国鉄EH10形電気機関車
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国鉄EH10形電気機関車
量産機 EH10 16
基本情報
運用者日本国有鉄道
製造所川崎車輛(現・川崎車両)
日立製作所
東京芝浦電気(現・東芝)
新三菱重工業(現・三菱重工業、電装品は三菱電機)
製造年1954年 - 1957年
製造数64両
引退1981年
消滅1982年
主要諸元
軸配置(Bo - Bo) + (Bo - Bo)
軌間1,067 mm
電気方式直流1,500V
架空電車線方式
全長22,500 mm
(試作形: 22,300 mm)
全幅2,800 mm
全高3,960 mm
運転整備重量116.0 t
(試作形: 118.4 t)
台車DT101形
軸重14.5 t
(試作形: 14.8 t)
動力伝達方式1段歯車減速 吊り掛け式
主電動機直流直巻電動機
MT43×8(高速試験機 SE174×8)
歯車比21:77 = 1:3.67(高速試験機 25:77 = 1:3.08)
制御方式抵抗制御・直並列組合せ制御・弱め界磁制御
制御装置電磁空気単位スイッチ式
制動装置EL14AAS形自動空気ブレーキ手ブレーキ
保安装置ATS-S
最高速度120.0km/h
定格速度50.2 km/h
定格出力2,600 kW
定格引張力18,400 kg
高速試験機 18,500 kg
備考出典[1]
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EH10 61 製造銘板

EH10形は、1954年(昭和29年)に登場した日本国有鉄道(国鉄)の直流電気機関車である。1957年(昭和32年)までに64両が製作された。
概要

全線電化が間近に迫っていた東海道本線および山陽本線貨物列車牽引用として、EF15形をベースに開発された。国鉄が製作した唯一[注 1]の8動軸機であり、国鉄史上最大級の電気機関車である。その巨体から「マンモス」という愛称で親しまれた。

車体や台車は近代化される一方、モーターや制御装置は在来車と同様の堅実路線を採っていた。このような経緯から本機は国鉄の直流電気機関車の系譜において、EF15形以前のいわゆる旧性能機と、ED60形以降のいわゆる新性能機の中間に位置する過渡期の機関車と見なされている。
登場の背景

1940 - 1950年代の東海道本線では貨物輸送需要が大きく、最大1,200tの重量級貨物列車が大型蒸気機関車の牽引で運行されていた。

輸送能力の逼迫と石炭供給難を背景に1951年(昭和26年)に再開された東海道本線電化工事は急速に進展し、1953年(昭和28年)には浜松 - 名古屋間電化が完成した(同年中に名古屋 - 稲沢間を延伸)。この時点で名古屋 - 米原間の電化は目前となっており、さらには京都までの電化による東海道本線全線電化完成も視野に入りつつあった(米原電化は1955年、東海道全線電化は1956年に完成)。

しかし、この間の大垣 - 関ケ原間は10勾配が延々6kmに及び連続し、殊に機関車牽引の重量級貨物列車にとっての難所であった。1953年当時最新鋭の貨物用電気機関車であったEF15形をもってしても、この区間での1,200t列車単機牽引を想定すると出力不足により主電動機過熱フラッシュオーバーが懸念され、これでは十分な速力を得られず並行して運行される旅客列車のダイヤ設定にも支障が生じることが予測された。電化のみでは関ヶ原の隘路の解消は叶わなかったのである。

対策としてはEF15形の主電動機をドライアイス等を利用して強制冷却する、補助機関車の連結といったことも考えられたが、主電動機の冷却は応急的な手段であること、補機の連結は機関車運用が複雑なままとなり電化の意義も薄れるため、EF15形を凌駕する性能の強力型機関車を開発して関ヶ原越えの問題を克服することになっただけでなく、その性能向上分を生かして貨物列車のさらなる増発・速度向上も考えられた[注 2]。この新型機関車EH10形はEF15形(6軸・主電動機6個)とほぼ同性能の主電動機を8個使用する、日本初の8動軸式大型機関車となった[2][3]

実際の設計に関しては、1946年?1947年頃から断続的に進められてきたものの製作については見合わせられてきた[4]が東海道線電化の進行に伴い貨物列車兼引用として強く望まれるようになった1954年に設計が完了し製作が行われた[5][6]
基本構造JNR EH10 足回りEH10 連結部分

動軸を8軸としたことで全長22.5mに及ぶ長大な車体は中央で2分割され、箱形の2車体を永久連結する特異な構造となった。2車体間は永久連結器で結合され、金属製の特殊な貫通幌と高圧引き通し線が渡されている。全長がこれまでの機関車以上に長くなったことから、構内有効長における機関車占用長さを少しでも減らすため[注 3]、従来の貨物用電気機関車で標準的であった前頭部のデッキは廃され非貫通構造となった。

従来の国鉄電気機関車は、鋼板部材の組み立てないし一体鋳鋼によって構成された「台車枠」を全ての基礎としていた。台車枠の両端には先輪が結合され、走行時の牽引力は台車枠の端に装備された連結器から直接客車・貨車に伝えられた。大きさは異なるが、端的に言えば蒸気機関車の台枠と同一の構造である。2台の台車は強固に連結されており、牽引力は台車同士においても直接伝えられる構造であった。他方車体は台枠を備えるものの自らの強度を保つ機能しかなく、機器類を覆って台車枠の上に載っているだけの存在だった。

本形式はこのような伝統的な構造から完全に脱却した構造である。台車は電車のような鋳鋼製2軸ボギー台車であり、牽引力は台車から車体の台枠を経て連結器に伝えられるスイベル式を採用した。在来型の大型電気機関車では長大な台車構造から曲線のスムーズな通過のために先輪が必須とされていたが、ボギー台車のEH10形は先輪を要さなかった。

日本の電気機関車史を見渡しても有数の超重量級の機関車ではあるが、台車枠を基礎とする構造と先輪の両方を廃したことから、出力の向上に比して大幅な軽量化が図られており、運転整備重量118.4t、軸重は14.8tとなっている(量産機は運転整備重量116.0t、軸重14.5t)。EF15(運転整備重量102.0t、軸重14.4t)と比較して、試作機16.4t、量産機14tの重量増に抑えた実績は重量節減の成功と言える。在来型機関車と違って先輪がないため全軸駆動となり、重量の全てを粘着力確保に生かせるようになったために牽引力が向上した。とはいえ、これだけ軸重が重くなると、ローカル線はもとより大半の地方幹線でも転用は不可能である。逆にいえば、重軸重に耐える東海道本線での運用に特化させるよう割り切った機関車であったからこそ、ここまで思い切った設計にできたともいえる。
電装機器

主電動機は、EF15形とほぼ同等で絶縁強化等による熱対策を施したMT43形を8基搭載し、定格出力2,600kWを発生する[7]。これはEF66形が定格出力3,900kWを達成するまで、日本国内の電気機関車としては最大の出力であった。

制御システムは手動進段式の単位スイッチ制御方式である。従来のEF15形から大きな差はなく、平凡だが信頼性を重視した手法である。

EF15形に比して出力が30%以上向上したことから、1,200t列車を牽引しての関ヶ原越えに耐える性能を得ただけでなく、平坦区間での走行性能にも余裕が生じ貨物列車のスピードアップにも貢献した。また、車体が二分割されていることにより生じた機器構成の複雑さ、点検・整備の手間が増えるという難点はあったが出力に対して機器に余裕があり、EF15形やEF58形の経験を反映したことからも主電動機や補助機器の故障が少ないといった利点があった[8]


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