国鉄143系電車
[Wikipedia|▼Menu]

143系電車は、1977年(昭和52年)に登場した日本国有鉄道(国鉄)の直流用事業用電車である。
概要

旅客用でない新性能単独電動車 (1M) 方式の系列で、1967年(昭和42年)に登場したクモユ141形のシステムをベースに、発電ブレーキ抑速ブレーキを付加したものである。

1976年度に首都圏のATC導入に対応した牽引車のクモヤ143形が登場し、続いて荷物車のクモニ143形、郵便・荷物合造車のクモユニ143形、郵便車のクモユ143形が登場した[1]。これらの形式はクモユ141形をベースに発電・抑速ブレーキを搭載したもので、143系と総称される[1]

郵便・荷物電車では旅客車との併結も多くあり、その連結相手は113系115系などの直流近郊形165系などの直流急行形であった。そのため歯車比の異なる電車と連結しても協調運転ができるよう構造が工夫されていた。

設計の標準化を取り入れており、将来の郵便車・荷物車への設計変更が容易に可能な構造となっていた[2]。また、将来の直流区間における旧性能旅客電車の置き換え用車両として設計可能なよう考慮されていた[2]。143系列と同様の直並列制御を採用した旅客車は、国鉄末期にクモニ143形からの改造で登場したクモハ123形で実現した[2]
登場の経緯

1957年登場の101系に始まる国鉄の新性能電車は、電動車を2両1組としたMM'ユニット方式が基本であった。国鉄の新性能電車で1M方式を初採用したのは1959年の交流試験車クモヤ791形で、営業用では1967年の711系試作車が、直流電車では郵便車クモユ141形が最初となった[1]。クモユ141形は出力100 kW・端子電圧750 VのMT57系主電動機を用いて直並列制御を行うとともに、性能特性が国鉄標準電動機MT54系と合わせられていた[1]

クモユ141形以降はしばらく直流新性能1M電車の製造はなく、1M車が主体の郵便・荷物車や事業用車は旧性能電車が改造転用されていた[3]。1977年よりクモヤ143形が新製され、郵便・荷物電車も旧性能電車の置き換えと保守向上を考慮して本系列が新製投入された[1]
クモヤ143形

国鉄クモヤ143形電車
クモヤ143-20(松戸)
基本情報
運用者日本国有鉄道
東日本旅客鉄道
製造所近畿車輛日立製作所
製造年1977年 - 1980年
製造数21両
主要諸元
軌間1,067 mm
電気方式直流1,500 V
最高運転速度100 km/h
自重46.0 t
全長20,000 mm
全幅2,800 mm
全高4,100 mm
車体普通鋼
主電動機MT57A形
主電動機出力100 kW (750 V定格) ? 4
駆動方式中空軸平行カルダン駆動方式
歯車比17:82 (4.82)
制御方式抵抗制御、直並列組合せ、弱め界磁
制御装置CS44形
制動装置発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ抑速ブレーキ直通予備ブレーキ耐雪ブレーキ手ブレーキ
保安装置ATS-B
ATS-SN
ATS-P
ATC-6
テンプレートを表示

クモヤ143形は、首都圏地区のATC化に対応し、また老朽化したクモヤ90形の代替として、1977年に登場した直流用事業用車牽引車)である。番台区分は出自の違いにより、新製車の0番台、クモニ143形から編入された50番台の2区分が存在する。
登場の経緯

山手線など首都圏3線区では保安装置にATCが導入されることになったが、従来配置の旧性能車改造の牽引車ではブレーキ力が不十分であった[4]。一方で新設の車両基地には牽引車の配置がなく、車両数増加での牽引車不足分を改造車で補っていた[4]。そのため首都圏のATC導入線区向けに新性能牽引車を新製投入し、捻出された旧性能牽引車を他区所へ転用することになった[4]

1977年から1980年(昭和55年)までに21両が製造され、浦和電車区品川電車区をはじめとした首都圏の通勤路線を受け持つ車両基地に配置された。製造の状況は次の通りである。

クモヤ143形0番台 製造一覧[5]製造年度近畿車輛日立製作所
1976年度(4両)1, 2(2両)3, 4(2両)
1977年度(8両)5 - 8(4両)9 - 12(4両)
1979年度(9両)13 - 18(6両)19 - 21(3両)

構造車内。棚の上には、ジャンパ連結器形状の異なる車種と併結するための特殊ジャンパ連結器を常備。奥の警戒色の装置は他列車救援時などに使うクレーン装置。

ATCで必要なブレーキ力を確保しつつ新性能電車1両を無動力で牽引でき、直流新性能電車全てと協調運転可能な設計とされた[4]。車体は1M方式の前面貫通・両運転台構造であり、クモユ141形郵便車をベースにしつつも牽引車・荷物車・郵便車への共通化が可能な設計としたほか、将来の地方線区の旧型直流電車置き換え用車両としての共通化も考慮された[4]。クモユ141形には発電ブレーキがなく保守・運用面で不便とされたため、性能上可能な範囲で発電ブレーキが設けられた[5]

車体は20m級の鋼製車体で、車体長は19,500 mm、車体幅は2,800 mmである[5]。前面は高運転台の貫通構造で、前面ガラスは301系のように左右に後退角が付けられた[5]。運転台は両運転台構造で、窓下に前照灯が左右各1灯、その下に尾灯が設置された[5]。前面貫通扉下部横にはシャッター付きのAW-5形空気笛が設けられ、貫通扉上部には行先表示器が設置された[5]。製造当初から前面排障器(スカート)が装備されたほか、連結器の胴受けは1 - 12までは支え部が直線状、13以降はせり上がった形状になっている[5]

室内配置は前位乗務員室後部からATC機器室・ATS等の機器室、その後部に機材室、控室、後位乗務員室の配置となった[5]。機材室には幅1,800 mmの両開き扉が片側2箇所ずつ設けられ、重量物の積み込みが容易なようクレーン装置が設置された[5]。控室には片側あたり6人分のロングシートが両面に設けられ、側窓として幅1,080 mmの上段下降・下段上昇式ユニット窓が設けられた[6]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:95 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef