国家の要件
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国家の資格要件(こっかのしかくようけん)は、国際法国家であるために必要とされる要件である[1]。国家の成立要件(こっかのせいりつようけん)[2]、あるいは単に国家の要件[3]ともいわれる。モンテビデオ条約第1条には国家の資格要件となる要素として「永続的住民」、「明確な領域」、「政府」、「他国と関係を取り結ぶ能力」があげられた[1]。現代においてはこの4つの要件が諸国に一般的に受けいれられたものとみなされている[4]。19世紀においては、新しく国家となろうとする存在に対して既存の他国が行う国家承認も要件のひとつに含まれると考えられていたが、現代においては基本的に国家承認は国家の資格要件に含まれないとされている[4]
モンテビデオ条約第1条の4つの要件

国際法国家であるというためには一定の要件が必要とされるが、その要件を論じるにあたって国際法学においてしばしば引用されるのが「国家の権利義務に関するモンテビデオ条約」(以下モンテビデオ条約)第1条である[2]。同条約第1条により、国家であるためには国際法上、一定の領域の一定の住民に対して、対内的には実効的な支配を確立し、対外的には他国から独立していることが求められることとなる[5]。この条約は米州諸国によって締結されたものであったが、その第1条に規定された国家の資格要件に関する規定は広く一般的に適用されるものと考えられている[5]。以下に同条約第1条を引用する。日本語訳:国際法上の人格としての国はその要件として、(a)永続的住民、(b)明確な領域、(c)政府、及び、(d)他国と関係を取り結ぶ能力を備えなければならない[6]
英語原文:The state as a person of international law should possess the following qualifications: a ) a permanent population; b ) a defined territory; c ) government; and d) capacity to enter into relations with the other states.[7] ? モンテビデオ条約第1条

本節では上記に列挙された、「永続的住民」、「明確な領域」、「政府」、「他国と関係を取り結ぶ能力」、という4つの要件ごとに以下に述べる。
永続的住民

「永続的住民」について、かつては人種言語宗教習俗文化などといった要因により永続的住民と言えるかどうかを判別しようとする立場があり、これを客観説という[8]。こうした考え方は、同一民族による国家統合を目的とした一方的な国境変更や、他国に居住する自国民と同じ民族に対する少数民族保護を口実とした他国領土への侵入、ナチス・ドイツ汎ゲルマン主義に見られるような特定民族の優位性の主張といったように、政治的に危険を伴うものであった[8]。そこでこうした客観説は非難に値するものとみなされ、現代においては人種差別撤廃条約全文第6項、第4条により各国に対して人種的優位主義に基づく差別や扇動を禁じる国内措置が義務付けられることとなった[8]。これに対して現代においては、その国の国籍取得に見られるように集団構成員の主観的合意を基準にして決定されるものとされており、こうした立場を主観説という[8]。その国の領域に居住しているかどうかは問題とされず、外国人として一定の期間その国の領域内にいたとしても永続的住民とは言えない[8]。各国が自国民であることを認定して国籍を付与することは国内管轄事項であるが、この国籍付与を他国に対して対抗するためにはノッテボーム事件国際司法裁判所判決で示された「真正な結合」が求められる[9]。これによると、国籍は有していてもその国に居所もなく、家族もなく、ほとんど他国で活動している者は「真正な結合」があるとはいえない[9]。そのためこうした者は「永続的住民」ではないこととなる[9]。永続的住民が存在するということは、彼らが居住する一定の領域が存在することの証明ともなるため、後述する領域の基準(#明確な領域参照)とも密接に関連するものである[9]
明確な領域

国家の資格要件の2つ目の要素である「明確な領域」とは、国家のもっとも本質的な要素である[10]領域とは領土領海領空からなり、国家はこれらに対して排他的な領域主権を行使する[11]。ただしこの要件は、住民が組織する政治的団体が実効的・継続的に支配している一定の地域があれば十分であり、領域のすべてが定住可能であるとか、国境が厳密に確定していることは必要とされていない[10]。例えば北海大陸棚事件国際司法裁判所判決においては、「1つのまとまりとみなされる、一定の区域に付属することが、その区域の境界の明確な画定を支配することになるということは決してないのであって、それは、国境について不明確であることが領域権に影響を与えることがありえないのと同じである。」という判断が示されている[12]。このことから領土問題により各国の主張が錯綜している場合であっても大枠で国境線の画定をすることができていれば十分であり、一定領域のいち部分を一貫して支配し続けることが必要とされる[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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