争の平和的解決
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2013年にイギリスで開催されたG8サミットの際に会談したアメリカ大統領バラク・オバマ(左)と、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン(右)。外交交渉は国際紛争の平和的解決手段としては最も基本的なものであるが[1]、外交交渉という手段によって平和的解決が実現するかどうかは当事者の態度いかんである[2]

国際紛争の平和的解決(こくさいふんそうのへいわてきかいけつ)は、国際紛争平和的に解決し、処理することである[3]。国際紛争の平和的処理ともいう[3]。平和的解決と対をなすのは兵力による解決を表す「強力的解決」または「強制的解決」であり、その最も重大な場合が戦争である[3]。かつての国際法では平和的解決手続きと強力的解決手続きのどちらも認められ[4]、平和的解決手続きに失敗すれば武力行使を伴う強力的解決手段も認められていた[5]。しかし現代では国連憲章2条3項により国際紛争の平和的解決が義務として定められたほか、同2条4項で武力の行使、武力による威嚇が禁止され、ニカラグア事件国際司法裁判所判決では紛争の平和的解決義務が慣習国際法であることが確認された[4]。ただしこのような国際紛争の平和的解決義務は、平和的手段を用いるべき義務であって、平和的手段を用いた結果として国際紛争を実際に解決することまで義務付けられているわけではない[6]。平和的解決のための手段として具体的には、外交交渉周旋、仲介、審査、調停のような非裁判手続きのほか、第三者機関が紛争当事国に紛争解決を義務付ける裁判的手続がある[7]。これらの手続きのうちいずれを選定するかは、原則的に紛争当事国の自由であるが[8]、国際紛争の平和的解決に国際組織が介入することもある[9]
平和的解決の義務化

かつては国際紛争の解決手段として、外交交渉などの平和的手続(#紛争解決手続き)と武力行使を伴う強力的解決手続きの双方が認められた[4]。1899年に採択された国際紛争平和的処理条約1条では、武力行使を予防して国際紛争の平和的解決の確保に全力を尽くすことが約束されたが、国際紛争の平和的解決義務や武力行使の禁止が定められることはなかった[5]国際連盟規約においては強力的手段による紛争解決は制限されたが(12条1項)、平和的解決に失敗した場合には最後の手段として戦争に訴えることも認められていた(15条7項)[10]

しかし1945年の国連憲章では、2条3項で紛争を平和的手段により解決すべき一般的義務が定められたほか、2条4項では武力行使禁止原則が定められている[4]。2条3項、2条4項は以下の通り。

3.すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。

4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。 ? 国連憲章2条3項、4項日本語訳。

2条3項に定められた紛争の平和的解決義務は、2条4項の武力行使禁止と密接に関連しており、武力の行使や武力による威嚇に至らない手段によって紛争の解決を図ることにより相互に補完し合う関係にある[11]

1970年の友好関係原則宣言では紛争当事国が紛争の平和的解決を目指すべきとされ、1982年のマニラ宣言も国際紛争は「もっぱら平和的手段によって解決」すべきとした[4]。1986年のニカラグア事件国際司法裁判所判決では、国際紛争の平和的解決義務が武力行使禁止の原則を補完する慣習国際法としても認められることとなった[4]

このような国際紛争の平和的解決義務は、平和的手段を用いるべき義務であって、平和的手段を用いた結果として実際に国際紛争の解決に至る義務まで紛争当事国に課せられているわけではない[6]。友好関係原則宣言は「速やか」な解決を紛争当事国に求め、ひとつの平和的解決手段によって解決しない場合であっても「引き続き」解決のため努力し続けることを要請している[6]。また、マニラ宣言は「早期」の解決を求めている[6]。このように解決を求める方向性が示されてきたと言えるが、それは解決に至るための努力を求めるにとどまるものである[6]
国際紛争とは詳細は「国際紛争」を参照

国際判例は、紛争という概念を「二主体間の法律上または事実上の論点に関する不一致、法律的見解または利益の矛盾、対立」(1924年のマヴロマティス・パレスタイン特許事件常設国際司法裁判所判決)と定義し、国際紛争が存在するか否かは裁判所により客観的に判断されるべき問題としている(1950年の平和条約解釈ICJ勧告的意見)[12][13]。このような国際判例における紛争概念の定義は1988年の国連本部協定ICJ勧告的意見や1995年の東ティモール事件ICJ判決でも踏襲されている[14]
政治的紛争と法律的紛争の分類

国際紛争をその性質により法律的紛争と政治的紛争とに2つ二分類することが学説上行われてきた[15]。この分類において、国際法の解釈・適用を通じて紛争の処理をはかる裁判によって解決可能な紛争が法律的紛争とされ、国際法の解釈・適用によっては解決不能な紛争が政治的紛争または非法律的紛争とされる[15]。しかしこのような学説上の分類論に対しては、国家間の紛争はすべてこれら両面の性質を持つため区別することができず、区別の基準は主観的なものにならざるを得ないとする批判もある[16]
紛争解決手続き

紛争解決の具体的な手続きとしては、外交交渉周旋、仲介といった、必ずしも国際法を基準としない紛争当事国間の合意による手続きもあれば、裁判的手続きのように国際法を基準とした法的拘束力のある判決によって紛争解決を図る手続きもある[17]
手続き選定の自由

様々な紛争解決手続きのうち、いずれの手続きを選定するかは原則的に紛争当事国の自由である[8]。以下に引用する国連憲章33条1項はこうした手続き選定の自由を表すものである[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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