国際天文学連合による惑星の定義
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この項目では、2006年に定められた公式の定義について説明しています。以前の定義については「惑星の定義」をご覧ください。
太陽系の天体の分類

国際天文学連合による惑星の定義(こくさいてんもんがくれんごうによるわくせいのていぎ、IAU definition of planet)は、2006年に国際天文学連合 (IAU) によって定められた。それによると、太陽系内において、惑星は以下を満たす天体である。
太陽の周りの軌道上にある。

静水圧平衡にあると推定するのに十分な質量を持つ(ほぼ球形である)。

その軌道近くから他の天体を排除している[1]

衛星以外で、上記の3つの条件のうち上の2つを満たしている天体は、「準惑星」に分類される。IAUによると、「惑星と準惑星は、2つの区別された天体の分類」である。衛星以外で上記の3つの条件のうち上の1つだけを満たしている天体は、「太陽系小天体」に分類される。最初の原案では、準惑星を惑星のサブカテゴリに含める計画であったが、将来的に太陽系の数十の天体がここに加わる可能性があったため、この案は最終的に棄却された。この定義は議論を呼び、様々な天文学者から賛成と反対の意見が出されたが、現在でも有効である。

この定義によると、現在、太陽系には8つの惑星と5つの準惑星が知られている。この定義は惑星を小天体から区別するもので、小天体が未だ発見されていない太陽系外には適用されない。太陽系外惑星は、2003年の惑星の定義のガイドライン案の補遺で、より大きい矮星から区別するものとして別に規定されている。
議論の理由全ての既知のカイパーベルト天体(緑色)と外惑星(青色)

21世紀初頭の発見まで、天文学者は惑星の公式な定義の必要性を感じていなかった。1930年に冥王星が発見され、太陽系には小惑星や彗星等の数千個の小天体とともに、9つの惑星が存在すると考えられるようになった。この頃、冥王星は水星よりも大きいと考えられていた。

1978年、冥王星の衛星カロンが発見され、この姿が劇的に変わった。カロンの軌道周期の測定によって冥王星の真の質量の計算が初めて可能となり、それまで考えられていたよりずっと小さいことが明らかとなった[2]。冥王星の質量は水星の約25分の1で地球のよりも小さく、圧倒的に最小の惑星となったが、それでも最大の小惑星であるケレスよりは10倍以上大きかった。

1990年代、少なくとも冥王星ほど遠い軌道に、現在はエッジワース・カイパーベルト天体として知られる天体が発見され始めた[3]。その多くは冥王星と主な軌道要素を共有し、現在は冥王星族と呼ばれている。冥王星は、新しい分類の天体のうち最大のものとみられるようになり、冥王星を惑星と呼ぶのを止める天文学者も現れた[4]。冥王星の偏平で傾いた軌道は太陽系の惑星とはかなり異なるが、他のエッジワース・カイパーベルト天体とはよく一致した。2000年、それがRose Center for Earth and Spaceで報じられると、新しく改修されたニューヨーク市にあるヘイデン・プラネタリウムでは、惑星の展示に冥王星を含めなかった[5]

大きさと軌道が冥王星と匹敵する少なくとも3つの天体(クワオアーセドナエリス)が発見された2000年から、これら全てを惑星と呼ぶべきか、冥王星を分類し直すべきかどちらかであることが明確になった。冥王星ほどの大きさの惑星は今後もさらに発見され、惑星の数は急速に拡大し始めるであろうことも分かっていた。また、太陽系以外の惑星系惑星の定義も問題となっていた。2006年、エリスが冥王星よりも若干大きいことが明らかとなり、同じように「惑星」の資格を持つと思われた[4]
過去の類似例

1801年1月1日にケレスが発見されて始まった19世紀にも、冥王星の詳細が理解されてきたことで議論を呼んだ[4]。天文学者はすぐに、この小さな天体が火星木星の間の「失われた惑星」であると宣言した。しかし、それから4年以内に、同じ様な大きさと軌道を持つさらに2つの天体が発見され、この考えが誤りであることを示した。1851年までに、「惑星」の数は23個に増え、さらに今後数百個が発見されることは明らかであった。天文学者は、これらを星表に分離して収め始め、「惑星」の代わりに「小惑星」と呼び始めた[6]
定義の歴史

新しい惑星はまれにしか発見されないため、IAUはその定義と命名法に機械的な基準を作ってこなかった。セドナの発見後の2005年、イギリスの天文学者Iwan Williamsを委員長として19人からなる委員会が設置され、惑星の定義について検討が行われた。委員会は、3つの定義を提案した。
文化的定義
惑星は、十分多くの人がそう呼ぶ時に惑星である。
構造的定義
惑星は、球形を保つのに十分なほど大きいものである。
動力学的定義
天体は、他の全ての天体が最終的にその軌道から排除されるのに十分なほど大きいものである
[7]

ハーバード大学名誉教授である天文歴史家のOwen Gingerichが委員長を務め、5人の惑星科学者と科学ライターのDava Sobelが参加する別の委員会が、提案を作るために立ち上げられた[8]
提案された原案当初の提案は、エリス、カロン、ケレスを惑星に加える案であった。

IAUは、2006年8月16日に原案を公表した[9]。この案は、委員会の3つの意見のうち2番目に基づくもので、次のように述べる[9]。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}惑星は、(a) 自己の重力が剛体力に打ち勝ち、静水圧平衡にあると推定される十分な質量を持ち、(b) 恒星の周りの軌道にあり、恒星でも惑星の衛星でもない天体である。

この定義により、次の3つの天体が惑星と認められるようになった。

ケレスは発見時から惑星と考えられてきたが、後に小惑星として扱われるようになった。

冥王星-カロン系は、二重惑星と考えられている。

エリスは、外太陽系の散乱円盤天体である。

物理的性質が詳しく分かっていなかったさらに12個の天体もこの定義の下に連なる可能性があった。この2番目のリストのうちいくつかの天体は、他よりも「惑星」として認められる可能性が高かった。メディアで主張されていることをよそに[10]、この定義では、太陽系に12個の惑星だけを残しておくことを必要としない。セドナとエリスの発見者であるマイケル・ブラウンは、太陽系内の少なくとも53個の既知の天体が定義に当てはまる可能性があり、完全な探索が行われれば、恐らくさらに200個は見つかるだろうと述べている[11]

この定義では、2つの天体がそれぞれどちらも惑星の基準を満たし、系の共通重心が両方の天体の外にある1対の天体を二重惑星としている[12]。冥王星とカロンは、太陽系で唯一の既知の二重惑星である。月のようなその他の惑星の衛星でも静水圧平衡にあると考えられるものがあるが、系の共通重心がより重い天体の内側にあるため、二重惑星とは定義されていない。最初の提案に当てはまる可能性のある12個の「惑星候補」。最後の3つを除き、太陽系外縁天体である。最も小さな3つ(ヴェスタ、パラス、ヒギエア)は、小惑星帯に存在する。

「小惑星」という用語は廃止されて「太陽系小天体」と"pluton"(プルートン)という新しい分類に置き換えられた。前者は、「球形」の閾値に満たない天体、後者はかなり偏平で傾いた、軌道周期200年以上(即ち海王星の軌道より外側)の天体に適用される。冥王星は、この分類のプロトタイプである。「準惑星」という用語は、太陽の周りを公転する8つの「古典的惑星」より小さい全ての惑星に当てはまるが、IAUの公式の分類ではない[13]。IAUは、原案にあった惑星と褐色矮星の区別については勧告しなかった[14]。提案に対する投票は、2006年8月24日に予定された[10]


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