国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約
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国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約

通称・略称国連組織犯罪防止条約、TOC条約[1][2]、パレルモ条約[3][2]
起草1998年12月9日(ニューヨーク)
署名2000年12月12日
署名場所パレルモ
発効2003年9月29日
寄託者国際連合事務総長
文献情報平成29年7月14日官報号外第152号条約第21号
言語アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
主な内容国際的な組織犯罪を防止し、およびこれと戦うため、重大な犯罪を行うことを合意すること等一定の行為の犯罪化、裁判権の設定、犯罪収益の没収、犯罪人引渡し等につき規定する。
関連条約国際連合腐敗防止条約
条文リンク英文 - 和文(外務省) (PDF)
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国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(こくさいてきなそしきはんざいのぼうしにかんするこくさいれんごうじょうやく、: United Nations Convention against Transnational Organized Crime, TOC)は、国際連合総会2000年に採択され、2003年に発効した組織犯罪防止のための条約。

組織犯罪集団への参加や共謀、犯罪収益資金洗浄・司法妨害・公務員汚職(腐敗)等の処罰、およびそれらへの対処措置などを定める。

条約本体のほか、人身取引密入国銃器に関する議定書が各1件ある(正式名称は下記)。

2020年5月現在、署名国は147カ国、締約国は190カ国で(経済団体として加入している欧州連合を含む)[4]公務員の透明化政策を支持している。
経緯・沿革.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  批准国・実施国・受諾国   署名のみした未批准国   未加入国

国際的な組織犯罪が急速に増大したため、1994年11月、イタリアナポリで開催された国際組織犯罪世界閣僚会議において、「ナポリ政治宣言及び世界行動計画」が採択され、国際的な組織犯罪に対処するための法的枠組みを定める国際組織犯罪防止条約の検討が提唱された。


1998年12月、国連総会において、国際組織犯罪防止条約の本体条約、および「人身取引」「密入国」「銃器」に関する三議定書を起草するためのアドホック委員会(Ad Hoc Committee、政府間特別委員会)の設置が決定された。この委員会で条約案が起草され、本体条約と「人身取引」「密入国」に関する二つの議定書については2000年11月15日に、また、「銃器」に関する議定書は2001年5月31日に、それぞれ国際連合総会で採択された。

条約は、国際連合総会2000年11月15日に採択された。締約国が発展途上国や経済支援下にある国における組織犯罪防止活動やテロ防止活動を支援するため、犯罪防止刑事司法基金の口座に定期的に任意の寄付を行うことを前文において強調している。

2000年12月、イタリアのパレルモにおいて、条約及び関連議定書の署名会議が開催され、本体条約には124カ国、「人身取引」議定書は81カ国、「密入国」議定書には78カ国が署名した。その後、本体条約および三議定書は、2002年12月12日までニューヨーク国際連合本部において署名のために開放された。

2014年12月には国際連合安全保障理事会において、本条約及び腐敗防止条約等関連条約の加入・批准、実施等を求める付帯決議が行われた[5]
日本の対応「共謀罪#審議の経過」も参照

日本は、条約本体について、2000年12月にイタリアのパレルモで行われた署名会議において署名し、2003年(平成15年)5月14日国会で承認[6]したものの、批准にはさらに14年以上を要した(後述)。また、三議定書については、2002年12月9日国際連合本部において署名した。2005年(平成17年)6月8日、三議定書のうち「密入国」「人身取引」について、国会で承認した(「銃器」は未承認)。

本条約の締結に伴い、その条約上の義務として、重大な犯罪を行うことの合意、犯罪収益の洗浄(資金洗浄、マネー・ローンダリング)、司法妨害等を犯罪とすることを定めて裁判権を設定するとともに、犯罪収益の没収、犯罪人引渡し等について法整備・国際協力を行わなければならない。これに対応するため、政府は第159回国会(平成16年1月開会)に「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」を提出したが成立しなかった。

これは、同法案で新設する予定だった共謀罪の対象とされる行為があまりにも広く、かつ、曖昧であることに批判があったためである。また民進党は、共謀罪の成立無しでも批准可能であると主張[7]している。旧民主党政権下において批准出来なかった理由について、野田政権下で法務大臣だった小川敏夫は、2017年(平成29年)5月18日のテレビ朝日での取材において「政権が弱体化し、法務省に行けば外務省、外務省に行けば法務省と『たらい回し』にされ、批准できなかったこと」を述べている。これに対し、自民党は現行法での運用(予備罪等)のみでは足りず、共謀罪等の新たな罪状を新設しなければ、条約を批准することができないと主張してきた。

その後、安倍政権下において共謀罪の構成要件を厳格化し「テロ等準備罪」を新設する方針に転換し、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)の改正案を第193回国会に提出。2017年5月23日に衆議院を通過し[8]、6月15日に参議院で可決・成立した[9]

日本国政府は改正組織犯罪的処罰法が施行された2017年7月11日、本条約の受諾について閣議に於いて決定した。国際連合本部に受諾書を寄託して正式に条約を締結し、8月10日に発効[10]。日本は188番目の締約国となった[11][12]
主な内容
用語(2条)・適用範囲(3条)

本条約において「組織的な犯罪集団」とは、三人以上の者から成る組織された集団であって、物質的利益を得るため重大な犯罪又は条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。

本条約において「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重大な刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。

本条約において「組織された集団」とは、犯罪の即時の実行のために偶然に形成されたものではない集団をいい、その構成員について正式に定められた役割、その構成員の継続性又は発達した構造を有しなくてもよい。

本条約は、別段の定めがある場合を除くほか、第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪並びに重大な犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、
捜査及び訴追について適用する。

組織的な犯罪集団への参加の犯罪化(5条)

締約国は、次の一方又は双方の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

物質的利益を得ることに関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの


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