国際特許分類
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国際特許分類(こくさいとっきょぶんるい、International Patent Classification、IPC)は、国際的に統一されて用いられている、特許文献の技術内容による分類である。世界知的所有権機関(WIPO)が管理する国際特許分類に関するストラスブール協定に基づいて作成されている。

特許文献とは、各国の特許庁によって発行される特許、発明者証、実用新案、公開特許公報などの文献である。国際特許分類を採用する国の特許文献には、「Int. Cl.」(International Classificationの略)という前置きとともに、アルファベットと数字からなる国際特許分類の分類記号が表示されている。2000年1月1日から2005年12月31日までの間に発行された特許文献には「Int. Cl.7」と表示されるIPC第7版が用いられた。2006年1月1日以降に発行される特許文献には、単に「Int. Cl.」と表示されるIPC第8版が用いられている。

国際特許分類の分類表は、英語フランス語を等しく正本としている。公定訳文スペイン語ドイツ語日本語ポルトガル語ロシア語及び協定の規定に基づいて定められる言語で作成されることになっており[1]、他に中国語クロアチア語チェコ語オランダ語ハンガリー語朝鮮語ポーランド語ルーマニア語セルビア語スロバキア語で作成されている[2]。国際特許分類の日本語訳は日本国特許庁によって提供されているが、かなりの翻訳ゆれ、表記ゆれや誤字脱字を含むことが指摘されている[3]
分類と分類記号国際特許分類の構造。A01B 1/02という分類記号の構造を示す。A01B1/02
セクション 
クラス
サブクラス
メイングループ
サブグループ

セクションからサブグループまでがつくる階層構造

国際特許分類は、生物の分類に似ている。生物の分類では、全ての生物を動物界、植物界(など)の「界」に分け、動物界、植物界それぞれに分類された生物をさらに細かく(例えば動物界であれば海綿動物門から脊索動物門までの)「門」に分ける。それぞれの「門」を「綱」に分け、「綱」をさらに「目」に分け、「目」を「科」に分ける。国際特許分類には、生物の分類における「界」に相当するもっとも大まかな分類として「セクション」があり、以下「サブセクション」、「クラス」、「サブクラス」、「メイングループ」、「サブグループ」という細かい分類がある。

国際特許分類では、全技術分野を8個の「セクション」に分け、各セクションを5から36の「クラス」に分け、さらにそれを「サブクラス」に、サブクラスを「メイングループ」に、メイングループを「サブグループ」へと細分する。メイングループとサブグループはあわせて7万個ほどある。特許文献には7万個あるメイングループとサブグループのうちの1個または複数の記号が、その文献の分類を表示するために付される。

国際特許分類の分類記号は、セクションからサブグループに至る階層を示すアルファベットと数字の組み合わせである。例えば、

Aはセクション「生活必需品」を表す分類記号であり、

A01はクラス「農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業」を表す分類記号であり、

A01Bはサブクラス「農業または林業における土作業:農業機械または器具の部品, 細部または附属具一般」を表す分類記号であり、

A01B 1/00はメイングループ「手作業具」を表す分類記号であり、

A01B 1/02はサブグループ「鋤;ショベル」を表す分類記号である。

したがって、分類記号A01B 1/02が表示された特許は

農業または林業における土作業:農業機械または器具の部品, 細部または附属具一般の中でも

手作業具である

鋤;ショベル

に関する発明について与えられたものだといえる。また、「鋤;ショベル」に関する発明にはどんなものがあるかを知りたければ、分類記号A01B 1/02が表示された特許文献を手当たり次第に調べればよい。
ドットによるインデントがつくる階層構造

国際特許分類の分類記号とその意味定義を示した分類表には、サブグループの分類記号の意味定義文の先頭に1または複数のドット(・)が付与され、インデントされている。このドットの個数、インデントの深さによって、意味上の階層構造が表されている。

例えば、メイングループA01B 1/00の分類表には、1/00 手作業具(芝生の縁切り取り具A01G3/06)1/02 ・鋤;ショベル1/04 ・・歯を有するもの1/06 ・ホー;手持ちカルチベーター1/08 ・・一枚刃を有するもの1/10 ・・二枚刃またはそれ以上の刃を有するもの1/12 ・・歯を有する刃を有するもの1/14 ・・歯のみを有するもの

(以下略)と書かれている。したがって、

メイングループA01B 1/00はサブグループA01B 1/02を含み、

サブグループA01B 1/02はサブグループA01B 1/04を含む

ことから、分類記号A01B 1/04は

「手作業具」であって「鋤;ショベル」であって「歯を有するもの」

つまり「歯を有する鋤やショベル」に関する発明の文献に付与される。そして、分類記号A01B 1/02は

「鋤;ショベル」であってA01B 1/04に含まれないもの

つまり歯を有しない鋤やショベルの発明、あるいは、歯を有するか否かに無関係に鋤やショベル一般に適用できる発明、の文献に付与される。
細かいこと

国際特許分類の各階層の桁数は次のようになっている:

セクションはAのように、アルファベット1文字。

クラスはA01のように、セクションに続いて数字2桁。

サブクラスはA01Bのように、クラスに続いてアルファベット1文字。

メイングループはA01B 1、B65H 29、D03D 101のように、サブクラスに続いて数字1桁から3桁(IPC8は数字4桁まで)。1桁か2桁であることが多い。特許文献に付与された分類として表示される場合はA01B 1/00、B65H 29/00、D03D 101/00のように後ろに「/00」が補われる。

サブグループはG02F 1/13、G02F 1/133、G02F 1/1335、G02F 1/13357のように、メイングループに続いて数字2桁から5桁(IPC8は数字2桁から6桁まで)。2桁であることが多い。

ここで、サブグループの数字の上から2桁目の後、3桁目の前には、見えない小数点があるものと考える。すなわち、G02F 1/133は「G02F 1/百三十三」ではなく「G02F 1/十三点三」と考えるべきで、辞書的な順序ではG02F 1/13の次に配列される。(音読するときは「G02F 1/いちさんさん」のように呼ばれ、「G02F 1/十三点三」のように呼ばれることはない。)

セクションの下、クラスの上には、分類記号を持たない分類であるサブセクションがある。例えば、セクションA「生活必需品」には、A01からA63まで(途中大幅に欠番があって)15個のクラスがあり、これらは「農業」、「食料品;たばこ」、「個人用品または家庭用品」、「健康;娯楽」の四つのサブセクションにまとめられている。

サブセクションに類似して、サブクラスの下、メイングループの上には見出しが付けられていることがある。例えば、A01B 19/00「回転具を有しないハロー」から25/00「特殊な付加装置を有するハロー」までをまとめて、「ハロー」という見出しが付けられている。

サブセクションと見出しが省略されて表示されない特許分類データベースもある。


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