国立大学
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国立大学(こくりつだいがく、: National university)とは、国家政府によって設立または運営されている大学を指す。国立学校である大学。教育担当官庁の傘下にある国が多い。ここでは主に日本国内における国立大学について記述する。

主に地方自治体が設置・運営する公立大学とともに、日本では「国公立大学」(こっこうりつだいがく)と総称される。私立大学公設民営大学と区別される。

日本の国立大学の学校の設置者国立大学法人となっている。類似のものに他の独立行政法人国立研究開発法人が設置する大学校省庁大学校がある
概説

2003年平成15年)、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成15年法律第117号)の施行により国立学校設置法が廃止され、新たに制定された国立大学法人法(平成15年法律第112号)の規定により、2004年(平成16年)4月1日に国立大学は国立大学法人の設置する大学に移行した[1]

かつては日本国政府の中央省庁の一つである文部科学省(文科省)に置かれる施設等機関であった。1945年昭和20年)に終結した第二次世界大戦における日本の降伏に伴い、大日本帝国時代の諸制度に対する戦後改革が行なわれた。1949年の国立学校設置法(昭和24年法律第150号)に基づき、旧帝国大学旧制大学高等師範学校旧制高等学校旧制専門学校師範学校等を統合して、原則として各都道府県に最低でも1校の、新制大学としての国立大学が設置された[2]。旧学制下では原則的に単科大学が基本であり、総合大学は帝国大学のみであったがこれら諸学校の統合により複数の学部を持つ新制大学が全国に設置された。しかし人文・社会・自然・医の4領域すべての領域を持つ狭義の総合大学の設置は限定的で大多数は4領域のうち、2-3領域のみを設置する複合大学に留まった。

2020年代前半時点で、日本には国立大学が86校(うち大学院大学4校)ある[3]。このうち「世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人」が文科省により「指定国立大学法人」に指定されている[4]。2021年(令和3年)11月時点で10校指定されている(東北大学東京大学東京医科歯科大学東京工業大学一橋大学筑波大学名古屋大学京都大学大阪大学九州大学[4]

なお、国立短期大学2010年(平成22年)度で全廃されている。

日本では国立大学の収入は、日本国政府の支出(すなわち税金)に拠る部分が大きい。財務省(日本国政府)は、平成25年度ベースの場合、大学附属病院の収入を除くと、約68%が運営費交付金や補助金などの国からの支出、自己収入は全体で33%(内訳は寄附金収入が4.3%、授業料等収入が14.7%、産学連携等研究収入が10.8%)と試算しており、「国からの補助金が概ね1割である私立大学と比べると、その違いは顕著なものとなっている」と指摘している[5]。国立大学の運営に多額の税金が投入されている点について、文科省は『国立大学経営力戦略』において「運営費交付金依存体質からの脱却」を提唱した[6]。また、国公立大学の競争力や生産性に見合っているかという批判[7][8]や私立大学で実現可能な分野にもかかわらず、税金を投入して授業料を安く設定するのは民業圧迫という批判[9]が存在する。

かつては、裕福な家庭の子が私立大学に進学し、貧しい家庭の子が国公立へ進学する構図が見られた[10]。しかし、2010年代以降、私立大学に通う学生の親の年収よりも、国立大学へ進学した学生の親の年収の方が高いという逆転現象が生じている[10]。2016年の学生生活調査によれば、大学生がいる家庭の平均世帯年収は、国立で841万円、公立730万円、私立834万円であり[11]、世帯年収1000万円以上の家庭の割合は、国立29.2%、公立20.3%、私立25.7%であった[11]

ほとんどの国立大学が自治権を持って運営している。学生数は、全大学生のうち2割程[12]

放送大学沖縄科学技術大学院大学は私立大学に分類されるが、設置法に基づき私学助成の一般制限を超えた国からの補助金を得ているなど公的な側面を有する。産業医科大学も私立大学であるが厚生労働省から支援を受けている。
立地詳細は「日本の国立大学一覧」を参照

47都道府県全てに最低1つの国立大学が設置されている。所在地は都道府県庁所在地が多いが、青森県弘前大学は、県庁所在地の青森市でなく弘前市にあるような例もあるほか、複数の国立大学を要する都道府県もある。また千葉県柏市に大学院を持つ東京大学、千葉県市川市に教養部のキャンパスを持つ東京医科歯科大学は都道府県境を跨いでキャンパスを持つ。そのほか各大学の演習林等附属施設は全国に散在する。

「新制国立大学実施要綱」(1948年6月、いわゆる国立大学設置11原則)により、「新制国立大学は、特別の地域(北海道、東京、愛知、大阪、京都、福岡)を除き、同一地域にある官立学校はこれを合併して一大学とし、一府県一大学の実現を図る。」(一府県一大学構想)とされ複数の母体校を統合し校地を引き継いだため多くの大学が分散キャンパスとなっている(タコ足大学)。特に北海道教育大学信州大学山形大学の3大学はキャンパス数、延長距離から見て分散度が抜きんでて高い。新潟大学広島大学宮崎大学等では、全国総合開発計画と連動した学園都市構想等により、それまでの分散キャンパスの移転統合が実現したが後に大学の郊外移転に対する否定的評価も生まれた[13]

全体的に古いキャンパスほど都市型立地の占める割合が高く、新しくなるにつれてこれらが低下する傾向にある。特に高度成長期前に開設されたキャンパスとそれ以降のものとの差は著しく、高度成長期以前に設置され都市の郊外、農村にとどまっているものは香川大学池戸キャンパス(明治36年開設)等いずれも特殊な立地傾向を持つ農学系キャンパスのみであるが、高度成長期以降のキャンパスは大半が市街地の辺縁部、郊外、農村に立地している[14]。都市中心部には東京海洋大学等の単科大学、(主要キャンパスが郊外に移転した後も)残された附属病院を持つ医学部キャンパスが多く、複数の学部を揃える大学は帝国大学のキャンパスを引き継ぐ東京大学北海道大学、地方大学(新制大学)の愛媛大学等少数である。金沢大学(金沢城内、旧丸の内キャンパス)、琉球大学(首里城跡)等は市街地中心部にキャンパスを置いていたが文化財保護、敷地拡大のために郊外に移転した。
名称

ほぼ全ての国立大学の大学名は所在地名を由来とする。都道府県名が多いが、令制国名など(信州大学琉球大学)、県都名(宇都宮大学金沢大学など)、地域ブロック名(東北大学や九州大学)といった例もある。横浜国立大学は校名に唯一「国立」の語を入れている。

宮城大学および長野大学は都道府県名の公立大学、青森大学神奈川大学奈良大学福岡大学等は都道府県名を冠した私立大学である。


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