国鉄211系電車
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211系電車
(共通事項)
211系3000番台C1編成
(2012年8月5日 尾久駅 - 赤羽駅間)
基本情報
運用者日本国有鉄道
東日本旅客鉄道
東海旅客鉄道
西日本旅客鉄道
三岐鉄道(予定)
製造所川崎重工業東急車輛製造日本車輌製造日立製作所近畿車輛
製造年1985年 - 1991年
製造数827両
運用開始1986年2月18日[1]
主要諸元
軌間1,067 mm(狭軌
電気方式直流1,500 V(架空電車線方式
設計最高速度110km/h(初期製造時)120km/h(改造車・後期車)
最高速度110 km/h(製造時)
120 km/h(高速化改造車およびスーパーサルーン「ゆめじ」)
減速度(常用)3.5 km/h/s[2]
自重23.2 t(最小 サハ211形2000番台)
36.3 t(最大 クモハ211形1000番台)
全長20000mm
全幅2900・2966mm
全高3970・4094mm
台車円錐積層ゴム式ボルスタレス台車
主電動機直流直巻電動機 MT61型
駆動方式中空軸平行カルダン撓み継手方式
歯車比16:83 (5.19)
定格速度全界磁46.0km/h・35%界磁87.5km/h
制御方式抵抗制御・直並列組合せ制御・弱め界磁制御界磁添加励磁制御
制御装置電気指令式直通回生抑速
直通予備ブレーキ
耐雪ブレーキ
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211系電車(211けいでんしゃ)は、1985年(昭和60年)に登場した直流近郊形電車である。当初は日本国有鉄道(国鉄)により、国鉄の分割・民営化後は東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)により設計・製造された。
概要

陳腐化した111系・113系115系に代わる近郊形電車のフルモデルチェンジ車として、同系列の置き換えを目的に開発された。

軽量ステンレス製車体や構造の簡便なボルスタレス台車サイリスタチョッパ制御より簡便かつ安価に回生ブレーキが使用可能で抵抗制御を基本とした界磁添加励磁制御、応答性の高い電気指令式ブレーキ、簡易的なモニタ装置等、省エネルギー保守費用低減に配意した新機軸が各所に採用されている。これらは結果として通勤形電車205系で先に採用されたが、本来は「次期近郊形電車」を念頭に開発されたシステムである。このシステムは民営化後のJR新型車両にも多数採用されている[注 1]

1ユニットあたりの力行性能の向上により、電動車比率を下げ、2M3T編成で25 までの勾配でも通常の使用が可能であり、新製コストや運用コストの低減を狙った設計とした。これにより、2M3T編成でも113系・115系の2M2T編成と同等以上の走行性能を持つ[3]

国鉄時代には首都圏地区に250両[注 2]、名古屋地区に8両、計258両が製造され[4]、国鉄分割民営化時には前者はJR東日本に、後者はJR東海に引き継がれた[4]。分割民営化後にはJR東日本で325両[注 3]、JR東海で242両、JR西日本で2両、計569両が製造され[4]、総計では827両が製造された[4]。その後、JR東日本では東海道線113系の編成に挿入された2階建グリーン車(サロ124形・サロ125形)34両が本系列に編入されている。
構造

本項ではグリーン車・「ゆめじ」を除く各車の共通事項について述べる。
車体

車体は、片側3か所に両開きの扉を設けた国鉄近郊形電車の基本的構成であるが、両端の側出入口の位置を若干車端に寄せた配置としている。外板間の車体幅は113系など従来車の2,900 mmから初めて2,950 mmまで拡大され、裾絞りが大きくなっている[5]。また暖地・平坦線用の113系と寒地・勾配線用の115系の機能を統合し、細部の仕様変更を行うことで両系列の取替に対応している。

前面形状は従来と同じ貫通型である。205系と同様、前面の窓周りを黒い塗装でまとめているが、205系(後期に製造された一部や改造車を除く)では縁のみに用いられたFRPを全体に用い、白いFRP製部材で覆い軽快な印象に仕上げた。この前面形状は415系1500番台や民営化後の新型車両[注 4]にも採用されている。
車内

座席は0・1000番台が従来と同様のセミクロスシートを採用するが、長距離通勤客の増加に伴う混雑に対応するため、オールロングシートの2000・3000・5000・6000番台が製造された。クロスシート・ロングシートともバケットタイプとし、クロスシートはシートピッチ1,490 mmのままでスペースと通路幅を広げ、ロングシートは1人分の幅を広げた。また、セミクロスシート車も混雑緩和のため415系700番台同様、車端部をロングシートとした。

国鉄時代は付属編成のみがオールロングシートとされたが、国鉄分割民営化後の増備車はオールロングシートが基本となっている。
機構

MM'ユニット車の主電動機は120 kWのMT61形が採用された[6]。性能は375 V・360 A全界磁定格回転数1,540 rpm、35 %界磁定格回転数3,080 rpmである。これは713系向けに開発されたものを使用している。

MT61形の定格出力は従来のMT54形と同じだが、低回転域のトルクを381系向けのMT58より強化(MT54とMT58の中間の特性)したうえ、従来の近郊形電車よりも大きめの歯車比を採用し、定格速度を113系・115系より6.5 km/h低い46.0 km/hとしたため、逆にユニット当たりの引張力は6,690 kgfから7,580 kgfへと1割強大きくなった。一方で、許容回転数を上げて最弱め界磁率を35 %まで取り、高速性能を確保した。2M3T編成においても113系・115系の2M2T編成を上回る走行性能を発揮できるのはこれらによるものである。

1M方式(非MM'ユニット車)車の主電動機はMT64形で、定格端子電圧がMT61形の2倍の750 V、定格電流が半分の180 Aとされているが、速度特性は極力MT61形にそろえられている。このシステムは後に213系用として初採用されたが、本来は本系列の横須賀・総武快速線への投入を構想した際、MT比2:3(15両編成時6M9T)では不足する走行性能と、電動車を増やすコストをバランスさせるために開発されていたもので、当初からMM'ユニット方式との混用が想定されていた。

主制御器は205系のCS57形に抑速ブレーキの機能を追加したCS57A形である。抑速ブレーキは40 km/h以上で作動する[7]

電気ブレーキは、添加励磁装置を用いて回生ブレーキを行う。高速域では界磁電流を弱く、主回路電流を強くし、速度の低下とともに界磁電流を強めながら主回路電流を減ずるよう制御することで、一定の回生ブレーキ力が確保される。78 km/h以上からブレーキをかける時は電動機は並列つなぎで、それ以下からの場合は直列つなぎで回生ブレーキを開始する。並列つなぎで開始した場合は60 km/h前後で直列つなぎに切替えるが、切替の際に端子電圧を急に半減することはできないため、抵抗を挿入しながら回路を切替え、その後抵抗が抜かれる。

低速では界磁電流を強めても回生電圧が架線電圧を下回るため、30 km/h前後で回生ブレーキが失効する。

運転台はデスク型で、横軸のマスコンハンドルと縦軸のブレーキハンドルを配した2ハンドル式である[8]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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