国鉄400形蒸気機関車
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国鉄400形蒸気機関車
(西武鉄道2代目4号蒸気機関車)
(2008年10月、横瀬車両基地

国鉄400形蒸気機関車(こくてつ400がたじょうききかんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である内閣鉄道局イギリスから輸入したタンク式蒸気機関車である。

本項においては、400形のほか、500形・600形・700形(鉄道作業局A8形)、私鉄向けに製造され国有化により国鉄に編入された280形、450形、480形、490形、800形、850形、870形および同系の私鉄機、ならびに本系列の変型である100形、220形について合わせて記述する。類似設計の230形(鉄道作業局A10形)と860形(鉄道作業局A9形)は別項で記述する。
概要

1B1(日本国鉄式)もしくは2-4-2(ホワイト式)の車軸配置を持つ中型の機関車である。大きさや性能が手ごろで使いやすかったことから、官設鉄道では国産も含めて複数メーカーから改良型を多く導入した。私設鉄道においても同系車が導入され、国鉄から私鉄等へ譲渡された機体も多い。

本項で記述する各形式および別項で記述する230形、860形の概要は以下のとおり[1]

400形系蒸気機関車一覧
鉄道省
形式鉄道作業局
形式製造初年両数製造所車軸配置全軸距
(mm)シリンダ径(mm)動輪径
(mm)全伝熱面積
(m2)火格子面積
(m2)備考
400-1886年4ナスミス・ウィルソン1B15944343132160.00.98
500A81888年61ダブス1B15944356132167.11.08
600A81887年78ナスミス・ウィルソン1B159443561321[表注 1]67.31.11
700A81888年18バルカン・ファウンドリー1B15944356132167.31.07[表注 2]
280-1923年2日本車輌製造1B15944343132167.31.11ワルシャート式弁装置
450-1897年4ブルックス・ロコモティブ・ワークス1B15944356132167.31.11スチーブンソン式弁装置
480-1904年2クラウス1B15944356132171.01.11
490-1898年[表注 3]1ナスミス・ウィルソン1B15944343132160.00.98[表注 4]
800-1903年2汽車製造1B15944356132167.11.11
810-1904年1汽車製造1B15944356124567.21.12
850-1896年1山陽鉄道兵庫工場1B15944356132158.81.06
870-1897年4ナスミス・ウィルソン1B15944368137274.31.21ベルペイヤ式火室
100-1896年1ナスミス・ウィルソン1B3810305121960.0[表注 5]0.93
220-1891年2ダブス1B14827330121946.50.77ワルシャート式弁装置
860A91893年1逓信省鉄道庁神戸工場1B15944381/572[表注 6]134671.51.15複式機関車
230A101902年41汽車製造1B15944356124567.21.11
^ 600 ? 639, 643 - 677号機の値、640 ? 642号機は1346 mm
^ 700 ? 704, 715 - 717号機の値、705 ? 714号機は1.11m2
^ 製造銘板は1897年のものが設置されている。
^ 中国鉄道の形式図では1.23 m2。
^ ナスミス・ウィルソンの記録では51.1 m2
^ 高圧/低圧

なお、これらの機関車の導入時点以降の官設鉄道・国有鉄道の所管省の推移は以下の通り[2]

内閣(1885年12月以降)→内務省(1892年7月以降)→逓信省(1892年7月以降)→内閣(1908年12月以降)→鉄道省(1920年6月以降)→運輸通信省(1943年11月以降)→運輸省(1945年5月以降)→日本国有鉄道(1949年6月以降)

また、官設鉄道・国有鉄道の建設・運営を担当した組織部門の推移は以下の通り[2]

鉄道局(1877年1月以降)→鉄道庁(1890年9月以降)→鉄道局(1893年11月以降)→鉄道作業局(1897年8月以降)→帝国鉄道庁(1907年4月以降)→鉄道院(1908年12月以降)→鉄道省(1920年6月以降)鉄道総局(1943年11月以降)→日本国有鉄道(1949年6月以降)

400形
概要(400形)

400形は、鉄道輸送量の増大によって従来使用されてきた車軸配置1Bのタンク式機関車の牽引力不足が目立ってきたことから、より大型の機関車として1886年にイギリスのナスミス・ウィルソン[注釈 1]に発注されたものである。本形式以前の1882年に車軸配置2Bのタンク機関車である官設鉄道27, 29号機(後の5490形)がベイヤー・ピーコックから輸入されたが成績が良くなく、また、先輪のない車軸配置B1のテンダ機関車であるA, B号機(後の5000形)の第1動輪の摩耗が激しかったことから、1B1の車軸配置が採用されたと考えられている[注釈 2]

1B1の車軸配置は機関車の前後端の動揺が大きくなるため、先輪と従輪には復原力の大きいラジアル軸箱を採用したとされている[4]。ラジアル軸箱はロンドン北西鉄道の機械主任技師であったF・W・ウェッブ (F. W. Webb) が1882年に考案したもので、円弧状の軸箱ガイドの内部に軸箱を摺動させることによって車輪を横動させて曲線通過を容易にする構造で、左右の車輪間の車軸下部に復元用のコイルバネを設置している[5]。なお、本形式では25mmの横動が与えられていた。

また、弁装置は当時の主流であったスチーブンソン式ではなく、機構が簡便で動作も正確なジョイ式が採用されている。

シリンダは、先輪の後部、動輪の前部に配され、主連棒は第1動輪に接続される。運転室は、比較的大型のものが備えられ、側水槽、背部炭庫・水槽と一体の意匠となっている。砂箱は側水槽前部の歩み板上に設置されており、そこから弁装置とシリンダ上部の弁室までを覆うカバーが設けられている。
主要諸元(400形)

全長 : 9188mm

全高 : 3607mm

軌間 : 1067mm

車軸配置 : 1B1

動輪直径 : 1321mm (4ft4in)

弁装置 : ジョイ式基本形

シリンダー(直径×行程) : 343mm×508mm

ボイラー圧力 : 9.1kg/cm2

火格子面積 : 1.02m2

全伝熱面積 : 60.0m2

煙管蒸発伝熱面積 : 54.4m2

火室蒸発伝熱面積 : 5.6m2


機関車運転整備重量 : 31.65t

機関車動輪上重量(運転整備時) : 17.48t

機関車動輪軸重(第2動輪上) : 8.48t

水タンク容量 : 3.86m3

燃料積載量 : 1.14t

機関車性能

シリンダ引張力(0.85P): 3500kg


ブレーキ装置 : 手ブレーキ蒸気ブレーキ

経歴(400形)
官設鉄道(日本鉄道、房総鉄道)

本形式はナスミス・ウィルソンで4両(製造番号300 - 303)が製造され、1887年1月に鉄道局に納入され69, 71, 73, 75号機となり、フランシス・ヘンリー・トレビシック1897年にイギリスの雑誌”The Engineerに寄稿した記事「Thirty Types of Locomotive Engines, Imperial Railways, Japan」中で使用したA - Z, AB - ADの区分[6]においてはJクラスに分類されていた[7][注釈 3]

69 - 75(奇数)号機は、4両とも当時運行および車両修繕を受託していた[注釈 4]であった日本鉄道に貸し出され、1892年3月の鉄道作業局から日本鉄道への全面業務移管[注釈 5]に伴いW2/4形18 - 21号機となった。

その後1899年房総鉄道に譲渡され、19, 21, 18号機が1形1II, 3III, 4II号機、20号機が4形6II号機となった[9][10]


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