国際海洋法裁判所
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国際海洋法裁判所
International Tribunal for the Law of the Sea
Tribunal international du droit de la mer

設置1996年
国際裁判所
所在地ドイツハンブルク
認可国際連合海洋法条約
判事任期9年
判事構成人数21名
ウェブサイト ⇒http://www.itlos.org/
エルベ川から望む国際海洋法裁判所(ドイツハンブルク

国際海洋法裁判所(こくさいかいようほうさいばんしょ、英語:International Tribunal for the Law of the Sea 、フランス語:Tribunal international du droit de la mer)は、海洋法に関する国際連合条約(海洋法条約)に基づき1996年に発足した常設的な国際裁判所である。英語での略称はITLOS(イトロス)。ドイツハンブルクに所在する。海洋法条約の解釈・適用から生ずる紛争を専門的に管轄している。
概要

海洋法条約では、第15部「紛争の解決」において海洋法条約に関する紛争を解決するための制度を規定している。紛争の解決の手段として武力を行使してはならず、平和的に解決しなければならないが、平和的解決の手段として、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決のいずれの手段を用いるかは当事国の自由である。ただし、どの手段を用いるか当事国間で合意が得られない場合、手段について合意が得られても紛争の解決に至らなかった場合は、一方の当事国は紛争を強制的に国際裁判所に付託することができる。

付託できる裁判所は、国際司法裁判所、仲裁裁判所、特別仲裁裁判所、そして国際海洋法裁判所の4つがある。海洋法条約の批准・加入などの際には締約国は将来紛争が発生したときにどの裁判所を利用するかを宣言することができる。宣言では複数の裁判所を利用すると宣言することもできる。宣言がない場合、当事国間の宣言で利用する裁判所が一致していない場合は仲裁裁判所が利用される。ただし、海洋法条約292条に基づく「早期釈放」の問題の場合は宣言がない場合などでも国際海洋法裁判所を利用できる。

また、国際海洋法裁判所は、裁判以外にも、国際機関に対して法律問題に関する助言を与える勧告的意見の制度が取り入れられており、海洋法条約191条に基づき国際海底機構は国際海洋法裁判所の海底紛争裁判部に対して勧告的意見の付与を要請することができる。条文上は、海底紛争裁判部についての規定しかなく、大法廷が勧告的意見の付与を行うことができるのか長らく議論が行われてきたが、2013年に小地域漁業機関(SRFC)から大法廷が勧告的意見の付与を要請された際に、2015年に大法廷は自らが勧告的意見の付与を行う権限があるとした。
組織

裁判所長…対外的に裁判所を代表する。

大法廷…すべての裁判官で構成される。

海底紛争裁判部…深海底における活動に関する紛争を専門的に取り扱う裁判部

海底紛争裁判部臨時裁判部…深海底における活動に関する紛争について訴訟当事者の要請がある場合に臨時に設置される裁判部

特別裁判部…個別の事件のために、紛争当事者の要請により特別に設置される裁判部

常設特別裁判部…特定の種類の事件のために裁判所長の判断で設置される特別の裁判部

簡易手続裁判部…事務の迅速な処理のために設置される特別裁判部

書記局…裁判所の事務を取り扱う部署。書記長、書記、書記補、書記代理がいる。

事案一覧

これまでに32件の事案が付託されている。事案は、それぞれ以下のように区別して表記する。

暫定措置…海洋法条約290条に基づくもの

早期釈放…海洋法条約292条に基づくもの

本案…暫定措置、早期釈放以外の全ての訴訟

勧告的意見…海洋法条約191条に基づくもの。ただし、事件番号21及び事件番号31では大法廷に対して勧告的意見を要請している。

事件番号事案名当事国[事案 1]付託・要請[事案 2]処分リンク
原告国被告国日付処分の種別
1サイガ号事件(早期釈放) セントビンセント・グレナディーン ギニア1997/11/131997/12/4判決[1]
2サイガ号事件(暫定措置・本案) セントビンセント・グレナディーン ギニア1998/1/131998/3/11暫定措置命令[2]
1997/12/221999/7/1判決
3及び4[事案 3]みなみまぐろ事件(暫定措置) ニュージーランド 日本1999/7/301999/8/27暫定措置命令[3]
オーストラリア 日本
5カモウコ号事件(早期釈放) パナマ フランス2000/1/172000/2/7判決[4]
6モンテ・コンフルコ号事件(早期釈放) セーシェル フランス2000/11/272000/12/18判決[5]
7南東太平洋めかじき資源保存事件(本案) チリ 欧州連合共同付託2000/12/202009/12/16両当事者の合意による訴訟取り下げ ⇒[6]
8グランド・プリンス号事件(早期釈放) ベリーズ フランス2001/3/212001/4/20判決 ⇒[7]
9チャイシリ・リーファー2号事件(早期釈放) パナマ イエメン2001/7/32001/7/12両当事者の合意による訴訟取り下げ ⇒[8]
10MOX製造工場事件(暫定措置) アイルランド イギリス2001/11/92001/12/3暫定措置命令 ⇒[9]
11ヴォルガ号事件(早期釈放) ロシア オーストラリア2002/12/22002/12/23判決 ⇒[10]
12ジョホール海峡事件(暫定措置) マレーシア シンガポール2003/9/52003/10/8暫定措置命令 ⇒[11]
13ジュノー・トレイダー号事件(早期釈放) セントビンセント・グレナディーン ギニアビサウ2004/11/182004/12/18判決 ⇒[12]
14豊進丸事件(早期釈放) 日本 ロシア2007/7/62007/8/6判決 ⇒[13]
15富丸事件(早期釈放) 日本 ロシア2007/7/62007/8/6判決 ⇒[14]
16バングラデシュ・ミャンマー間海洋境界画定に関する紛争(本案) バングラデシュ ミャンマー共同付託2009/12/142012/3/14判決 ⇒[15]
17深海底における探査活動を行う個人及び団体を保証する国家の責任及び義務(勧告的意見)国際海底機構2010/5/142011/2/1勧告的意見 ⇒[16]
18ルイザ号事件(暫定措置・本案) セントビンセント・グレナディーン スペイン2010/11/242010/12/23暫定措置命令 ⇒[17]
2010/11/242013/5/28判決
19ヴァージニアG号事件(本案) パナマ ギニアビサウ共同付託2011/7/42014/4/14判決 ⇒[18]


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