国民ラジオ
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この項目では、ナチス・ドイツにおける国民ラジオについて説明しています。日本における国民ラジオについては「再生回路#ドイツ国民受信機と放送局型受信機・国策型受信機」をご覧ください。
国民ラジオ VE301W 1938年8月5日、大ドイツ放送展で国民ラジオを視察するヨーゼフ・ゲッベルス。

国民ラジオ(こくみんラジオ、: Volksempfanger)は、ナチス・ドイツにおいて一般国民に対するプロパガンダの手段として大量生産され、低価格で販売された一連のラジオ受信機の総称。目次

1 国民ラジオの開発と急速な普及

2 ナチス・プロパガンダとの関係

3 影響

4 国民ラジオと大衆文化

5 脚注

5.1 注釈

5.2 出典


6 参考文献

7 関連項目

8 外部リンク

国民ラジオの開発と急速な普及

ラジオが持つ強大な宣伝力に着目していたナチス・ドイツの国民啓蒙・宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスは、1933年ナチスが政権に就くと直ちに帝国放送協会国営化し、その管轄を内務省から国民啓蒙・宣伝省に移して一般国民向けのプロパガンダ放送を開始した。しかし、こうしたナチスのプロパガンダ政策にとって大きな課題となったのがドイツにおけるラジオ受信機の普及の遅れだった。当時、ラジオ受信機は非常に高価であり、ドイツの一庶民が簡単に購入できる製品ではなかったのである[注 1](もちろんドイツに限った話ではなく、世界的に当時のラジオはまだ「先端技術が使われた高額な商品」のひとつであった)。

ラジオ受信機の迅速な普及が持つ意味の重要性を感じたゲッベルスは、電気工学者オットー・グリーシンクに低コストで大量生産が可能な受信機の設計・開発を要請するとともに、シーメンスAEGテレフンケンをはじめとする国内電機メーカーに対し「国民ラジオ」を他に優先して生産するよう指示した。

こうした経緯を経て開発された最初の国民ラジオVE-301型は、1933年8月18日ベルリン国際無線展示会で紹介された[注 2]。キャビネットの素材にベークライトを使用し、内部構造を簡略化することなどによりコストの圧縮に成功したVE-301型は、76ライヒスマルク (RM) という比較的手頃な価格で入手可能なモデルだった。後には、より廉価な35RMのモデル・DKE38型(このモデルは、一般国民から『ゲッベルスの口』と呼ばれた)も生産された。国民ラジオ計画の進展とともにドイツでのラジオ受信機の普及は急速に進み、1939年にはラジオ受信機を所有する世帯が全体の70%を占めるまでに至った。この普及率は、当時において世界一だった[1]。1933年から1939年までの間に製造された国民ラジオの累計台数は700万台を超えている。

国民ラジオ VE301の内部構造

国民ラジオ DKE38

労働戦線ラジオDAF1011

ナチス・プロパガンダとの関係

ゲッベルスは「ラジオ放送は最も近代的で最も重要な大衆感化の手段」であると考えており、低価格でラジオを流通させたのはその企図によるものだった[2]。すべての国民ラジオは、ローカル局だけしか受信できないように意図的に設計されていた。つまり、ナチスのプロパガンダ放送は聴取できる一方で、たとえば英国放送協会(BBC)の国際放送BBCワールドサービスのような他のメディアは聴取できないように設計されていたのである。

国民ラジオでは、最後まで短波放送の周波数帯を受信できなかった。また、当時、他のメーカーの受信機ではチューニングスケール上に欧州の主要な放送局のダイヤル位置が記されていたにもかかわらず、国民ラジオは最後までそれに追随しなかった。たいていの場合、国民ラジオのチューニングスケールにはドイツの放送局のダイヤル位置だけしか記されておらず、低価格帯のモデルには、もともとチューニングスケール自体が欠落していた。

ナチス・ドイツでは外国放送の聴取は犯罪であったが、占領された地域のいくつかでは非ドイツ人の市民がラジオを聴くことさえ非合法だった。後にこの禁令は大部分の被占領国に拡大し、大量のラジオ受信機が没収された。大戦後期には、その罰則の範囲は死刑にまで及んだにもかかわらず、ナチスが占領した国の多くでラジオは秘密裏に聴かれていた。近接した国または地域間に対立がある場合の電波戦略として後には定番となったジャミングも試みたが、その成功は限定されたものでしかなかった。


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